いいものを作るのに「IGZO液晶は不可欠」

そして、シャープならではの特徴といえるのが、やはりIGZO液晶の搭載だろう。

2,560×1,600ドットのWQXGAによる解像度と、16:10のアスペクト比を持つ10.1型IGZO液晶ディスプレイの採用は、「10型のサイズでありながら、新聞の電子版、電子チラシなども詳細にみられる。新聞の株価欄や地図も、拡大/縮小しながら、細かい文字なども確認できる。しかも、LTEとBay Trailとの組み合わせで、地図の表示も速い。IGZO画面による鮮明な表示は、作った自分で驚いているほど」と笛田チーフは笑う。

「久しぶりに製品化したWindowsデバイス。とにかくいいものを作りたい。その実現には、低消費電力であり、高解像度のIGZO液晶ディスプレイは不可欠だった。そして、これはIGZO液晶の魅力を伝えることもできる製品になる」とする。

2,560×1,600ドットのWQXGA解像度を持つIGZO液晶を搭載。例えば電子新聞の細かい文字でも、くっきり表示される。タッチ操作による拡大も可能

JEITA基準で15.5時間のバッテリ駆動時間を実現したのは、ビジネスマンが一日外出して使うために必要なスペックを想定したものであり、実利用シーンでも一日利用を前提としている。

「これもBay TrailとIGZO液晶の組み合わせによって完成したもの。高解像度液晶は、どうしても多くの電力を消費する。だが、低消費電力のIGZO液晶だからこそ、これだけのバッテリ駆動時間を実現した」という。Bay Trailの採用とデバイスへの最適化に関しては、米Intelとの協業成果も大きく貢献しているという。

また、10.1型という画面サイズは、600gを切るという重量を実現しながら、法人が利用するのに適した画面サイズを追求した結果のもの。その点では、600gを切ることが難しくなる11型以上の液晶を採用することは、当初から検討材料の中には入ってはいなかったという。だがその一方で、今後はラインナップの拡大に向けて、異なる画面サイズの検討を進めていく可能性も示唆する。

同社のカタログでは、ビジネスマンによる持ち歩きを想定したイメージカットが紹介されている

スマートフォン開発チームとの連携

Mebius Padではいくつかのソフトウェア機能も特徴だ。そのひとつが、独自ユーザーインタフェースである「QuickAgent」の搭載である。

QuickAgentは、本体側面の「QUICK」ボタンを押すと起動。現在の状況を自動的に判断し、おすすめ設定をリスト化して表示し、Mebius Padを使いやすい状態にカスタマイズできる。異なる通信環境の設定切り替えもワンタッチでできる。また、ATOKによるフリック入力を可能にしたり、設定すれば各種ショートカット操作をワンタッチで行えるようにしている。

QuickAgentの起動ボタンをハードウェア的に用意したのも、同社がMebius Padの製品化において、QuickAgentを重視していることの証だろう。

QuickAgentの起動ボタンは、ハードウェアボタンとして本体右側に装備されている

「QuickAgentには、スマートフォンメーカーである特徴を生かしたいということ、そして、使いやすいものであればどんどん採用したいという狙いがあった。仕事のシーンで使いやすいものとして、QuickAgentの採用は早い段階から決定していた」と、その採用理由を語る。そして、「タブレットの利用方法に関しては、依然として試行錯誤が行われているなかで、シャープならではの提案のひとつにQuickAgentが位置づけられる。日本のメーカーならではの痒いところに手が届く機能のひとつ」と語る。

現在Mebius Padの開発チームは、スマートフォンの開発チームと同じ東広島に拠点を置いている。QuickAgentは、その連携によって実現した機能だともいえよう。

QuickAgentの表示。スマートフォンメーカーという特徴を生かし、ワンタッチでおすすめ設定やショートカットを使用できるQuickAgentの搭載は、早い段階から決まっていたという

さらに、Mebius Padはクラウド型Web会議サービス「TeleOffice」にも対応している。外出先から会議に参加できリアルタイムでの情報共有が可能で、しかも会議資料は電子データのまま、ペーパーレス会議を実現することもできる。

実際、TeleOfficeはすでにシャープ社内および販売店でも活用されている。例えば太陽光発電パネルの施工現場において、どのようなパネルの搭載が最適か現地で検討する調査は、専門家ばかりが行っているわけではない。

そこで屋根の様子を写真撮影し、TeleOfficeを通じて遠隔地にいる施工の専門家とデータを共有。その場で専門家の見解を取り入れた、最適な提案を行うといった活用が行われている。Mebius Padと連動すれば、そうした活用がさらに加速することになりそうだ。