直販のデルから直間両立のデルへ。ソリューションカンパニーのデルへ。そして次へ。

既報の通り、8月1日付けで、デル株式会社の代表取締役社長に平手智行(ひらてともゆき)氏が就任する。現在の代表取締役社長である郡信一郎(こおりしんいちろう)氏は、米国デル社のAPJ担当副社長となる。

デル株式会社の新旧社長。写真左が現社長の郡信一郎氏、写真右が新社長の平手智行氏(2015年7月24日時点)

7月24日には、平手智行氏の就任会見が行われた。まず現社長の郡氏が登壇して、4年間の社長時代を振り返った。社長就任時は「これからのデルは、ソリューションを提供できる、そして信頼できるパートナーであることをお客様にお伝えしたい。そのために組織を変え、社員のマインドを変えて行く」と発言しており、デルはその後、180億ドルの投資によって30社以上を買収し、その8割がソフトウェアとITセキュリティの会社だったことを紹介した。

これまでの4年間を振り返る、デル株式会社 代表取締社長の郡信一郎氏

買収の成果をいち早く日本の市場に投入すべく、2013年に「Dell Software」とセキュリティ運用管理サービスプロバイダー「Dell SecureWorks」を設立。翌年には、アジアで初となるSOC(Security Operations Center)も開設した。Software-Defined Network / Storageやコンバージシステムの分野にも早くから取り組んでいる。

また、直接販売・間接販売の両方に対応するべく、人員を倍増する一方、パートナーと製品型番を共通化することで受発注の手間を半減。エンドツーエンドのセキュリティ製品やコンサルティングの提供も行った。

これらの施策の結果、これまで競合と思われていた企業も、協業するパートナーへと変化。1,000社以上に顧客に対して行った「デルは真のソリューションパートナーと思っている」というアンケート結果も、4年前は10%の方がノーと答えていたのに対して、昨年10月にはノーが1%未満に減ったとして、顧客の意識を変えることができたと自負していた。また、SecureWorksは海外展開している中で最も高成長を遂げ、SonicWall VPNは日本でトップシェアを占めるようになったという。

8月1日付けで代表取締役社長に就任する平手智行氏。就任会見の時点では、副社長という肩書だ

この「ソリューションプロバイダーとしてのデル」をさらに推進するのが、後任となる平手智行氏だ。郡氏は平手氏を、日本IBMや米国IBMの副社長を務め、その後ベライゾンジャパンの社長を務めるなど、25年を超える営業経験があるだけでなく、日本とグローバルの視点で実績を積んでいるリーダーシップを高く評価しているという。今後のデルソリューション提供に向けて、幅広いネットワークを持っていることも強みに上げていた。

平手氏は、7月から副社長としてデル株式会社に入社しており、現在は社長への引き継ぎ業務と顧客へのあいさつ回りを行っているところ。その際に「多くのお客様から(IT業界へ戻ってきたので)お帰りなさいと言われてうれしく思っている。デルでこれらのお客様やIT業界に恩返しをしたい」と語っていた。

創業者であるマイケル・デル氏とも対話する機会があり、(非上場化によって)中長期的な戦略で顧客や市場のために役立ちたいという熱い思いを感じたことが、社長就任の後押しになったという。

まだ具体的な方針は決まっていないとしながらも、顧客が今年求めるソリューションと来年求めるソリューションは異なり、その時に最適のソリューションを展開するとビジョンを述べた。一方、「デルは一貫してお客様の視点であり、オープンなスタンスを変えていないことがIBM時代にはなかった強み」として、これからのIoT時代でもデルのオープン性が有用に働くとした。