手順は簡単だけど……

一杯目に淹れるのは、30mlほどの濃いコーヒーエキスを抽出する「基本のエスプレッソ」。最初に阿部氏が抽出方法のお手本を見せ、参加者がそれぞれのマシンで同じようにエスプレッソを抽出する。

阿部氏が見本で抽出したエスプレッソ。上部に分厚いクリーム状の泡「クレマ」が見える。クレマはフワリとした食感で苦味を抑え、香りを閉じ込めるという、エスプレッソになくてはならない存在。クレマの出来映えによって、エスプレッソが上手く抽出できたか判断できるという

抽出方法は、配られた7gのコーヒー粉をポルタフィルターに入れ、EC680に付属するプラスチックのタンパーで粉を均一に押し込める「タンピング」作業から行う。阿部氏によると、エスプレッソの出来は、このタンピングの力加減で左右されるらしい。

フィルター内に粉を均一に詰めたら、あとはフィルターホルダーを本体に装着して「一杯用」ボタンを押すだけ。参加者は皆、同じ量の粉を使用し、同じ手順でエスプレッソを抽出したのだが……面白いほど結果に差が出た。

今回は1杯30ccで抽出したが、EC680はカップのサイズにあわせて抽出量をプログラムする機能も搭載している。

配られた粉を入れるとフィルターが山盛りに、まずはフィルターを優しく叩いて粉を均(なら)す

手動式エスプレッソマシンのキモ! フィルター内の粉を均一に詰めるタンピングだ。タンピング後(写真右)はフィルター内の粉が平らになっている

フィルターホルダーを本体に装着し(写真左)、一杯抽出用のボタンを押す(写真中央)。あとは待つだけ。うまく抽出できるか緊張の瞬間だ(写真右)

筆者が抽出したエスプレッソはこちら。タンピングの圧力が適正ではなかったのか、全体的にクレマが薄く、中央に穴が開いてしまった

参加者のエスプレッソを比較。左は阿部氏も絶賛の成功例、中央は筆者のエスプレッソ。そして量の少ない右は、強くタンピングしすぎてお湯がコーヒー粉を通らなかった失敗例。同じ粉の量、抽出方法にもかかわらず、タンピングだけでこれだけ結果が変わる

エスプレッソは阿部氏のすすめで本場イタリア式に、砂糖をたっぷり入れて試飲。試飲前は「エスプレッソは苦手」といっていた参加者も「お菓子のようにコクがあって美味しい」と絶賛していた

阿部氏によると、手動式は「誰でも美味しくできる」わけではないものの、少し練習すると、お店のような本格的なエスプレッソを作れるのが魅力。そして「誰でも同じ味」にならないからこそ、コーヒーを淹れる楽しみがあるという。なにより、自分でタンピングの圧などを試行錯誤して淹れたコーヒーは、愛着があって美味しく感じた。

好きな豆を買ってきて、グラインダーで挽いて、分量を決めて、タンピングして、抽出を眺める……。エスプレッソを淹れるという一連の流れを楽しむには、EC680のような手動式がおすすめだ。

パパッと美味しいコーヒーを楽しみたい人には

個別包装されたエスプレッソ用の「ポッド」。タンピングが苦手でも美味しいエスプレッソが作れる

「自分だけの一杯が作れる」というメリットはあるものの、たまには手軽にエスプレッソを作りたいときもあるだろう。

そんな場合は「ポッド」を使用するのも手だ。ポッドとは、フィルター型に均した状態で売られているパック状のコーヒー(粉)。

パックごとつまんでフィルターにポンと乗せれば準備完了。フィルターホルダーをEC680にセットして抽出ボタンを押せば、誰でも失敗なくクレマのあるエスプレッソが作れる。

ポッドは最初からフィルター型に固められている。中身を崩さないように、フチをもってフィルターに詰めれば準備完了だ