P85+の試乗では、住宅街の中の一般道や幹線道路、そして高速道路を走ったのだが、第一印象はとにかくパワフル。ガソリン車でも最高級クラスのセダンは2tを超えるのが普通なのだが、乗用車としてヘビー級であることは間違いない。筆者の感覚だと、アクセルを踏んでワンテンポ遅れて加速を開始するようなイメージを持ってしまう重さなのだが、そんなレスポンスの悪さは一切なし。バツグンの加速感で、とにかくダイレクト。踏んだ瞬間に踏んだだけ確実に加速し、それもちょっと強めに踏むと、体をシートに押しつけられるほどである。

もちろんどんなクルマでも加速すればある程度、体をシートに押しつけられるものだが、モデルSのこの強烈な加速はちょっと押しつけられ方が違う。しかも、別にアクセルを半分ぐらい踏み込んだ程度でも高速道路の本線に合流するのに十二分な加速が得られるわけで、もしベタ踏みしたらどれだけ加速するんだろうと、ちょっと怖くなるほどである(もちろん0→100kmが4.4秒という加速感を体感できるわけだが、その加速度域をほかのクルマが多数走っている高速道路で体験しようとするには怖くてちょっと無理)。

ともかく写真撮影をしている時のモデルSは、乗り心地や内外の高級感・上質感、利便性などを実現するために高額化したという高級車のイメージの方が強かったのだが(若干スポーティ寄りの外観ではあるが)、この加速感を味わってしまうと、ジェントルな外見の内側には、スーパーカークラス(スピードリミッターがあるのが残念)の真の姿が隠れているということを実感できた。

ちなみに米国本社のチーフデザイナー・Franz von Holzhausen氏の言葉が公式Webサイトで紹介されているが、ワールドクラスのアスリートの高い効率、優雅さとパフォーマンスを具現化しており、無駄のないフォルムはよどみないスピードと躍動を表現しているのだという。

また加速力の話に戻るが、これだけあると、特に高速の合流はもう安心極まりない。一般道での速度域から高速道路の時速100km前後の速度域まであっという間なので(そりゃ、停止状態から100kmまで4.4秒しかかからないのだから、50~60km程度から100kmなんてあっという間である)、流れに乗り切れないかも、というような怖さが全然ない。また追い越し車線に入ってからも一気に加速できるし、重量配分が48/52と、1人でドライブする時はほぼ50/50になる設計なのでハンドリングもバツグンで、スイスイと走れる。この運動性能に対しては、もう車両価格的な面から個人的にはただ単に「いいなぁ~」と感嘆のため息をつくしかないという状態である(笑)。

あと、回生ブレーキが強力なのも印象的だった。ハイブリッド車や電気自動車は何台も乗っているのだが、街中や特設会場での試乗という低速度域でのドライブだったせいか、乗ったクルマは回生ブレーキも装備されているはずなのだが、そういう味付けがなされていたのかも知れないが、こんなに減速Gが強かった記憶がない。

モデルSの回生ブレーキの強さは、アクセルを離した途端にすぐに利き出して前に体がのめるような感じなので、例えるなら、4速→2速という感じで一気にシフトダウンしてエンブレを利かせたようなイメージといえばわかってもらえるだろうか? これだけ回生ブレーキが強力だと、通常のブレーキはあまり使用せずに済んでしまうほどである。

それから乗り心地について。まず車内スペース的な話だが、米国製のクルマなので、ドライバーズシートに関しては、日本人が乗るにはまず問題ない(画像15~17)。ちなみに筆者の身長182cm、体重87kgで日本人としては大柄な部類に入るが、まったく圧迫感とかは感じなかった。たぶん、スペース的に窮屈さを感じるのは、もちろん個人差はあるだろうが、190cmから上の体格が必要ではないだろうか。

画像15・16・17:前列のスペース。車高が低いことや筆者の体格などが重なって乗り降りで少し苦労することもあったが(ちょっと頭をぶつけた)、乗ってしまえばスペース的に余裕があるのでまったく問題がなかった

またステアリングのポジション調整も、チルト(上下)とテレスコピック(前後)の両方を電動で行え、そのポジションを10人分まで覚えさせることが可能である(画像18)。要は、家族だとか社用車だとか、複数人が乗る場合、設定を一発で呼び出せるので便利というわけだ。ステアリングの右にあるのがセレクターレバー(画像19)。レバーの頭のハットスイッチがパーキングボタンとなっており、上がリバース、中央がニュートラル、下がドライブだ。筆者の乗るオデッセイはこの位置にウィンカーレバーなので間違えてニュートラルに信号待ちから左折で入れてしまった(笑)。左側には2本のレバーがあるが、下側がウィンカーレバー(画像20)。筆者の場合、ウィンカーレバーは右という感覚が染みついているので、セレクターレバーが右にあるのはちょっと慣れないと怖いところがあった。

画像18(左):ステアリング周り。セレクターレバーが右側にあり、正面からだとウィンカーレバーは隠れているが左側にある。画像19(中):ステアリングを右から。セレクターレバーのハットスイッチを押すとパーキングモードになるが、パーキングブレーキのペダルやレバーなどは特にない。画像20(右):ステアリング左側。正面からは見えなかった下側のレバーがウィンカーレバー

また正面のモニタ類には、停車時はグレード名とカラーリングも実車と統一したモデルSのCGが中央に表示されており、下に緑のバーでバッテリの残量、その上に被せる形で走行距離となる(画像21)。その右には消費電力量を表した折れ線グラフがあり、どれだけエコ走行をしたか、もしくは逆に電力を消費する走りをしたかがわかる。走り出すとモデルSのCGが消え、そこに大きく速度がデジタル表示され、その周囲にアナログ風のパワーメーターという構成になる(画像22)。

画像21(左):停車時の正面モニタの内容。画像22(右):走行時の正面モニタは速度のデジタル表示(時速64km)と、その周囲にパワーメーター