商習慣の変化で大きな影響を受ける端末メーカー

これまで"常識"となっていた端末の0円販売が姿を消したことは、携帯電話に関連するさまざまな企業に影響を与えている。実際、2月9日に実施されたKDDI決算発表会で、同社の代表取締役社長である田中孝司氏は、2月に入ってからauショップへの来店者数が約2割減少するなど、来客数が大幅に落ち込んでいることを明らかにしている。

KDDIの田中孝司社長は、2月9日の決算説明会で好調な業績を記録したものの、実質0円販売の取りやめでショップの来客数が急減したことを懸念していた

だが実質0円販売がなくなることで影響を受けるのは、携帯電話ショップだけではない。同様に大きな影響を受けると見られているのが、端末メーカーだ。

これまでキャリアは、メーカーから調達した端末を、"2年縛り"を前提に多額の割引や販売奨励金をかけ、0円など非常に安価な価格で販売してきた。この仕組みによってキャリアは長期契約を獲得でき、一方でメーカーはキャリアの割引販売によって安定的な販売数を確保し、高性能な商品の開発に専念できるなど、Win-Winの関係を築いていたのである。

だがその割引が減少するとなると、必然的に価格が上昇するため、ユーザーがそのことを敬遠して端末の販売量が減少する。そうなると、キャリアがメーカーから調達する端末の数自体を減らしたり、より安価に販売できる低価格端末を求めたりするようになることから、メーカーの売り上げが減少して打撃を受ける可能性が高まるわけだ。

特に今回の総務省要請が大きなダメージを与えると見られているのは、高額なハイエンドモデルを提供してきたメーカーであろう。例えば、最も人気の高いiPhoneシリーズは、本来8万円以上する非常に高額な端末である。それをキャリアが価格を大幅に値引くことで、我々はタダ同然で購入できていた。だが極端な割引ができなくなると、必然的に端末の価格は正規の価格に近づいていくため、高い機種ほど高額で販売されることとなる。

そうしたことから、高額な端末を提供しているメーカーほど、今回の総務省要請によって大きな影響を受けると見られているのだ。