日本通信は12月1日、NTTドコモ回線とソフトバンク回線を同時に利用するデュアルネットワーク戦略の第一弾として「2SIMルータ」を発売した。単独回線での利用と比較して飛躍的に信頼性を高めた通信サービスとして提供される。

「2SIMルータ」を手に解説する、日本通信の福田尚久代表取締役社長

2つの回線で安全&信頼性を確保

日本通信は米国に子会社(Contour社)を設立して、金融機関向けにATMの無線専用線サービスを提供している。無線専用線とは、インターネットを介さず、直接企業のネットワークと外部の機器が接続された状態になることだ。金融向け回線ではセキュリティが絶対条件だけに、インターネットを介さず直接接続する専用線でなければならないのだ。

一方、日本でもIoT(モノのインターネット)やM2M(機械と機械間の通信)といった市場が立ち上がりつつあるが、こうした分野でもセキュリティや信頼性の観点から、無線専用線のニーズが高まっている。エンドトゥエンドでレイヤー2接続を実現しており、米国で無線専用線の実績を上げてきた日本通信にとっては大きな商機というわけだ。

今回のサービスでは、NTTドコモまたはソフトバンクの3G回線網を利用して接続する。接続に使用する「2SIMルータ」には、1つの接続モジュールに2つのSIMが挿さっている状態で、標準ではドコモ回線を利用し、ドコモ側の回線に何かトラブルがあった場合、バックアップとしてソフトバンク回線に接続し直すことでサービスを継続する。ドコモ側の回線が回復すれば、またドコモ側に切り替える仕組みだ。接続モジュールがW-CDMA用の1つしかないため、3Gの通信方式が異なるauは利用できない。

2SIMルーターは米Digi International社のTransPort WR-11をベースに、ファームウェアを専用に書き換えたものとなる

運用上はこのように機器とは有線接続するか、Wi-Fi接続が可能

ソフトバンク回線といったが、実は日本通信とソフトバンクは、発表段階ではMVNO契約を締結していないため、ルーターにキャリアのSIMを挿しても利用できない。代わりに、日本通信の米国子会社とボーダフォンが包括契約を行っており、ボーダフォンからSIMを調達し、そのローミング接続としてソフトバンク回線を利用する、という回りくどい方法をとっている。日本国内同士の接続なのに、インターネット上では、一度欧州までぐるりと巡ってから日本に戻ってきているのだ。このためか、デモではソフトバンク回線側のPing値はドコモ回線の数分の1程度の早さしかなかった。サブ回線にとどめているのはこうした理由もあるのだろう。

実機を使って行われたデモでは、ドコモ回線がオフになってから約1分でソフトバンク回線に切り替わり、ドコモ回線が復旧後、再び1分程度で回線が切り替わっていた。デモでは自動的に元の回線に戻していたが、実際は回線を監視し、マニュアルで戻すような運用になるという。

ちょっと見づらいが、左側のウィンドウがPingの反応で、ドコモ回線が切断されて反応が切れている

ソフトバンクSIMに切り替わり、接続が再開された。Pingの値を見るとドコモ回線より数倍遅いのがわかる

複数台のルーターをまとめて管理するためのコンソール用のAPIも用意され、管理用アプリの開発なども運用に合わせてカスタマイズできるようになる。

このコンソールはあくまでイメージで、実際にはAPIを通じて業務に最適な形で実装することになるとのこと