厚さ6.1ミリ、現時点で世界最薄タブレットである「iPad Air 2」。筆者もその薄さと、Touch IDに惹かれて購入したが、良い意味でサプライズがあった。A8Xプロセッサのパフォーマンスだ。A7(iPad Air、iPhone 5s)に対してA8(iPhone 6/ 6 Plus)が際立った伸びではなかったため、A8Xにそれほど大きな期待をしていなかったのだが、単純にGeekbench 3のスコアを比べたら2011年頃のMacBook Airに比肩するものだった。

6.1ミリの薄さで、Retinaディスプレイ、iPad Airを圧倒するGeekbench 3スコア

iPad初の「ゴールド」、嫌みな感じのない落ち着いたゴールドだ

発表会での説明によると、A8Xは約30億個のトランジスタを搭載する。その時は比較がなかったためほとんど話題にならなかったが、iPhone 6のA8プロセッサのトランジスタは約20億個である。10億個の差が何に使われているのか。Geekbench 3のシステム情報によると、A8Xは「クロック動作:1.51GHz」で「3コア」だ。A8やiPad Airが搭載するA7は2コアである。

■Geekbench 3

A7(iPad Air) A8X(iPad Air 2) MacBook Air 11" 2011(Core i5-2467M)
シングルコアスコア 1425 1815 1887
マルチコアスコア 2574 4515 3531

シングルコアスコアも伸びているが、マルチコアスコアの伸びが圧倒的だ。Geekbench 3によると、iPad Air 2はL2キャッシュが2MB、RAMは2GBだ (iPad AirはL2キャッシュ:1MB、RAM: 1GB)。パフォーマンスの違いを生み出す基本スペックが向上している。GPUについても、3D FuturemarkのスコアはA7(iPad Air)の15120に対して、A8X(iPad Air 2)は21778だった。

iPad Air 2のGeekbench 3スコア(Your Device)を他の端末と比較、2番目はiPhone 6、3番目はiPhone 6 Plus、4番目はiPad Air。左はシングルコアスコア、右はマルチコアスコア

ただパフォーマンスを理由にiPad AirからiPad Air 2に買い替える必要があるかというと、現状iPad Airのパフォーマンスでも十分に満足できる。既存のアプリを使っている分にはベンチマークスコアほどの差を実感できない。

発表会では、Pixelmator Teamが新たに開発したiPad版の「Pixelmator」のデモを披露したが、Macの人気写真ソフトのiPad版をAppleが選んだのは意図的なものだろう。iPad Air 2でのPixelmatorの動作は、筆者のようなMac版のPixelmatorユーザーを満足させる滑らかさである。グラフィックスAPI「Metal」を使用したゲームをiPad Air 2で遊ぶと、iPad Airよりも一段と美しく精細で、まるでMac用のゲームで遊んでいるような感覚だ。Appleが12.9インチのiPadを開発しているという噂があるが、iPadのパフォーマンスが一昔前のMacBook Airに劣らないレベルに達していることを考えると、大きくてパワフルなタブレットへの製品ラインナップの拡大は十分にあり得る。iPad Air 2のパフォーマンスの余裕は、それを予感させる。