「デジタルがドライブするアナログ」がデザインを変える!
ここで、EQB-500のスマートフォン連携に関して少々捕捉しておきたい。アプリ連携でメール着信通知や着信音停止、音楽再生コントロールなどユニークな付加価値を提供したBluetooth対応G-SHOCK(GBシリーズ)と異なり、今回はワールドタイムの詳細かつ容易な設定をアプリで行うことを主眼としている。
例えば、ソーラー電波メタルウオッチのOCEANUS Mantaを初めとする、現行のカシオハイエンドアナログ電波時計は、29都市のタイムゾーンに対応。それぞれのサマータイム情報を時計に内蔵している。
都市名はダイヤル外周の都市コードリングに書かれているが、当然ながら都市名は略記となり、文字も小さくならざるを得ない。これは、視力の低い人や高齢者には使いやすいとは言えず、それはカシオの時計に限ったことではない。そう、これが従来のアナログ時計が持つひとつの価値観、より分かりやすく書くなら「制約」なのだ。
増田氏「EQB-500はアプリの都市リスト、あるいは地図から都市を選ぶだけで、時計の針がスルスルと動いて現在時刻を表示します。対応都市も300都市と格段に増えたので、自分の現在地がどの都市のタイムゾーンに属するかを考える必要もほぼありません。
これによって、見にくい都市コードリングをなくすことができたのです。これも、デジタルがドライブするアナログ時計のデザインであり、カシオならではの新しいアナログ時計の価値観です。
グローバル化の加速に伴い、海外出張しながら日本とメールやチャットでメッセージをやり取りするといったビジネスシーンが、これからどんどん増えてくるでしょう。そんな中で、カシオはデジタル技術で信頼性の高い機能を実現し、それをアナログのデザインに落とし込んでいく。『しっかりした機能があるからこそ、本当のデザインなんです』というメッセージを、広く発信していきたいと思います。」
今回のコンセプトモデル2機種は、ともに駆動部分の多いアナログ時計、しかも多機能なマルチミッションドライブやスマートアクセスを搭載しながら、GPSアンテナやBluetoothユニットなどを詰め込み、かつ許容範囲内のケース径に抑えている。
これは以前にもご紹介したOCEANUS「OCW-S3000 Manta」の画期的な超小型モーターと新開発のソーラーセルがあればこそ実現できたサイズだ。これもカシオならではの「デジタルがドライブするアナログ時計だからこそできたデザイン」のひとつだろう。
インタビューの最中、筆者はこの言葉を当初、読んで字のごとく「コアテクノロジーとしてデジタルテクノロジーが入っているアナログ時計」として聞いていたが、話が進むにつれて、カシオのデジタル技術がアナログ時計の文化をドライブ(推進)していくという意味でもあると感じ始めた。
以前は朧気だったビジョンが、ここへ来てより明確な言葉をもって表現できるようになってきたと増田氏は語る。今回のコンセプトモデルの製品化はもちろん、カシオが次に見せてくれるアナログ時計の姿がまた楽しみになった。