スマートバンドを不要にする?

Apple Watchは、ハードウェア的にも凄いものを持っている。それが心拍センサーだ。この心拍センサーは光学式と赤外線式を搭載し、他のスマートウォッチ、スマートバンドよりも的確に心拍を計測できている印象がある。心拍計測にかかる時間は通常、約15秒。そして、ユーザーが行わなくても10分ごとに自動的に計測し、そのデータはiPhoneの「ヘルスケア」アプリに送られて記録される。

グランスで必要に応じて心拍数を計測できる

iPhoneのヘルスケアに自動的に心拍数が記録される

また、「アクティビティ」アプリにおける運動力の計測にも心拍センサーを利用する。アクティビティアプリが「エクササイズ」と判断するのは、心拍数が一定以上になっている場合なわけだ。

このアクティビティアプリも面白い。前述のエクササイズ以外に「スタンド」、「ムーブ」の3つのパラメータを測定し、その進捗を円状に表示してくれる。完全に円を描けば、1日の目的達成というわけだ。

1日の運動量を計測できるアクティビティアプリ

なかでも面白いのはスタンド。これは1時間に1分以上立っていたかどうかを示すパラメータだ。「走った」とか、「歩いた」ではない。「立っていた」なわけだ。こんなパラメータを作ったのも、現代人の生活環境を考えればわからないでもない。

立っていることでパラメーターが上がる「スタンド」

多くの人は必ずしもジョギングしたりする時間や元気があるわけではない。しかし、1時間に1分立つぐらいの元気を絞りだすことはできそうだ。その気になれば達成できるかもしれないパラメータを設定し、人々のやる気を鼓舞する機能は、ほかのデバイスにはなく面白い。

Apple Watchはスポーツ向けというわけではないが、普通の人がごく普通に運動量を計測し、健康のためにに十分な運動量を確保するのに役立ちそうだ。Apple Watchは多くの人にとって、運動量を計測するためのスマートバンドを不要なものにしてしまうかもしれない。

スマートウォッチのアイデンティティとは?

スマートウォッチに対して、スマートフォンを取り出すちょっとした手間を省いてくれる程度のものだという人もいるが、常時装着していることで、より正確な運動量や心拍状態を自動的に記録できる。これは、スマートフォンにはできない芸当であり、スマートウォッチの独自性となるポイントであると思う。現時点ではまだ心拍数しか計測できないが、今後はより多くの健康状態を可視化できるよう進化していくのではないだろうか?

現在のApple Watchは、アップルが考える完全な完成形ではないかも知れない。しかし、スマートウォッチは単純に形状としての腕時計を置き換えるデジタルデバイスではなく、この時代に必要な情報を集約させたサムシングだと主張しているように僕には感じられた。Apple Watchはスマートウォッチを1レベル先に進めたデバイスなのは間違いないだろう。