米AMD本社 組み込み製品ディレクター Kamal Khouri氏

既報の通り、AMDは19日に組み込み向けプロセッサの新製品として第2世代「R」シリーズを発表した。これに合わせて、記者説明会を開催。米AMD本社から組み込み製品ディレクターのKamal Khouri(カマル・クーリ)氏が来日し、同社の組み込み市場に対する事業戦略や「R」シリーズの概要を説明した。

クーリ氏は「AMDは変革して、これまでと違う企業に生まれ変わろうとしている」と述べる。AMDでは従来のPC向けビジネスをコアとしつつも、同社が「アタックマーケット」と呼ぶ成長市場へ注力するという。

このアタックマーケットの中には、もちろん組み込み市場が含まれるほか、高密度サーバや半導体のセミカスタムなどの分野も挙げられている。将来的にはこれらの市場でAMDの売り上げの半分を担いたいとする。

これまでのPC中心のビジネスから軸足を移そうとしていることがうかがえる

続いてクーリ氏は調査会社VDC Researchの調査結果を紹介。これによると2017年までに組み込み機器やソフトウェアの市場規模は91億ドルまで成長し、そこには2億3,000万台の機器が存在すると予測している。AMDではこの成長市場に注力し、製品を投入していく。

VDC Researchの調査結果。成長市場である組み込み分野に投資をしていく

ただ、クーリ氏は「多数の領域があり、それぞれの領域で要件が異なる複雑な組み込み市場で勝つのは簡単ではない」という。そこで「ゲーム機」「デジタルサイネージ」「医療機器(の画像関連)」「産業機器の制御と自動化」「シンクライアント」「通信インフラ」の6分野に集中してビジネスを行う。

組み込み分やは非常に広範な範囲にわたるので、その中でもAMDの強みが生かせる6分野にフォーカスして取り組む

これらの分野ではAMDが得意とするグラフィックスのテクノロジーを生かせるうえに、すでにある程度の市場規模が存在し、さらに2017年まで2桁の成長が見込めるとしているのがその背景だ。

「ゲーム機」「デジタルサイネージ」「医療機器(の画像関連)」「産業機器の制御と自動化」「シンクライアント」「通信インフラ」がその6分野

ゲーム市場では、すでにPlayStation 4やXbox OneでAMDのAPUが搭載されているが、このほかにもカジノの機器やアーケードゲーム機、セットトップボックスといった機器もターゲットとなる。「日本市場ではパチンコやパチスロが重要」とクーリ氏は述べる。

アジア圏での成長が著しいというデジタルサイネージ分野では、カメラで撮影した人物の性別に加え、表情から判断したそのときの気分に合わせて最適なコンテンツを表示するといったインタラクティブなものも登場しているという。単にコンテンツを映すよりだけの場合よりも、高い処理能力を求められる方向に進んでいる。

医療機器分野では、組み込み機器の中でもより高い精度や信頼性が求められる。また、クーリ氏によると機器の小型化という流れもあるという。例えばMRIのような巨大な装置を小型化して病室に持ち込めるようにするといったもので、それにはパフォーマンスだけでなく、低消費電力であることも重要だ。

こうした分野に対して、2013年9月に発表されたロードマップでは、組み込み向けGPU「Radeon E8860」(開発コード名:Adelaar)を皮切りに、今回発表された第2世代「R」シリーズ(開発コード名:Bald Eagle)、ARMコア採用のSoC「Hierofalcon」(開発コード名)、低消費電力の「Steppe Eagle」(開発コード名)といった製品群を2014年に投入するとしている。

2013年9月に発表されたロードマップ

組み込み向けGPU「Radeon E8860」(開発コード名:Adelaar)

第2世代「R」シリーズ(開発コード名:Bald Eagle)

また、クーリ氏によると製品の供給だけでなく、複雑な組み込み市場に対応するためにセールスやサポート部門の強化、パートナーとの協業、LinuxやリアルタイムOS(RTOS)といったソフトウェア関連でも積極的に投資していくとした。