ドイツ・ベルリンで開催中の家電関連展示会「IFA2015」のソニーブースは、新スマートフォン「Xperia Z5」シリーズを中央に、その周囲をテレビやオーディオ、ゲーム、カメラが取り囲むように設置。メインの展示はXperiaだったが、ハイレゾオーディオの新製品が量・質ともに目立っている。本稿では、その中からコンパクトオーディオシステム「CAS-1」や車載プレイヤー「RSX-GS9」などを紹介する。

IFA2015会場、ソニーの出展ブース

中央にXperiaシリーズを展示。常に人だかりができていた

コンパクトでも高級スピーカー並みの音を実現

「CAS-1」は、デスク上においてPCやスマートフォン、ウォークマンなどと接続して利用するコンパクトなオーディオシステム。アンプと左右のスピーカーで構成され、コンパクトながら良質な音を再生できるのが売り文句だ。ハイレゾ音源の再生に対応し、前面と背面に1基ずつUSB端子を備える。NFCとBluetoothを搭載し、スマートフォンからワイヤレスでの再生も可能。Bluetoothはソニー独自の高音質コーデック「LDAC」もサポートしている。

CAS-1のホワイトモデル。デモではヘッドホンで聴いたときの音の良さを体感できる

こちらはブラックの本体と木目調スピーカーのモデル。こちらは、スピーカーからの音を体験できる。説明員はこちらのスタイルを押しているようだった

こうしたコンパクトなデスクトップオーディオシステムを開発した背景には、「大きな音を出せないため、音楽はヘッドホンで聴く」という現状があったという。ソニー社員ですら、ヘッドホンで音楽を聴き、「自宅でスピーカーを鳴らしていない」という人が多かったそうだ。そこで、「大きな音でなくてもヘッドホンを抜いてスピーカーで聴いてもらえるようなセットを作ろう」と思ったことが、開発に繋がったという。

本体前面と背面

アンプには「S-Master HX」を搭載。ブースの説明員は「10年ぶりに本格的に開発した。"S-Master Pro 2"と言ってもいい」レベルだと胸を張る。アンプの出力は24Wと小さいため、「ダイナミックレンジを上に狙うのではなく、下に。細かい音をどこまでも聞いてやろうとこだわった」そうだ。また、音量を下げて聞いても「曲の世界が見えて、サウンドフィルタが崩れない」ことも特徴だ。

スピーカーは同社のESシリーズと同クラスの木材を使用し、「余計な音を鳴らさない」、すなわちピュアなサウンドを志向しているそうだ。スピーカーはツキ板まで塗装にこだわり、付属のスパイクも真鍮削り出しのメッキを採用。高級感のある外観となっている。

真鍮削り出しのスパイクで、スピーカーに適度な角度が付く。低音増強と防振のため下に敷く5mm厚の鉄板も付属する

防振用に厚さ5mmの鉄板が標準付属するというこだわりも面白い。堅い木材の机やキャビネットに設置できる場合はともかく、コンパクトで設置場所を選ばないことがメリットの1つなので、薄いベニヤ板の上でも性能を発揮できるように「値段が高いのに」付属させたという。「とにかく机の上に素晴らしいステージを展開させてやろう。その思いでここまで物量をつぎ込んだ」そうだ。 さらに、深夜でもいい音が楽しめるように、ボリュームを下げても低域と高域の周波数を補完する「L.V.M(Low Volume Mode)」を搭載。ラウドネスカーブに応じて補完するレベルが変わる設計で、単純に補完しているだけではないそうだ。

開発では低音に苦労したという。スピーカーの底部にダクトを配置し、鉄板に反射させることで最適なバランスを実現した

スマートフォンでもコントロールできるが、リモコンも付属する。左下には「L.V.M」ボタンがある

基本的には、ワンルームなどに住む独身者、スマートフォンやウォークマンで音楽を聞く人をターゲットにしている。こうした層はヘッドホンで音楽を聴くことが多いからで、スピーカーで聴く楽しみを知ってほしいと担当者。欧州での販売価格は900ユーロ前後。日本でも早期の発売を期待したいところだ。