11月26日、米ジョウボーンは、活動量計「UP」シリーズの新製品「UP MOVE」と「UP3」の2モデルを日本国内で発売することを発表した。同日には記者会見も行われ、米ジョウボーンの国際パートナー・製品開発部門担当者のヨーゲン・ノルディン氏と、日本担当ゼネラルマネージャーの岩崎顕悟氏が出席し、戦略説明が行われた。

本当に毎日身に付けられるウェアラブルデバイスを目指す

国際パートナー・製品開発部門責任者のヨーゲン・ノルディン氏。胸に着いているのが今回発表された「UP MOVE」

まずはノルディン氏により、現在のウェアラブルデバイス市場の分析が行われた。現在のウェアラブルデバイスは大きく分けて、(1)スマートウォッチ、(2)フィットネストラッカー、(3)アクティビティトラッカーという3カテゴリに分類される。

このうち(1)スマートウォッチと(2)フィットネストラッカーは、単独で情報を表示できるぶん、サイズが大きくかさばり、バッテリー消費が大きいという共通の問題があることを挙げた。毎晩充電しなければならないことや、付けたまま寝られないため、睡眠のトラッキングが行えないことが課題であり、まだ真の意味でのウェアラブルではないと指摘した。

これに対し、(3)のアクティビティトラッカーは、サイズが小さくファッショナブルで、消費電力も小さく、毎日一晩中でも着けていられるため、生活に入り込める真のウェアラブルデバイスだとする。ジョウボーンはこの分野にフォーカスしていることをアピールした。

データ分析で生活の質改善を提案

続いて競合他社に対する同社の強みと、プラットフォームに関する説明が行われた。

アクティビティトラッカー分野において、競合に対するジョウボーンの強みは、ユーザーに対する生活改善の提案だという。ジョウボーンは最初の製品「UP」を2011年に投入後、これまでに1兆7,000億歩、1億7,000万回ぶんの睡眠、そして1,800万の食材に関する活動ログを取得しており、このデータを解析してエンドユーザーの生活を改善するヒントをアプリ内の「Smart Coach」機能で通知している。

ユーザーに生活改善のヒントを提示する「Smart Coach」のイメージビデオ。さまざまなタイミングで運動や食事、睡眠に関する情報を提示して、ユーザーのモチベーションを高めてくれる

iOS版「UP」アプリはiPhoneに内蔵された加速度センサーなどを用いて、アクティビティセンサーなしでも歩数などの情報を収集してくれる。iOS 8の「Healthkit」との相互連動など、他プラットフォームとの連携も可能

社内でのリサーチでは、98%の社員がUPを使うことで、生活がより健康的に改善されたと回答しているという。外部機関の調査でも、81%のユーザーがUPを使うことで健康に配慮するようになったと回答したほか、全体的に競合製品よりも高い数字が出たと自信を見せた。

また、同社はUPプラットフォームに対するAPIを公開しており、ジョウボーン製ハードウェアだけでなく、トラッキング機能を備え、歩数などの情報を収集できるスマートフォンやAndroid Wear、Pebbleなどのスマートウォッチ用にも門戸を開いている。現在UPプラットフォームを利用したアプリ・サービス(UP App)を開発するデベロッパーは約1500あり、日本のデベロッパーの参加を歓迎すると表明した。

UP Appによってユーザーがアクティビティトラッキングを始めると、眠りの質や食事の栄養といった情報を知りたくなり、スマートフォンアプリでは物足りなくなってくる。そうしたユーザーに対して同社のUPシリーズを提供していくという戦略だ。

入門機とハイエンド機を同時に投入

これらの分析を踏まえ、ジョウボーンはエントリーモデルの「UP MOVE」と、ハイエンドモデルの「UP3」の2機種を発表した。

「UP MOVE」は歩数、運動量、消費カロリー、睡眠に関する情報記録するシンプルなアクティビティトラッカー。同社の「UP」シリーズはこれまでリストバンド型だったが、UP MOVEではコイン状のコンパクトな形状を採用し、クリップ型のケースが付属する。このクリップで洋服のポケットなどに取り付けて計測するほか、別売りのリストバンドを利用すれば従来と同様の使い方もできる。スマートフォンとの接続はBluetooth LEを使用。電池はボタン電池(CR2032)で、最長6カ月稼働する。発売は12月中旬からで、価格は6,480円(税込)。

「UP MOVE」のサイズは、ほぼ500円玉程度と非常にコンパクト。付属するクリップタイプのケースとセットで使用するほか、単体でポケットなどに入れて使用してもいい

左がUP MOVEをリストバンド(3色セット3,980円)に装着した状態。バンドの幅はスタンダードで、一回り細いスリム幅のものも販売される

ハイエンドモデルの「UP3」は、心拍数センサー、3軸の加速度計、バイオインピーダンスセンサー(生体に電流を流し抵抗を測定するセンサー)、皮膚温/気温センサーと4つのセンサーを搭載しており、従来の「UP」シリーズよりも詳細な活動情報を取得できる。

また、従来の「UP」シリーズが腕の太さに合わせて複数サイズ展開していたのに対し、UP3では腕時計のように巻きつけるタイプのバンドに変更。ユーザーが固定する金具の位置を調整できるようになり、1サイズで展開することになった。

UP3は水深10mまでの防水仕様となっており、公式に水泳時のトラッキングもサポートする(消費カロリーのみ)。充電はUSB経由で行い、内蔵バッテリーでの稼働時間は最大1週間。価格は2万1,800円(税込)で、2015年1月から販売開始される。

左が既存製品の「UP」と「UP24」、中央右寄りが「UP3」。バンドに新素材を採用し、1サイズ展開が可能になったほか、密着感が増した。留め具はスライドして固定する独自のものを採用している

裏側にはバイオインピーダンスセンサーの電極があり、この電極を肌に密着させ微弱な電流を流すことで計測する。心拍センサーは消費電力の高い光学式ではなく電気式を採用

製品ファミリーは3つのアクティビティセンサー+無料のアプリで構成される。記録するデータの充実に合わせて製品もランクアップしていく

質疑応答では、これまでの「UP」シリーズは初期不良率の高さやサポート体制に対する不満が高かったことを指摘されると、過去2年間で蓄積したノウハウを集約して製造体制の見直しを行っており、UP MOVEやUP3では従来よりも不良率が下がるだろうと自信を見せた。またサポート体制の強化により、修理交換などの対応も早くなるだろうとしている。

日本担当ゼネラルマネージャーの岩崎顕悟氏は「日本の携帯電話向け健康アプリを開発していたデベロッパーの参加を期待したい」と語った