東京都渋谷区にHMVの旗艦店が5年ぶりに復活した。店名は「HMV&BOOKS TOKYO」。取扱い商材は、大まかに「CD・DVD」「書籍」「雑貨・グッズ」の3点。市場環境の変化で苦戦が強いられている商材だが、ローソンHMVエンタテイメントは、売り場を工夫した新業態で顧客獲得に挑もうとしている。

「HMV&BOOKS TOKYO」は11月19日にオープンする新商業施設「渋谷モディ」の5F、6F、7Fの3フロアを利用

渋谷からHMVが消えたのは2010年11月のこと。かつては、タワーレコードとともに渋谷のシンボルともいえる存在だったが、CD販売の落ち込みに抗し切れず、撤退してしまった。もともとは英HMVの日本法人が運営していたHMVだが、運営元が移り変わり、渋谷店の閉店後に、ローソンが買収。子会社化してローソンHMVエンタテイメントになったという経緯がある。

運営元が変わったことに注目すれば、純粋な復活とは言えないかもしれないが、取扱商材の"種類"に、大きな変化はない。HMV&BOOKS TOKYOでは、CD・DVD、書籍、雑貨・グッズで、いずれも苦境に立たされたコンテンツばかり。それにもかかわらず、HMV事業の53店舗で年商400億円を維持、HMV&BOOKS TOKYOで年商17億円、同店のスタイルを踏襲した店舗を10店舗に増やすことで、2018年におおよそ年商600億円を目指すという。

売り場の工夫

では、どうやって売るのか。その秘密のひとつは売り場にある。HMV&BOOKS TOKYOは、商材ごとに専用エリアを設ける従来のような売り方はしない。CD・DVD、書籍、グッズを関連性の高いものにまとめて売りだす。

たとえば、レシピ本。そのまわりには、調理グッズがあり、料理の最中に聴きたくなるようなCDが置かれる。そのため、本来は書籍が置かれる棚にワインが置かれ、ワイン関連の本があるといった具合だ。同社の盛谷尚也常務によると「いままでCDを買うような方が、書籍も買うというように、複合的に商品を買う傾向があった」とし、それを具現化したのが、HMV&BOOKS TOKYOとなる。

「食」をテーマにしたコーナーを見るだけでも従来のCDショップとは異なることがわかる

ワインの隣にはワイン関連の書籍が置かれる

関連商材をまとめて売るために、売り場ごとにテーマがあるのも特徴だ。店内には「食」、小説やエッセイなどを揃え女性の生き方の秘訣が探れる「男と女」、着こなしやお避けの飲み方など大人向けの「大人の趣味」、新刊・新婦・話題作などの旬な最新情報を提供する「A Day in the Life」などがある。

売り場ごとにテーマが設定。写真は小説やエッセイなどを揃え女性の生き方の秘訣が探れる「男と女」

売り場ごとに専任の発注担当者がおり、担当者が売り場を作り込む。そうした、こだわりのある売り場に行くことで、思いがけない商品との出会いが生まれる。来店者が売り場を見る楽しさを提供する。