消費電力測定(グラフ56~59)

最後に消費電力である。いつもと同様にSandraのDhrystone/Whetstoneと、3DMarkの結果であるが、3DMarkがVerison 2.0に上がったらDemoだけを実施することができなくなってしまった。そこで今回からは3DMark FireStrike UltraでCombined Testを実施した結果を測定してみた。

まずグラフ56がDhrystone/Whetstone実施時の実効消費電力変動の結果である。やはりDDR4-2133をDDR4-2666にすると、8~10W程度の消費電力の上乗せになる。それはともかく、同じ定格3GHz駆動で、コアの数が8→10に増えているにも関わらず、Core i7-6950Xの消費電力そのものはCore i7-5960Xより5~10W程度下がっているのは、さすが14nmプロセスという感じはある。

とはいえ、Core i7-6700Kと比べると80W近く増えているのは、CPUだけでなくメモリとかオンボードデバイスなども関係しているためだろう。

グラフ57は、Combined Testを行った際の消費電力である。支配的なのはGPUの消費電力だが、Combined Testということで相応にCPUの消費電力も上がっているはずだ。にもかかわらずそうした傾向はあまり見えない。

ついでに言えば、Core i7-6950Xの方がCore i7-5960Xよりも消費電力が増えており、これはDirectX 11ベースということで特定コアのみに負荷が集まり、このコアがTurbo Modeで動作周波数をあげた結果、むしろ22nmのCore i7-5960Xより消費電力が高くなるという傾向が露呈したものと思われる。

定格で使っている限りは消費電力を低く抑えられるが、オーバークロックにはキツい、という14nmプロセスの欠点が改めて数字で見せられた感すらある。

このグラフ56と57の数字をまとめたのがグラフ58、グラフ58の数字からIdle(待機時の消費電力)を引いた、実効消費電力差をまとめたのがグラフ59となる。

DhrystoneとかWhetstoneの様に、全てのコアが一様に動作するようなケースでは、Core i7-6950Xは非常に良い消費電力特性を示す。絶対的な消費電力差はCore i7-5960Xよりも低く、それでいて2コア余分に動くからだ。

ところが特定のコアに負荷が固まるようなケースでは、欠点が露呈することになる。Core i7-5960Xが一番低い、というのは偶然でも何でもなく、そういう特性ということだ。つまり、どれだけうまく負荷を分散した処理を行うかが鍵ということになる。

まとめ - 10コアがいきる用途では性能面でのメリット有り

ということで、ざっくりではあるが評価を行ってみた。なんというか、予想はしていたことではあるが、性能面でのメリットは追加された2コアをどれだけ有効に生かせるかどうか、である。

あまりOverclockなどはせずに、定格に近い周波数でマルチスレッドで処理を行えるもの(今回で言えばLinpackとかCineBench/POV-RAY、TMPGEncなど)に限って言えば、非常に良い結果が得られるだろう。

また、DirectX 12に関して言えば、CPU側の性能は確実に向上する(これもコアを2つ追加した効果だ)ので、あとはGPU側がボトルネックにならなければ(GeForce GTX 980単体ではすでに性能不足!)、それなりにゲーム性能も期待できるだろう。

逆に、いま挙げたような用途「以外」に関して言えば、Core i7-5960XとかCore i7-6700Kと比較して特に有利な点は見当たらない。価格も価格だし、導入のメリットは薄いと思われる。

そんな訳で、すでにX99プラットフォームを使っているユーザーは、エンコードとかレンダリングを行うのではないかぎり、CPUを更新するメリットは無いだろう。また、コストパフォーマンスの観点で言えば、いまから新規にX99を導入するのはあまりにコストパフォーマンスが悪い。Core i7-6700K+Z170の組み合わせは、多分半額以下で構成できるだろう。

ただ、それこそNVIDIAのGeForce GTX 1000シリーズのマルチGPUやAMDのPolarisのマルチGPUを前提に、メインターゲットがDX12のゲームだ! というのであれば、X99+Core i7-6950Xは最強のプラットフォームになる可能性がある。こういう、本当にハイエンド向けを必要とする方に、Core i7-6950Xをお勧めしたい。