ただ、スマートホームを構成する上で、とても重要なデータをAppleは持っている。それは、誰が家族の一員なのか、という情報だ。

Apple IDを設定する際に、家族メンバーを登録することができる。これにより、例えばiTunesやAppStoreで購入したコンテンツを家族で共有したり、Apple Musicの家族アカウントを利用できたりする。実はそれだけでなく、iCloud上に、家族の共有カレンダーや共有アルバム、そして位置情報の共有を行うことができる。

iCloudのファミリー共有

家族のメンバーがわかり、大まかにスケジュールを把握することもできる。加えて、AppleはiPhoneのユーザーがどこで、どのタイミングで、どんなアプリを使っているかを学習し、Siriの検索候補などに表示する仕組みを提供している。

ヘッドフォンをさしたり、Bluetoothヘッドフォンを接続すれば、ミュージックアプリが候補に上がる。頻度高く起動しているソーシャル系のアプリは検索候補に現れるし、朝起きて必ずチェックするスケジュールのアプリも、ホーム画面から検索画面を呼び出せば、すぐにタップできる。

意外と、検索画面に出てくる候補のアプリを活用していることに気づかされる。 こうした行動を先読みする学習に、カレンダーの情報や他の家族の情報が組み合わせられると、空調や照明以外の自動化にも利用できそうだ。

このようなデータを家族、あるいは家に対して提供することで、Appleのスマートホームは、かなり賢い自動化を行うことができるのではないか、と推測されよう。

(続く)

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura