「瞬殺」で完売した発売日

m-Stickの売れ行きは、想定を遙かに上回るものとなった。発表前に量販店などから反応を聞いたところ、予想を上回る販売数量になると想定されたため、同社では、当初の予定をずらした2014年11月28日に製品を正式発表。そして、12月5日に発売日を設定して、作りだめを行うことにしたが、それでも間に合わない状況となった。

m-Stickの販売ページ(3月5日時点)。製品ステイタスはほとんど「入荷待ち」の状態だ

「切らしたくないということで発売日を12月5日にし、発売当日までに量販店様への出荷を含め4桁(1,000台以上)の台数を用意した。だが、直販サイトでは『瞬殺』で終わった」と、平井部長は発売日を振り返る。

昨今、北陸新幹線の一番列車の前売りが25秒で完売したというニュースが流れた。これは1編成あたり934席が対象。販売方法の違いなどもあり、直接比較するには条件が異なるが、「リロードした途端に、売り切れてしまっていた」というm-Stickの発売状況は、1万9800円という価格の製品であることを考えても、社会現象ともいえた北陸新幹線始発チケットの人気ぶりに劣るものではないといえよう。

そして、この勢いはその後も持続している。12月5日の発売以降、ほぼ木曜日ごとに追加で販売しているが、いまでも数分で売り切れるという状況が続いている。量販店では依然として在庫が確保できない状況が続いている。

最終組立および検査は、長野県飯山市の同社飯山工場で行われている。北陸新幹線の飯山駅が最寄りの駅となるが、同工場では「限界といえるほど」に、m-Stickの生産ラインを増設。専用ラインでm-Stickを生産しているという。「なんとか品不足を解消したい」と平井部長は語るが、この人気ぶりに供給が追いつくかどうかがこれから注目される。

マウスコンピューターの飯山工場

一方で、m-Stickの19,800円という価格設定にもこだわりがある。m-Stickでは、CPUにインテル Atomプロセッサー Z3735F(最大1.83GHz、4コア4スレッド)を採用。それが1万9800円の価格を実現する最大の要因だが、この価格設定は容易ではなかった。

m-Stickは、Windows 8.1搭載の8型タブレットに比べて、液晶ディスプレイやバッテリを搭載していない分、低価格に作ることができるとも思える。しかし、基板や部品などが8型タブレットよりも高価であること、OSにはWindows 8.1 with Bingを採用したものの、これがマイクロソフトが展開する特別プログラムからはずれるため、有償で調達していることが、コスト増につながった。

さらには、昨年後半から円安が進展したことでの部品コストの上昇に加え、生産が間に合わなくなったため、部品を空輸していること、増産体制を敷くための人員確保に人手が必要になったことなど、想定以上のコストがかかっていることも、価格実現にはマイナス要素となっている。

それでも19,800円という価格を実現したのは、同社の企業努力抜きには考えられないだろう。