そのほか、APIや機能拡張が順次行われており、音楽ライブラリへのボイスコマンドによるアクセス機能の追加、ゴルフをサンプルにした開発キットの提供、ウィンク撮影とロック機能追加など、少しずつできることの幅が広がりつつある。また現在ではAndroidの特定バージョンとの連携専用となっているが、将来的にはiOSアプリも提供してiPhone連携が可能になったり、「Pay-Per-Gaze」というARと広告商品を組み合わせた仕組みでの収益化も検討しているなど、製品版が発売されて以降の展開が楽しみではある。
もともと正式アナウンスから製品発売まで2年近いリードタイムをとっているのも、開発期間が単純に長引いているというだけでなく、新しいデバイスをどのように使っていくのか開発者らとともに模索している結果なのだろう。またHUDとしては、ReconのSnow2などもスポーツ用途特化型デバイスとして面白い。
2014年の注目はやっぱり"あの"会社か
スマートウォッチも比較的新しいジャンルではあるが、構想自体はけっこう前からあり、時計メーカーを始め多くのメーカーが取り組んでいる。比較的新しいといえるのは、同分野にIT業界のビッグネームが参入を始めていること、そして「スマートフォンとの連携」を主軸に製品開発を行っていることにある。その意味での先駆けとなるのがソニーのスマートウォッチだ。同社は今年6月に上海で開催された展示会で「Xperia Z Ultra」とともに「SmartWatch 2」を発表し、10月より販売を開始している。「2」という名称がつくことからもわかるように第2世代目の製品であり、最新バージョンでは前モデルにはなかったNFC対応と防水機能追加が挙げられる。NFC対応は、ソニーの「(NFCによる)ワンタッチで機器を一発連携」という戦略の延長線上にあるもので、より活躍の場を広げる意味合いがある。
そして今年9月にIFAで発表されたSamsung Electronicsの「Galaxy Gear」だ。日本でもNTTドコモのほか、KDDIなど、複数の販路での販売が行われている。同社が腕時計型デバイスを開発している話は以前から噂されており、Appleの市場参入の噂と合わせ、前述のようにスマートフォンに続く次なるトレンドとして注目を集めていた。
ただ、興味深いのは各社各様のスマートウォッチに対する考え方の違いだ。例えばソニーの場合、スマートフォンとの連携なしでもSmartWatch 2は利用できる単体のデバイスとして考えられている。だがSamsungのGalaxy Gearは事実上Galaxy S4やNote 3など同社最新スマートフォンとの連携が前提になっており、あくまで「同社スマートフォン製品のアクセサリとして魅力を高めるもの」という扱いだ。実際、ユーザーインターフェイスや組み込みカメラなど、ギミックの数々はスマートフォンとの連携で「機能拡張」の意味合いが強く、「あくまで中心にあるのはスマートフォン」という設計思想が見て取れる。
Appleはまだ製品が出ておらず、実際に発売するかも不明なため推測でしかないが、スマートフォン製品を市場に送り出しているメーカーのスマートウォッチ、あるいはウェアラブルデバイスの製品は「スマートフォンやタブレットとの連携」を前提にしていることが多い。ウェアラブルデバイスそのものの魅力を前面に押し出すというよりは、「いかにもっとスマートフォンを活用してもらい、(自社の)スマートフォンの魅力を出すか」に帰結している。