(6)人間の心が読めるロボット「Pepper」

ソフトバンクが6月に発表した感情認識型ヒューマノイドロボット「Pepper」は、顔の表情や声のトーンで人間の気持ちを理解し、"エモーショナル(感情)エンジン"にアクセスして言葉をかけるなどの反応をするものだ。Pepperはクラウドに接続し、学習したことを共有することで、継続して直感や反応を改善していくという。

正しく人間の感情を測定できる人工知能(AI)は、感情的な社会ロボットの進化という点で重要だという。これにより、日常生活でロボットがツールではなく、コンパニオンとなり得るからだ。

ソフトバンクが開発したロボット「Pepper」

(7)MAVENが火星の軌道に到達

NASAの火星探査機「Mars Atmosphere and Volatile Evolution(MAVEN)」が9月、10カ月に及ぶ飛行を経て火星の軌道に入った。MAVENはこれから火星の大気を測定することになっているが、火星の大気については諸説あり、今回の軌道入り成功は科学界にとって重要なイベントとなる。

MAVENは地球の隣人である火星を理解するという大きなミッションに基づくものだが、宇宙分野に限らず、自分を取り巻く周囲を理解しておくことは重要だという。また、火星に移住できるかという古くから続く議論にとっても、重要な情報を提供してくれることだろう。

火星探査機「MAVEN」 写真:NASA/GSFC

(8)血液検査でうつ病診断に期待

米ノースウェスタン大学医学部のEva Redei教授は、17年前からうつ病診断の効果的な方法に取り組んできた。Redei氏は2012年、十代のうつ病を血液から検査する方法を発表、その後これを成人に拡大すべく研究を続けてきた。そして9月、新たな成果を報告した。

Redei氏の検査によると、うつ病患者とそうでない人とでは9種類のRNA血液マーカーの血中濃度が異なった。うつ病患者に18週間の認知行動療法を行った後に再度検査したところ、うつ病から回復したとする元患者の濃度が変わっていることがわかったという。

メンタル面の病気は難しい課題であり、自殺などの悲劇が起こった後に対応の重要性が認識されるというパターンが多いとされている。患者は自分が抱えている症状をうまく伝えられないケースも多いといわれており、医師による診断基準が明確でないという事態につながっている。血液検査であれば科学的に客観的に診断でき、処置がより明確になるし、治療に使う薬も個人に合わせて処方できる。

(9)カッシーニが10周年

先に紹介した土星探索機のカッシーニが10周年を迎えた。巨額の資金を注ぎ込んだプロジェクトで、打ち上げは1997年にさかのぼる。土星到着は2004年、それから10年の間に200万回のコマンドを実行し、20億マイル(約32億1868万キロメートル)を飛行、収集したデータは514GBで33万2000点の写真をキャプチャしたという。プロジェクトには26カ国の研究者が参加し、3039件の論文が発表された。7個の衛星を発見するなどの成果ももたらした。

カッシーニは、世界の注目の的である土星の輪に関する情報収集に大きく寄与しており、特に衛星のタイタンとエンケラドスには生命につながる要素が見つかった点は大きな前進と言えそうだ。

(10)スタンフォード大らが超小型無線

スタンフォード大とカリフォルニア大学バークレー校は9月、アリと同程度という超小型サイズの無線機を共同開発したと発表した。小型であるだけでなく、バッテリーも不要、無線を受信するあらゆるものに挿入して利用できるという。さらには、製造コストも1セントという。開発に3年を要したプロジェクトで、アンテナに信号が運ばれるのと同じ電磁波から電力を集めるため、省電力効果も期待できるという。

今回、選ばれた理由として、モノのインターネット(IoT)時代が本格化しており、このような超小型、安価な無線技術が必要とされていることが挙げられている。