機能はパッケージ単位で取捨選択が可能

最近のNASはファイル共有だけでなく、多機能性を求められることが多く、DS415playも「パッケージセンター」で数多くの機能を実現可能にしている。もっとも初期状態はパッケージ類が一切インストールされていないため、不便に感じるかもしれないが、自身が必要なパッケージだけを取捨選択し、NASに過度な負担をかけることを避けることにメリットがあることは、さまざまなNASを使ってきたユーザーなら理解できるはずだ。

執筆時点で同機能からインストールできるパッケージ数は60アイテム。推奨カテゴリに並ぶのは「~play」の名に恥じず、メディア系アプリケーションが多い。その多くがSynology製だが、ビジネスカテゴリに目を向けると、Wikipediaでお馴染みのMediaWikiやブログ運営ツールのWordPress、セキュリティカテゴリではAntivirus McAfeeなども並んでいる。また、Git ServerやPerl、PHP PEARといったソフトウェア開発者向けのパッケージも用意されているため、単なるファイル管理からコンテンツ再生、ソフトウェア開発といった幅広い分野で活用できそうだ(図32)。

図32: 「パッケージセンター」では、各種パッケージのインストールやアップデートといった管理が可能

LinuxをベースにしたNASの場合、コミュニティーによるアプリケーション開発も魅力の1つに数えられるが、SynologyはOnline Community Forumを用意し、自社製アプリケーションだけではなく、サードパーティー製アプリケーションの開発も支援している。NAS本体やSynology製アプリケーションと比べるとアクティブ度は落ちるものの、Webサーバーのログを視覚化する「Webalizer」や可逆圧縮の1つFLACに対応した「Logitech Media Server」など興味深いアプリケーションの話題で盛り上がっていた(図33~34)。

図33: DS415playにssh接続し、「uname」コマンドを実行。独自にパッチを当てたLinuxであることが確認できる

図34: コミュニティーフォーラムの「Third-party Packages」。非公式パッケージという扱いだが、「パッケージセンター」からダウンロード可能なものが多い

さて、メディア系NASを名乗る以上、スマートフォン/タブレットとの連動も重要な評価ポイントとなる。執筆時点でSynologyは、iOS/Android向けアプリケーション「DS video」など8種類をリリース中だ。

今回はホームビデオカメラで撮影したMTS形式や、地デジ放送を録画したMPEG2 TS形式、QuickTime形式とMP4形式ファイルをDS415playにコピーし、「ビデオステーション」を有効化。続いて無線LAN接続のiPhoneにDS videoをインストールして視聴してみた。QuickTimeおよびMP4形式以外の動画ファイルはプロセス内でffmpegが起動し、ストリーミング再生を行うためのトランスコード処理を行っているようだ(図35~37)。

図35: 動画ファイル再生中のプロセスを確認中。ffmpegによるトランスコード処理を行っている。ちなみにバージョンは2.0.2

図36: iPhone版「DS Video」でアクセスした状態。各動画のサムネイルが表示される

図37: 動画再生中のウィジェット。CPUリソースの消費が目立つ

ただ、下位モデルに相当するDS214playはハードウェアトランスコードエンジンを搭載しているため、DS415playも同等、もしくはそれ以上のハードウェアを搭載しているとして見るのが自然だろう。確かにCPUリソースは消費しているが、オプション設定に用意されたハードウェアアクセラレーション設定を変更して映像を視聴する限り、十分な性能を備えているようだ(図38~42)。

図38: 「ビデオステーション」のオプション設定には、ハードウェアアクセラレーション機能の有無を選択する項目が用意されている

図39: Webブラウザーによる動画再生時は、ステータスバーから再生画像の品質を変更できる(iPhoneアプリの場合は事前設定が必要)

図40: ホームビデオカメラで撮影した動画を再生中(ハードウェアアクセラレーションあり)

図41: ハードウェアアクセラレーションなしの状態

図42: 元動画ファイルをWindows Media Playerで再生した状態

このようにDS415playはネットワークパフォーマンスもさることながら、多機能性を誇れるNASであることを確認できた。台湾製NASと言えばQNAPやASUSTORといった強豪がひしめいているが、エンドユーザーから見れば、新たな選択肢が増えたとことを素直に喜びたい。4ベイクラスの家庭用NASの選択でお悩み中の方は、他社製NASもさることながら、このDS415playを選択肢に含めて損はないだろう。

阿久津良和(Cactus)