プライバシーやセキュリティ、利便性を両立する「カギ」化

スマートフォンがデジタルライフの「ハブ」のようなポジションを獲得する際に、どんな情報がインターネットの向こうのクラウドに流れ、どんな情報が端末で処理され作り出されるか、という問題をより透明化する必要がある。その過程で、すべてをインターネットと組み合わせて使う前提を崩す必要があると考えている。

例えば、スマートフォンの中により機密性の高い情報を保管し、インターネットを介さずに手元あるいは目の届く範囲の無線を活用してのみ利用するような方法が求められるのではないか、ということだ。

iPhone 5sに搭載されたAppleの指紋認証「Touch ID」は現在、端末のロック解除とiTunesパスワード入力の代替にしか使われていないが、Appleによると、指紋の情報はAppleのクラウドサービスiCloudではなく、端末のA7プロセッサの領域に保存され、端末外に持ち出せないとのことだ。その他のサービスとの組み合わせ次第ではあるが、このようなスマートフォン内に閉じた情報管理の方法をより広範に考える必要があるだろう。 

Touch ID搭載でiPhone 5sでは端末のロック解除とiTunesパスワードの入力が簡単に

これがスマートフォンの「カギ」化の示すところだ。

これまでスマートフォンは、OSの進化と並んで、そのOS向けに開発者が作るアプリの2種類のソフトウエアで進化してきた。しかしスマートフォンのカギ化では、むやみに同じカギで開くドアを作らせたり、合いカギを作らせることは難しい。

まずは端末メーカー、携帯電話会社、決済などのサービスが垂直的に統合されている企業から信頼性を高めるサービス作りに取り組むことができ、携帯電話会社というピースは抜けているがAppleが取り組み始められる点も頷ける。

その携帯電話会社も、「SIMカード」というカギを有効活用することができる。例えばドコモ・KDDI・ソフトバンクなどの日本の携帯電話会社は、自社で展開する公衆無線LANサービスの認証を省いてすぐに接続できるSIM認証の仕組みを導入している。今後SIM認証が広がると、同じiPhoneでもどの携帯電話会社のSIMで使うかによって、ネットワークの広さ屋スピード以外の競争領域が生まれる可能性がある。

その際に、より安心して生活密着のサービスが使えるセキュリティやプライバシー機能を、いかに充実させるか、注目すべきだろう。

(記事提供: AndroWire編集部)