きぼうから初めて50kg級衛星を放出

DIWATA-1は、ISSに輸送された後、きぼうのエアロックとロボットアームを使い、軌道上へと放出される。きぼうからの超小型衛星放出は2012年から実施されており、これまでに世界中の衛星106機の放出に成功。JAXAの浜崎敬理事は「衛星打ち上げの新たなスタンダードができた」と胸を張る。

同日公開されたエアロックの訓練設備。テーブルが出てくる速度は実際の5分の1で、本当はもっと早い

今回、JAXAは新型の衛星搭載ケースを開発。従来のものは1U~3Uサイズ(1Uは10cm角)のキューブサット用であったが、55×55×35cmに拡大し、より大きな50kg級衛星の放出が可能になった。DIWATA-1は、この新型ケースによる初めての軌道投入で、今後、3U×2段×3列=合計18Uを同時放出できるケースを開発する計画もあるとか。

新型の衛星搭載ケース。右側が実際のフライト品で、左はテスト用のもの

ケース内に衛星を格納し、内部のバネで押し出す仕組み。放出速度は30cm/s

JAXAの「小型衛星放出機構(J-SSOD)」(2012年に撮影)。土台部分は流用する

これまでの衛星搭載ケースは、3U×2列=合計6Uの衛星放出が可能だった

通常、50kg級の超小型衛星だと、雷神2のように50cm角の立方体である場合が多いのだが、少し平べったい形になったのは、エアロックを使うためにサイズ上の制約があったからだ。50cm角の場合に比べると、体積としては15%ほど狭くなっているので、DIWATA-1の実装もかなり高密度な印象を受ける。

きぼうからの超小型衛星放出には、コストが安く、打ち上げ機会も多いというメリットがあるものの、最大のデメリットは軌道高度が低いため、ミッション期間が短くなってしまうことだ。放出時のISSの高度にもよるが、衛星は空気抵抗により徐々に高度を下げ、1年半~2年程度で大気圏に再突入するとみられている。

一方、DIWATA-2の打ち上げ手段は、現時点で未定。東北大学の吉田和哉教授によれば、同じようにISSから放出することも視野に入れながら、より長寿命が期待できる高い高度や、異なる軌道傾斜角への相乗り打ち上げの可能性を、「フィリピン政府の意向を尊重しつつ慎重に検討していく方針」とのことだ。

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