意外とパワフルだった「Bay Trail-M」

VAIO Fit 11Aでは、CPUに「Bay Trail-M」ことIntel Celeron N2920(1.86GHz) を採用している点も、大きな特徴のひとつだ。

モバイル機向けの性能としては、より消費電力の低い「Bay Trail-T」ことAtom系SoCのほうが優れているが、クアッドコアでPCと同じインタフェースを利用できるCeleron/Pentium系チップのほうが、PCとしての使い勝手や生産性に優れている。

メモリ容量は4GBでストレージには128GBのSSDを採用。グラフィックスはCPU内蔵のIntel HD Graphicsを利用する。通信機能はIEEE802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth4.0+HS、NFCの構成だ。

店頭販売向けの標準仕様モデルではスペックが固定されているが、VAIOオーナーメイドモデルなら、CPUにより高性能なIntel Pentium N3520(2.166GHz)を選択したり、メモリやストレージの容量を増やすなど構成パーツを自由にカスタマイズできる。高いマシンパワーを求める人におすすめしたい。

それでは、VAIO Fit 11Aのベンチマーク結果について紹介していこう。比較用にVAIO Fit 13Aの2014年春モデル(SVF13N19GJS)の結果も掲載している。なおテストに利用した試用機は発売前の試作機であるため、実際の製品版と結果が異なる可能性があることをご留意頂きたい。

VAIO Fit 13A(SVF13N19GJS)試用機の主なスペック
CPU Intel Core i5-4200U(1.60GHz)
メモリ 4GB
ストレージ 128GB SATA SSD
グラフィックス Intel HD Graphics 4400(CPU内蔵)
OS Windows 8.1 64bit


Windowsエクスペリエンスインデックスの結果は、下表の通り。

VAIO Fit 11AとVAIO Fit 13AのWindowsエクスペリエンスインデックス(評価ツール「winsat.exe」を利用)
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
プロセッサ 5.8 7.2
メモリ 5.9 5.9
グラフィックス 4.4 5.6
ゲーム用グラフィックス 4.3 5.4
プライマリハードディスク 7.6 8.0

CPUとCPU内蔵のGPU周りにCeleron N2920とCore i5-4200Uの性能の違いが出ているが、その他の仕様についてはスペックが同等なので大きな差は出ていない。ネット閲覧や文書作成など日常的な利用なら、使っていてもほとんど差を感じないだろう。

より詳細な性能を計測する「PCMark 8」と「PCMark 7」、「PCMark Vantage」のベンチマークではFit 13Aのほうが高いスコアが出ている。テストによってはダブルスコアに近い値も出ているが、CPU性能の違いを考えればやむを得ないだろう。むしろ、VAIO Fit 11Aはそこそこ健闘しているともいえる。

VAIO Fit 11AのPCMark 8ベンチマーク結果

■PCMark 8
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
Home accelerated 3.0 score 1244 2119
Web Browsing - JunglePin 0.580s 0.346s
Web Browsing - Amazonia 0.204s 0.145s
Writing 10.15s 5.69s
Photo Editing v2 1.850s 0.823s
Video Chat v2/Video Chat playback 1 v2 30.0fps 24.2fps
Video Chat v2/Video Chat encoding v2 262.0ms 168.7ms
Casual Gaming 8.1fps 18.8fps
Benchmark duration 58min 33s 41min 50s


VAIO Fit 11AのPCMark 7ベンチマーク結果

■PCMark 7
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
PCMark score 2831 4261
Lightweight score 1732 2852
Productivity score 1118 2210
Creativity score 4143 6087
Entertainment score 1983 3107
Computation score 5194 7556
System storage score 4856 5059
Raw system storage score 3506 4670


VAIO Fit 11AのPCMark Vantageベンチマーク結果

■PCMark Vantage
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
PCMark Score 6392 12656
Memories Score 4072 7323
TV and Movies Score Failed Failed
Gaming Score 5628 10005
Music Score 7649 13860
Communications Score 5265 15546
Productivity Score 7692 16208
HDD Score     30028 47143


ゲームプレイ時における3D描画性能を計測する「3DMark」と「3DMark Vantage」では、VAIO Fit 11Aのスコアの低さが目立つ。GPUとして非力なIntel HD Graphicsが使われているため、Intel HD Graphics 4400を利用するFit 13Aに大きな差が付く結果となった。ただし3Dゲームをプレイするのでなければ、あまり気にする必要はない。

VAIO Fit 11Aの3DMarkベンチマーク結果

■3DMark
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
Ice Storm 17625 32953
Cloud Gate 1432 3716
Fitre Strike N/A 511

VAIO Fit 11Aの3DMark Vantageベンチマーク結果

■3DMark Vantage
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
3DMark Score 780 3690
GPU Core 813 3143
CPU Score 4289 7732

実際の3Dゲーム系ベンチマークとして「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」でテストしてみたところ、1280×720ドットの標準品質でVAIO Fit 13Aが「3149」の「やや快適」であったのに対し、VAIO Fit 11Aでは「1288」の「設定変更が必要」という結果だった。1,920×1,080ドットの最高品質では、どちらも「動作困難」となっている。VAIO Fit 13Aなら設定変更によって問題なくプレイできそうなものの、Fit 11Aではかなり厳しいと言える。

Fit 11AのファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編ベンチマーク結果

■ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
VAIO Fit 11A VAIO Fit 13A
1280×1080ドット、標準品質(ノート) 1288/設定変更が必要 3149/やや快適
1920×1080ドット、最高品質 240/動作困難 693/動作困難

3Dゲームにはパワー不足であるものの、2D描画を主体としたブラウザーゲーム程度なら問題ないようだ。「艦隊これくしょん」をプレイしてみたところ、やや反応が遅くなる場面もあったが、全体的にはストレスなく遊べた。ただしタスクマネージャを確認するとCPUやメモリの使用率が40%あたりで推移するため、ほかの作業を行ないながらプレイするのには厳しいかもしれない。

艦隊これくしょんプレイ時のCPU使用率

バッテリ駆動時間の検証には、「BBench」を使用している。Windows 8.1の電源プランを「省電力」に、画面の明るさを40%に設定した状態で、「BBench」から無線LAN経由で60秒ごとのWebアクセスと10秒ごとのキー入力を有効に設定。テストの結果、VAIO Fit 11Aは4時間42分となった。

カタログ上の公称値ではVAIO Fit 11Aは約8時間なので、少々短いと言わざるをえないだろう。だが画面の明るさを落としたり、ネットに接続していない時は無線LANをオフにすれば駆動時間はもっと伸びるはずだ。

総合的に見ると、標準的なUltrabookに比べてFit 11Aはややパワーの面で劣る結果となった。だが「Bay Trail-M」を搭載したFit 11Aは意外にもパワフルで、日常的に使うPCとしてはまったく問題ないと感じた。各種ベンチマークもほぼ完走しており、PCとしてこれほどまで「使える」性能を持っていることが驚きだ。