搭載の進む3Dカメラ技術、以前に買収したPrimeSenseとの違い

深度情報を得て空間把握が可能な「3Dカメラ」がコンシューマの世界に入ってきたのは比較的最近のことだ。最もメジャーなものは「3Dモーションセンサー」として人体の動きでゲーム機へのUI入力が可能な「Kinect for Xbox 360」で、Microsoftから2010年に発売された。Kinect for Xbox 360では現在Apple傘下にあるイスラエルのPrimeSenseが開発した技術が用いられている。現在のMicrosoft Kinectでは別の技術が用いられているが、PrimeSenseの技術では赤外線(InfraRed)照射装置とそれを受光する"深度センサー"、そして通常の周辺画像を取得するイメージセンサーとマイクを組み合わせることで、音声コマンドと人体モーションによるゲーム機の操作を可能としていた。

3Dカメラの実現方式はさまざまなメーカーや研究所によって開発され数多存在するが、そのうちの多くはPrimeSenseが用いている「赤外線(IR)」+「深度センサー」の組み合わせというケースが多い。昨年末に対応製品(Dell Venue 8 7000 Series)が登場して話題になったIntelの「RealSense」もまた、このIR+深度センサーを用いた方式で、先ほど紹介したLinXが実現できる距離計測や後加工といった仕組みを実装している。

Intelは2015 International CESにおいて、このRealSenseカメラを用いて3Dオブジェクトを"スキャン"し、3Dプリンタでこのスキャンしたオブジェクトを出力するデモを行っている。RealSense技術を採用したスマートフォンやタブレットを手に、3D印刷したいオブジェクトの周囲をまわることでその形状や表面の色(質感)データの取得が可能になるが、これは加速度センサーなどを組み合わせることで撮影画像をリアルタイムで合成し、ソフトウェアでモデリングデータを自動生成することで実現している。

そしてIRを用いない方式の3Dカメラとしては、今回のLinXやPelican Imagingの技術が挙げられる。IR方式の3Dカメラにはいくつか弱点があり、まず屋外のような光の強い場所では測定誤差が大きいこと、そして赤外線照射距離の問題で数メートル~数十メートル程度の距離のオブジェクトの深度しか測れない。照射距離や時間を増やせば対応可能だが、モバイル端末ではバッテリ消費やモジュールサイズの問題もあり難しい。

LinXと同種の機能を提供する米Pelican Imagingの4x4アレイカメラモジュール

Pelican Imagingのカメラでは、16個のイメージセンサから取得した情報を基に撮影画像には3Dの空間情報が記録されており、写真にあるようにオブジェクト間の正確な距離を測ることが可能

一方でLinXやPelicanが採用する方式は「複数の格子(Array)状のイメージセンサーを組み合わせて画像を同時撮影」する手法で3Dカメラの「深度情報取得」を実現しており、IRにまつわる問題を解決できるほか、屋内外のどちらでも比較的高品質な画像を取得可能になっている。