MicrosoftがWindowsやOfficeといったソフトウェアの開発スタンスを大きく変更したのは、Windows Vistaからである。2006年5月にリリースしたWindows Vista Beta 2は、それまでと異なり、誰もがダウンロードして試すことができた。

当時のWindows Vista Beta 2。ビルド番号は5384だった

当時のMicrosoftは、Windows XPの後継OSであるLonghorn(開発コード名、後のWindows Vista)を開発中だったが、その歩みは厳しかった。実装するはずだった統合ファイルシステム「WinFS」の完成に至らなかったため、Longhornの開発を一度リセット。「MinWin」と呼ばれていた基礎的なカーネルをベースにWindows Vistaを作り直した。この遅れを巻き返すためにMicrosoftは方針転換し、プレビュー版を一般公開するようになったのである。

Windows 10もその例に漏れず、2014年10月からプレビュー版を一般公開した。そして不具合や要望など多くの情報を収集するため、「Windowsフィードバック」を追加している。

Windows 10 Insider Previewの「Windowsフィードバック」

Microsoftはフィードバックへの投稿を求めているが、果たして我々ユーザーの声がどの程度反映されているのだろうか? そんな疑問に答える記事がWindows公式ブログに掲載された。投稿したのはData and FundamentalsチームでWindowsフィードバックのシニアプログラムマネージャーを務めるSamer Sawaya氏である。

Windowsフィードバックの開発や対応に携わるMicrosoftの面々

下図は2015年5月28日(米国時間)から直近までのWindows 10 Insider Previewに対するフィードバック数を示している。説明によれば2014年10月にリリースした最初のプレビュー版から数えて、300万件ものフィードバックを受け取ったという。

そのうちポップアップ通知による回答は250万件。Microsoft社内では、Windowsフィードバックから受け取った意見を「UIF(ユーザー・インタフェース・フィードバック)」、Microsoft側からユーザーへ応答を求めた結果を「SIUF(システム・イニシエイテッド・ユーザー・フィードバック)」と読んでいる。

Windows 10 Insider Preview ビルド10130に対するフィードバック件数の推移

受け取ったフィードバックはWindows 10に携わるすべてのチームで共有し、開発者は直接コメントを読んでいるという。下図はそのデータベースをWindows 10 Mobile ビルド10080を対象にしたフィードバックに絞り込んだものだが、スタート画面や検索、アプリケーションといった項目に分けて管理していることが見て取れる。

Microsoftに寄せられたフィードバックの数々。各国から受け取ったフィードバックを英語に統一している

以前、日本マイクロソフトの関係者は「フィードバックは日本語で構わない」と説明していたが、これはデータベース登録時に英語へ自動翻訳しているためと思われる。このローカライズに関してSawaya氏は「ローカライゼーションチームは、特定の言語を使用してフィードバックを検索し、誤ったUIの翻訳を修正している」と説明している。

Windows 10は190カ国/111言語に対応するため、ローカライゼーションチームの責任は重要だ。そこで、どのアプリケーションもしくは機能に対してフィードバックが増えているか解析するシステムを用意したという。下図はWindows 10 ビルド10049に対するキーワードクラウドだが、Microsoft Edge(開発コード名:Project Spartan)に関するフィードバックをひと目で確認できる様子がうかがえる。

キーワードをクラウド化し、マッチする機能やアプリケーションに関するフィードバックを検出している

ここで日本からWindows 10 Insider Previewに対して、どれだけのフィードバックが行われたか確認してみたい。Sawaya氏が公開したデータによれば、ビルド10130に対する日本からのフィードバックは154件。トップだった米国の4,817件に対して約30分の1だ。同氏は累計データを示していないため、この数字が多いのか少ないのか判断しかねるが、我々はもっと能動的に意見を述べた方がよさそうだ。

Windows 10 Insider Preview ビルド10130に対するフィードバック数。1位は米国、日本は9位である

その際は自分の意見が他と重複していないか、検索およびフィルター機能で確認するとよい。最近のWindowsフィードバックにはフィルター機能が加わり、現行ビルドの限定や提案・問題点の切り分けが可能になっている。

Windowsフィードバックのフィルター機能を使うことで意見の重複を防げる

これまで筆者は、Microsoftに個人情報が伝わるのを避けるため、フィードバックに関する機能を抑止するチューニングを紹介してきた(もちろん同社は個人を特定する情報収集は行っていないと説明している)。だが、このように我々が提案した意見や希望が開発チームに伝わり、Windowsが本当に使いやすいOSになるのであれば、積極的に意見を送ることは自身の利益につながるはずだ。

Windows 10は2015年7月29日のリリースに向けた最終段階に入り、関係者の話によれば9~10月頃にはWindows 10をプリインストールしたPCが店頭に並ぶ予定だという。Windows 10リリース以降もMicrosoftはフィードバックを受け付け、常にWindows 10を刷新することを明らかにしている。Sawaya氏が最後に「素晴らしいフィードバックを続けて欲しい」と述べたように、今後も我々のフィードバックはWindows 10によい影響をもたらすだろう。

阿久津良和(Cactus)