AI、モバイル、ウェアラブル、ホーム家電……Google I/O 2016の基調講演では様々な発表が行われたが、では今年のGoogle I/Oのテーマが何だったのだろうか? Walt Mossberg翁の記事のタイトルは「AIに賭け金を積むGoogle - 薄れつつあるモバイル中心」だった。だが、AIのイベントだったわけではない。今年のGoogle I/Oは、久しぶりに「WebのGoogle」のイベントだったと言える。
モバイルで「WebのGoogle」再び
まず、基調講演で発表されたものをおさらいしていおく。
- 自然言語に対応するパーソナルアシスタント「Google assistant」
- スマートメッセンジャー「Allo」
- Google assistantをサポートするホーム家電「Google Home」
- モバイルVRプラットフォーム「Daydream」
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Android N ベータ版
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Android Wear 2.0
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Android Instant Apps
Googleは盛り上がっていた。Web 2.0がバズワードになり始めた頃、Ajaxを活用したGoogle Mapsが登場した時を思い出させるぐらい同社は盛り上がっていた。そして、その熱を開発者やパブリッシャにも広げようとしていた。
モバイル世代の方は知らないかもしれないが、Google Mapsの登場は衝撃的だった。それまでのオンラインマップは、少しでも移動すると画面の読み込みが始まって表示までしばらく待たされる。とにかく遅くて、とても使えるようなものではなかった。紙の地図をめくった方が断然便利だったのだ。ところがAjaxを用いたGoogle Mapsでは再読込が起こらず、ドラッグしてすいすい移動できる。拡大・縮小も思いのまま。そうなると検索が使えるオンラインマップの方が紙の地図よりも便利である。しかも、GoogleはGoogle MapsのAPIをサードパーティに公開した。たとえばサーフスポットの波情報など、色んなデータがマップに組み合わせられ、様々なマップがネットに登場した。
Google Mapsはマッシュアップの代表的な成功例になったが、振り返ってみると、マップに関してはGoogle Mapsが快適に使えるようになったことから全てが始まった。もし、それ以前の再読込ばかりのオンラインマップのままだったら、APIを公開しても、それを活用しようという動きは広がらなかっただろう。
まだダイヤルアップ接続が使われていた頃、ネットユーザーは少なかった。Web 2.0の時代が来て、快適にネットを使えるようになってネットのビジネスチャンスが広がり始めた。同様のことがモバイルWebにも言える |
つまり、不便なままでは大きな変化は起こらない。快適に使えるものになって初めてユーザーや開発者を巻き込んだ大きな変化が起こり得る。そして今、Ajaxによってオンラインマップが見違えるように快適になったことと同じことがモバイルWebで起ころうとしている。