3社の今後と仏Iliadの動向

前回のレポートでも触れたが、AT&TのT-Mobile買収で問題となった「Breakup Fee」と呼ばれる破談金については、今回は発生しないと考えている。正式発表前の撤回ということで、前回とは条件が異なるからだ。

今回のWSJの報道を受けた直後、T-Mobile、Sprint、ソフトバンクの3社ともに株価が急落している。T-MobileとSprintは5日の時間外取引でそれぞれ9%と19%の下落、ソフトバンクは6日の取引で3.50%のマイナスとなっている。買収の可能性が消滅したT-Mobile株価が下落するのはわかるが、Sprintの時価総額が一気に2割近く目減りしたあたり、この買収断念のインパクトの大きさがわかるだろう。

5日(米国時間)のT-Mobile USA株価。時間外取引の部分に注目(出典:Google)

5日(米国時間)のSprint株価。時間外取引の部分に注目(出典:Google)

6日(日本時間)のソフトバンク株価の動き(出典:Google)

T-Mobileについては時間外の急落で株価が30ドル台の水準になっているが、これは先日仏Iliadが出した「1株あたり33ドル」での買収提案額を下回る。もっとも、この提案は現在のT-Mobileの親会社である独Deutsche Telekomから一蹴されていることからもわかるように、株価に対するプレミアも上乗せされておらず、そもそも本気の買収とは思えない。Sprint撤退がIliadにとってチャンスかという話もあったが、少なくとも現状で買収することは無理だろう。

先ほどのReutersの報道によれば、IliadはT-Mobileの買収提案を撤回しておらず、何社かのCATV会社の協力を得てDeutsche Telekomを切り崩していく狙いのようだ。会社名として上がっている協力会社はDish Networks、Cox Communications、Charter Communicationsで、おそらくは資本参加も合わせて「ソフトバンク+Sprintの1株40ドルによる買収提案」ほどではないものの、より良い条件を提示してくるのではないかと考えている。Deutsche Telekom自身はT-Mobile USAを売却したがっており、そのお眼鏡にかなう条件を提示できればいいわけだ。FCCも米国内の2社の合併は許さなくても、携帯キャリアの1社の親会社の資本がドイツからフランスに移るだけであれば許可してくるだろう……という判断もあると思われる。

以上が現状の簡単なまとめだが、今後しばらく大きな動きはみられないと考えている。一方でソフトバンクが米国を含む海外戦略をどのように変化させていくのか、今後半年ないし1年くらいの間、観察しているといいだろう。

(記事提供: AndroWire編集部)