Project Fiの狙いは?

第3の勢力を作ってまでして、Googleは携帯電話サービスをどのように変えようとしているのだろうか。米国でFiは、基本料金20ドル、データサービスが1GB=10ドルとシンプルで手頃な料金が話題になっている。しかし、これが割安かというと、個人でそれほど多くはないデータ(月1-2GB程度)を使用する分にはFiの方が低額になるが、3GBを超えてたくさんのデータを使う人や家族プランを契約している場合は、通信キャリア大手のサービスの方が割安になることが多い。ユーザーのデータの未使用分を翌月の請求から差し引くなどFiのプランはユニークであるものの、既存の通信キャリアに対して低価格競争を仕掛けるようなものではない。データ無制限オプションを用意しないなど、むしろFiのプランが過度に魅力的にならないように配慮している印象すら受ける。

Googleの狙いは「電話番号のクラウド管理」の普及にある。携帯電話の番号は端末のSIMカードに割り当てられた番号であり、電話番号へのテキストや通話はSIMカードを入れた端末で送受信するのが通常だ。Fiの電話番号の通話やテキストはクラウドで処理され、同じGoogle IDでログインしているPCやモバイルデバイスのHangoutsアプリでも、電話番号を使ったテキストや電話のやり取りが可能になる。

Project Fiのスマートフォン以外のPCやタブレットでも電話番号への通話やテキストに対応可能

電話番号のクラウド管理がなぜ重要なのかというと、たとえば今日のスマートウォッチは電話に関する機能をスマートフォンに依存しているが、スマートウォッチの独立を考えた時にスマートウォッチにSIMカードを搭載するのはスマートな方法とは言いがたい。Fi番号ならスマートフォンが近くにない時でもスマートウォッチがWi-Fi経由でネットに接続できたら、Hangoutsアプリで電話番号への通話やテキストに対応できる。クラウドで電話番号を処理することで、電話機能を活用できるデバイスが広がり、スマートウォッチやまだ見ぬ未来のモバイルデバイスの可能性も開ける。

今はまだ気づいている人は少ないが、そのうちFi番号を使う人たちがPCやタブレットで電話やテキストを行うようになる。その便利さが口コミで広がり始めたら、電話/テキストの利用が限られるVerizonやAT&Tに対する圧力になるだろう。Fi番号の場合、連携するのはGoogle IDとHangoutsになる。クラウドで電話番号を管理する便利さでHangoutsユーザーを増やしたいのがGoogleの本音だろう。それを良しとするかという議論も、いずれ起こることになりそうだ。かつてPCのメールソフトで行っていた電子メールの管理を、GoogleはGmailでクラウドに移行させた。それによってメールユーザーはGoogleに縛られたものの、メールをマルチデバイス、マルチプラットフォームで使う可能性が広がった。それと同じ変化を電話やテキストでも実現しようとしている。