岡山大学は2月13日、高温高圧で氷が融ける新しいメカニズムを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院自然科学研究科大学院生(博士後期課程)の樋本和大氏、同研究科理論化学研究室の松本正和准教授、田中秀樹教授らによるもの。詳細は、英国王立化学協会の国際科学雑誌「Physical Chemistry Chemical Physics」オンライン版に掲載された。

水は身近な物質だが、4℃で密度が最大になる、固体のほうが液体よりも密度が低いために氷が水に浮く、といった変わった性質をたくさん持つ物質として知られている。一方、臨界現象では一般に、熱容量が非常に大きくなったり、音速がゼロになるなど、物性にさまざまな異常が現れることが知られているが、そうした臨界現象は気液臨界点以外では観察されないと、これまでは考えられてきた。中でも3万気圧以上の高圧で生じる氷「氷VII」は、融点がいまだに確定しておらず、その融解のしかたについても不明となっていた。

研究グループはこれまでの研究として、コンピューターシミュレーションによって、氷VIIが融ける際に「プラスチック氷」と呼ばれる中間状態を経ることを明らかにしていたが、今回、さらに詳細なシミュレーションを行った結果、氷VIIからプラスチック氷への相転移において臨界現象と呼ばれる異常性が現れることが見いだされたという。

なお今回の発見について研究グループでは、水の持つ、また別の変わった一面を示すもので、氷VIIの融点を確定するヒントを与えるとともに、氷VIIの融点付近で新たに異常な性質がいくつも見つかる可能性を示しており、惑星や衛星の地質や気象を、より正確に理解し予測するのに役立つことが期待されるとコメントしている。

氷VIIの概要