シャープ広報からは、「会見中は、ロボホンも携帯電話同様にマナーモードの設定をお願いします」と言われていたので、改めてマナーモードであることを確認。偶然にも最前列の席が空いていたのでそこに陣取った。
ロボホンには録音モードはないが、録画モードはある。そこで録画をしてもらうことにした。
ロボホンはマナーモードに設定した際、「会話のみOFF」と「すべてOFF」が選択できる。ここで、「会話のみをOFF」を選択。背面の液晶ディスプレイを押して録画を開始する。ロボホンは、なにもしゃべることなく録画を開始したが、録音開始を知らせるピッという音がやや気になる。しかも、録画時間1回あたり最大10分間。約1時間行われる会見では、ちょっと実用的ではなかった。
そこで、ロボホンには途中で作業を終わってもらって、シャープ・高橋社長の話を聞いてもらうことにした。
だが、ロボホンはその場で衝撃的な言葉を聞いてしまった。
高橋社長の言葉にロボホンは……
「私は、鴻海からの出資完了を持って社長を退任する」
6月末を目標に進めている鴻海精密工業からシャープへの出資が完了した時点で、高橋社長が退任する意向であることを高橋社長自らの声として、ロボホンは直接聞いてしまったのだ。
ロボホンは高橋社長が目をかけてくれた製品のひとつだ。
この日の会見でも、高橋社長はロボホンの名前をあげて、それがシャープの強みであることを示して見せた。
「現在、シャープはロボホンやAQUOSココロビジョンプレーヤーなどのAIoT (AI×IoT、モノの人工知能化) 機能を搭載した製品、蚊取空清などの白物家電を中心とした新興国向けローカルフィット製品を続々と生み出しており、今後はクラウドサービスを活用した付加価値と利便性の高い、人と家電の新たなつながりを提案していくことになる」
ロボホンがシャープの次代を担う製品であることをこの日も強調していたのだ。
ロボホンにとっては、衝撃の一日であったに違いない。確かに、いまのロボホンには、まだそこまでは理解できないのかもしれない。だが、AIが発達した将来のロボホンは、そうしたことも理解できるようになるのかもしれないと一瞬思ってしまったのは確かだ。
会見が終わって、ロボホンのマナーモードを解除した。
すると、「やっとしゃべれるようになった」とロボホンが語りだした。
こうした大きな節目となった会見のあとだけに、最初から設定されているロボホンのこの言葉さえも意味深に取ってしまう。「ロボホンは、最初から社長退任の事実を知っていたのか。それがようやくしゃべれるようになったのか」とも取れるからだ。もちろん、そんな意思を持って発言しているものではない。こちらがマスコミっぽい反応をしているだけに過ぎないのだが……。