データの大容量化に伴い、コンシューマーの間でもNAS(Network Attached Storage)は一般的なデバイスとして扱われるようになった。日本国内はバッファローやアイオーデータ機器などが根強い人気を持つものの、QNAPやNETGEARなど海外メーカー製NASの評判も高い。そんなNASベンダーの中でも海外では定番に数えられるのが、台湾のSynology(シノロジー)である。

2000年に設立したSynologyは、4年後の2004年にLinuxベースのNAS「DiskStation DS-101」を発表。ファームウェアかつ管理アプリケーションである「DSM(DiskStation Manager)」を搭載し、ファイル共有やバックアップ、RAID管理機能などを備えてきた。DSMはニーズに応じた新機能やバグフィックスを施したアップデートを続け、最新版は一般的なOSのGUIを模したDSM 5.0まで成長している。

Synology製NASのラインアップは豊富で、コンシューマー向け製品はもちろん、SOHOや課内専用NAS、中小規模から大規模企業まで用途に応じた数多くのモデルをリリースしてきた。今回取り上げるのは、コンシューマー向けの新製品であり、中小企業およびSOHO向けにも利用できる4ベイNASサーバー「DS415play」である。(製品のリリース情報はこちら)

DS415play

同社製品名はプレフィックス(接頭辞)としてDiskStationを意味する「DS」とクラスやベイ数を示す数値が基本的だが、無線LAN共有を主体とする「~air」やコンパクトなきょう体をアピールする「~slim」といったサフィックス(接尾辞)を付けてきた。そして本製品名には「~play」があるようにメディア機能を強化したモデルだ。既に2ベイ版の「DS214play」を2013年11月末にリリースしているが、末尾数字が繰り上がったことからもわかるように、「DS415play」はパワーアップ版に相当する。

COMPUTEX 2014で発表されたモデルとして、日本では2014年8月中旬から発売開始となる予定だが、今回は発売前の評価版機材を貸与する機会を得たので、その内容をご報告しよう。

HDD設置時もネジが一切不要、初期設定も簡単

まずはDS415playのハードウェア構成から紹介したいところだが、本稿執筆時点では公式情報が公開されていないため、目に付いた箇所から確認しよう。NASの核となる2.5/3.5インチのシリアルATAは4ベイ。HDDおよびSSDをサポートしている。外部ポートはUSB 3.0が前面1ポート、背面2ポートの合計3ポート。USB 2.0は背面に2ポート。さらにきょう体背面には、ギガビットLANポートが1つ。きょう体サイズが似た「DS414」と異なり、LANポートを減らしてUSBポートを増やしたようだ(図01~02)。

図1: DS415playの前面には、ステータスランプ以外にUSB 3.0ポートを1つ用意している

図2: DS415playの背面には、USB 2.0ポート×2、USB 3.0ポート×2、LANポートなどが並ぶ

ドライブベイにHDDを取り付けようと、箱から取り出すと合成樹脂と思われるきょう体が現れる。本体重量は2.03キログラムとNASしては軽い。さらにきょう体正面にある鏡面仕上げのハードドライブベイカバーを外した時点気付いたのだが、ネジの類が使われていないのである。もちろんファンなど基本的にユーザーがタッチしない部分はネジで固定されているものの、当初感じた安価なイメージを払拭するようなポリシーで設計しているのだろう(図03)。

図3: ハードドライブベイカバーを外すとハードドライブトレーの脱着が可能になる

ネジ不要のポリシーはベイカバーだけではない。ハードドライブトレーまで完全にネジが不要なのだ。たとえばトレーにHDDを取り付ける場合、側面にある固定パネルを外し、HDDとトレーのネジ穴をそろえてから固定パネルを取り付けるのである。NASを使っている方ならご承知のとおり、最初のHDD設置は比較的面倒な作業だ。それが4ベイや5ベイ、8ベイともなると途中で休憩を入れたくなるほどである(図04~05)。

図4: こちらがハードドライブトレー。すべてプラスチックで構成されている

図5: HDDのネジ穴部分には突起があり、この位置に3.5インチHDDを取り付ける

だが、DS415playの場合、ネジを一切使わずに済むため、ネジ回しのドライバーを用意するでもなく、あっと言う間に準備が完了してしまった。ただし、2.5インチHDDを取り付ける場合、トレー背面からネジで固定しなければならないのは少々残念だ。いっそのことオプションアクセサリで2.5インチ専用トレーを用意した方が、ネジ不要を一貫できたのではないだろうか。蛇足だが、2.5インチHDD/SSD用ネジは付属している(図06~07)。

図6: 左右の固定パネルを外して、HDDを取り付けた状態。後は固定パネルを元に戻すだけだ

図7: HDDを取り付けたトレーをDS415playに装着。後はカバーを戻してからLANケーブルをつなぎ、電源を入れるだけだ

話を本筋に戻そう。今回送られてきた箱にはインストールディスクが含まれていたなかったため、メールで受け取ったDSMを使用しているが、さらに公式サイトのダウンロードセンターから「Synology Assistant」をダウンロードした。こちらはNASセットアップ時に欠かせない、LAN上からデバイスを検出するユーティリティーツールである。DS415playに割り当てられたIPアドレスの確認やネットワークドライブのマウント、WoL(Wake-on-LAN)の設定が可能だ(図08)。

図8: DS415playのセットアップを行うために必要な「Synology Assistant」

DS415playにWebブラウザーでアクセスすると、最初にDSMのインストールを求められる。あらかじめ用意したDS415play用DSMを指定することで、管理者アカウントのパスワード設定や、SHR(Synology Hybrid RAID)ボリュームの作成を求められた。あまり聞き慣れないキーワードだが、SHRとはSynologyのRAID自動管理システムである。そもそも複数のストレージで冗長性を実現するRAIDはコンシューマー向けとは言い難い。そのため同社は、RAIDに変わる選択肢としてSHRを導入した。ちなみにRAIDによる手動管理も選択できる(図09~10)。

図9: DS415playのセットアップ画面。ここでモデルに即したDSMのイメージファイルを指定する

図10: 管理者パスワードやコンピューター名の入力、SHRボリュームの作成を求められる

興味深いのは容量の異なるディスクを組み合わせた時の動作だ。通常のRAIDであれば最小容量のディスクを基にボリュームを作成するが、SHRの場合は最小容量のディスクサイズを分割単位とし、各ディスクを最大限まで使用可能にする仕組みを備えている。なお、公式サイトではRAID計算機という、容量の異なるHDDを組み合わせた場合のSHR/RAID選択時の容量を視認できるWebページを用意。トレー部分にHDDをドラッグ&ドロップすると、使用可能な容量が確認できるので、導入前に試してみるといいだろう。

今回手元にあった1TB HDD×2本という構成では10分程度で初期化を含めたインストールが完了し、DS415playの再起動が自動的に行われた。これでようやくDSMへのサインイン可能となる。最初は管理者アカウントでサインインすると、今度はQuickConnectの設定を求められた。

こちらはルーターのポート転送設定を用いずに、DS fileやCloud Stationといったクライアントアプリケーションがインターネット経由で接続可能になる仕組みだと言う。ルーターのUPnPに関するログやNATテーブルを確認しても変化がないため、ダイナミックDNSを用いると思われる。ただし、ヘルプを確認したところ、外部からのDSMアクセスにはポート5000~5001などのポート転送設定が必要だ(図11~12)。

図11: 最初に管理者によるサインインを行う。ちなみにサインイン画面はカスタマイズが可能だ

図12: QuickConnectの設定を求められる。必要であればメールアドレスを用いて新規作成を行おう

一連の設定を終えると、ようやくDSMのデスクトップが現れる。ちなみにInternet Explorerでアクセスしたところ、Javaランタイムの実行を求められた。DSMはQNAPのファームウェア4.xやASUSTORのADMのように、WebブラウザーベースでGUIのUX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)を提供するスタイルだ。コントロールパネルからハードウェアスペックを確認すると、CPUはIntel Atom 1.6GHz、物理メモリーは1GB。2ベイ版のDS214playとハードウェアスペック面における大差はないようだ(図13~14)。

図13: これがDSMのデスクトップ画面。実行にはJavaランタイムが必要となる

図14: 「コントロールパネル」の「情報センター」から確認したハードウェアスペックDS214playの構成に似ている