そんなスシローGHDが力を入れるのが、バリューチェーンの強化だ。特に材料の調達に注力している。たとえば主力商品であるマグロ。1月に地中海産マグロを仕入れるようになり、それが好評を得て、想定の数倍の売り上げにつながったという。マグロの場合、おいしい部位はスシ用に切り出し、スジがある部位は立田揚げや「コク旨まぐろ醤油ラーメン」に利用される。4月から提供されたラーメンは評判のサイドメニューだが、マグロの無駄を省きコストを抑制する役割も担ったメニューというわけだ。
また、ハマチやタイといった鮮魚も“上流”から手がけている。朝仕入れた鮮魚は皮付きのまま各店に搬送。皮むきを各店で行うことによって鮮度を保っている。水留氏は、「豊富なサイドメニューや低価格を売りにしているスシチェーンもあるが、スシローは鮮度や品質にこだわって戦っていきたい」と強調する。また、「原価率は上がったが、それ以上に売り上げも上がった」と、手応えを感じているようだ。
地域ごとのメニューでオリジナリティを演出
一方、水留氏は「エリア戦略」にも触れた。均一な商品、均一な品質というのがナショナルチェーンの前提だが、地域によって独自のメニューづくりに注力していくという。たとえば九州地区であれば、ネタを各県から集め“オール九州”ともいえるセットスシを販売したり、レモンの産地、瀬戸内海が隣接する中国地方ではレモンをふんだんに使ったメニューを用意したりといった具合だ。水留氏は、静岡県・常葉大学の学生がメニューを考え、その周辺地域でオリジナルとして販売する“産学”の取り組みを進めていることも明かした。
外食チェーンには2種類の方向性がある。ナショナルチェーンとして普遍的な価値を重視し、全国一律のメニュー・品質を維持する方向。地域やお店ごとに独自性を打ち出し、オリジナリティを前面に出す方向だ。独自の店舗オリジナルメニューといえば、カレーチェーンのCoCo壱が有名。たとえば北海道・森町の名物であるホタテのフライをトッピングした「森町ホタテフライカレー」や、海軍カレーの街にちなみオリジナルのチキンカレーとして提供される「よこすか海軍カレー」など、多彩な店舗オリジナルメニューを展開している。
以前、モスフードサービス会長兼社長の櫻田厚氏がCoCo壱を引き合いに出し、「モスバーガーでもショップオリジナルのメニューが提供できるようなフランチャイザーを目指したい」と語ったことを思い出した。水留氏もスシローにそうした方向性を求めているようだ。