米Intelは、米国サンフランシスコ市で開発者向けのイベントIntel Developer Forum(IDF)を9月9日から開催している。ここでは、基調講演や「メガセッション」の取材をもとにそのレポートを行う。

基調講演を行ったブライアン・クルザニッチ氏。手に持っているのは、インテルがファッションブランドOpening Ceremonyと共同開発したスマート・ウオッチMICA(My Intelligent Communication Accessory)

これまでのIDFでは、3日間の開催期間中に複数の基調講演があり、CEOの講演を皮切りにPCクライアントやサーバ、通信関連などの各担当者がプレゼンテーションを行っていた。しかし、今年のIDFでは、初日の朝、CEOであるブライアン・クルザニッチ氏の基調講演が行われるのみとなった。そのかわり、初日と2日目には、「メガセッション」と呼ばれる講演枠が設けられ、そこで各分野の担当者が講演するというスタイルになった。ただ、メガセッションには、基調講演と見るには、多少内容の薄いものもあり、各国のプレスからは、あまり評判がよくなかった模様だ。

クライアントPCのメガセッションを行ったカーク・スカウゲン氏

基調講演では、直前に発表された「Core M」こと、「Broadwell」(開発コード名)の紹介とともに、次世代となる「Skylake」(開発コード名)の動作デモが行われた。Skylakeは、開発が順調に進めば、来年の下半期(2015H2)に登場予定だ。この世代は、Broadwellと同じ14nmプロセスで製造されるため、製造にかかわる問題は少なく、また、マイクロアーキテクチャの大きな刷新が予定されている。講演ではどのようなアーキテクチャになるかなどについては一切語られなかった。AVX命令関係で強化があるというウワサはあるようだし、内蔵グラフィックスも当然強化されるはずだが、それだけでは、大きな性能向上は見込めない。そのほかにメモリ保護の機能などが入るようなのだが、搭載されるといわれている機能の多くは、用途が限定されたり、処理性能には影響がなさそうなものばかりだ。インテルが今後搭載するであろう機能については、インテルの開発者向けのドキュメントとしていくつか公開されている。しかし、性能向上には、これ以外の部分も必要と思われ、内部構造の変更などいろいろとあるのかもしれない。

14nmプロセスで製造されるBroadwellは、Core Mが年内に出荷開始で、第5世代Coreシリーズは、2015年の早い時期に出荷開始

次世代プロセッサSkylakeは、2015年後半に登場予定

Intel MPX
https://software.intel.com/en-us/articles/introduction-to-intel-memory-protection-extensions
※また、以下のURLにある「Intel Architecture Instruction Set Extensions Programming Reference」には、MPX以外の未実装の命令拡張に関する記述がある(上のMPXの解説から参照しているのは古いバージョンのドキュメント)
https://software.intel.com/en-us/intel-isa-extensions

しかし、Broadwellが年内にCore Mとして限定出荷、年明けに第五世代Coreプロセッサととして登場することを考えると、Broadwellの寿命が少し短すぎるような感じはある。Skylakeが年内ぎりぎりの出荷であっても、米国のクリスマス商戦を考えると、今回のCore Mのように10月には、搭載製品の出荷が行われていなければならない。

Skylakeを搭載した2in1マシン

インテルは、リファレンス設計や、リファレンスプラットフォームを提案することで、次世代のCPUを採用するPCの構成要素などを決めているが、今回の基調講演やメガセッションでは、次世代のPCが提供する「ユーザー経験」として、以下の3つを挙げていた。

  • No Wires
  • No Passwords
  • Natural User Interface

インテルは、ユーザー経験を向上させる要素として「No Wires」、「No Passwords」、「Natural UI」の3つを提案

「No Wires」(配線なし)については、インテルはワイヤレス給電とワイヤレスディスプレイを提唱する。前者は、Alliance for Wireless Power(A4WP)が標準化を行うRezenceワイヤレス給電方式を推奨するようだ。インテル自身がA4WPに加盟しており、比較的PC系の企業が目立つアライアンスだが、元々はクアルコム社が提案した技術がベースになっている。

No Wireのための1つの技術としては、企業向けのIT管理機能に対応したWiDi(Wireless Display)を提案。ただし、これはすでに製品が入手可能

またワイヤレス充電技術としては、A4WPのRezence技術を推進。クアルコムがWireless Power社を買収し提案元になり、A4WP(Alliance for Wireless Power)を設立。インテルもこれに参加している

ワイヤレスディスプレイに関しては、現行のWiDi(Wireless Display)を強化したWiDi 5.0と、高速なワイヤレス通信仕様であるWiGigを利用したものをデモ。WiDiは、既存の無線LAN技術を利用するが、WiDi 5.0では、ビジネス分野で利用できるように管理機能などを導入している。WiGigは、60ギガヘルツという高い周波数を使い、最大7メガバイト毎秒という高速な通信を可能にするもの。インテルとしては、ワイヤレスディスプレイだけでなく、機器間のデータ転送などの用途を想定している。また、これに関連してOpen Interconnect Consortiumで接続などに関しての標準化を行うという。

その先のワイヤレスディスプレイを含む高速無線技術してWiGigを提案。機器間の接続などに利用するためOICで標準化を行う

WiGigチップを見せるスカウゲン氏

「No Passwords」に関しては、インテルのRealsense技術による奥行き情報を得られるカメラによる顔認識を想定しているようだ。最近のタブレットでは、Skypeのようなビデオ通信のためにフロントカメラを内蔵している機種が増えたが、インテルは、Realsense 3Dカメラとしてフロントカメラ用のモジュールも開発しており、同技術を搭載したタブレットなどで顔認証を使い、パスワードの管理を行わせるものではないかと思われる。奥行き方向の情報を得られることで、写真やディスプレイなどに映った顔と実際の顔を区別することが可能になる。

No Passwordsのためにインテルは、顔認証技術を導入するようだ。おそらくはRealsense 3Dカメラを利用してセキュリティを高めるものと推測される

Realsense 3Dカメラには、リアルタイム処理用のフロントカメラF200、同リアカメラR200と、撮影後に処理を行うことを想定したリアカメラR100が用意される

Realsense 3Dカメラにより、足のサイズを計測するデモ。側面と正面から撮影するだけで実寸が得られる。距離情報とカメラの画角から大きさを推定している

基調講演に登場したDellのマイケル・デル氏。手に持っているのがインテルRealsense 3Dカメラを搭載したVenue8 7000タブレット

最後のNatural User InterfaceもRealsense技術を使うものだ。インテルは、このために3つの3Dカメラモジュールを提供する予定だ。このカメラモジュールは、すでにDell社の8インチタブレットであるVenue8 7000での採用が決まっており、基調講演では、Dell社のマイケル・デル氏が登場してデモを行った。