NECパーソナルコンピュータが、2013年秋冬モデルとして用意した「VALUESTAR N VN970/NS」は、フォトフレーム型パソコンとして、新たな進化を図った製品である。

Windows 8.1の搭載と、Haswellの採用によって、PCとしての機能を大きく向上させる一方で、垂直立ち画面チルトとスイベル(左右首ふり)機構を備えた23型ワイド液晶ディスプレイを搭載することで、テレビ視聴時の快適性などを高めているのが特徴だ。

実は、この新しいVALUESTAR Nは、「進化」と「融合」をコンセプトにおいたという。NECパーソナルコンピュータ コンシューマPC商品企画本部プラットフォーム企画部・石井宏幸主任に、VN970/NSの製品コンセプトなどについて聞いた。

NECパーソナルコンピュータ コンシューマPC商品企画本部プラットフォーム企画部・石井宏幸主任

フォトフレーム型でもテレビと同じ"垂直立ち"を獲得

NECパーソナルコンピュータが、VALUESTAR Nの第1号機を発売したのは、2007年である。それ以来、「マイルームに最適なフォトフレーム型パソコン」というジャンルを確立。この分野のリーディングプロダクトとして進化を遂げてきた。

2013年秋冬モデルにおいても、その進化は続いているが、これまで以上に「テレビ視聴」という観点で進化を遂げている点が見逃せないだろう。

NECパーソナルコンピュータ コンシューマPC商品企画本部プラットフォーム企画部・石井宏幸主任は、「テレビの多チャンネル化により魅力的な番組が増え、視聴や録画にも新たな提案が求められている。これまでVALUESTAR Nが提案してきたフォトフレーム型パソコンをどう進化させるのか。その方向性を具体化した製品がVN970/NSとなる」と位置づける。

VALUESTAR N VN970/NS

CPUには、Core i7-4700MQ(2.40GHz、ビデオ機能内蔵)を搭載。最新のWindows 8.1を搭載するといったPCとしての進化はもちろん、1,920×1,080ドットのフルHD対応23型ワイドのIPS液晶ディスプレイを搭載、4TBのハードディスクの採用によって、様々なコンテンツを保存することができるようにしている。

従来製品から高い評価を得ているNEC独自のワイヤレスの「ぱっとマウス」や、タッチパッドリモコンも継承し、フォトフレーム型パソコンならではの使い勝手はそのまま継承している。「フォトフレーム型パソコンとしての正当進化」と石井主任が語るのも、うなづける。

こうしたPCとしての基本性能を強化する一方で、今回のVN970/NSで取り組んだのが「生活を変えるテレビスタイルの提案」だ。

VN970/NSでは新たなフォトフレームデザインを採用し、テレビ視聴時に垂直立ちが可能な画面チルトを機構と採用しているのが特徴だ。

フォトフレーム型ながら、接地面から0度となる垂直立ちを獲得

垂直方向に0度から15度までの角度調整が可能であり、とくにテレビを視聴する際には、一般的なテレビと同じく0度の角度にディスプレイを固定できるようにした。

「テレビ視聴を前面に打ち出している製品だけに、以前から0度にしてほしいという声は多くいただいていた。だが、フォトフレームPCとしての利用環境では0度は適してはいない。チルトさせることができる構造が必要だった」と石井主任は語る。

垂直立ち画面構造の採用とともに、左右に首ふりが可能なスイベル機構も採用。横方向にも角度を変えることができるようにし、画面を見やすい位置に変えることができる柔軟性を実現した。

「利用の前提となるのはパーソナルユースだが、23型ワイド液晶画面を採用したことで複数の人で同時に見るという使い方も出てくるだろう。視野角が広いIPS液晶の採用とともに、スイベル機構の採用によって、こうした使い方にも対応できる」とする。

4チャンネル表示は「最もバランスがいい」

さらに、VN970/NSでは、3波チューナーを5つ搭載し、4番組同時録画を可能にしている点も、他社製PCにはない特徴だ。

4つのチャンネルを一度に観られるマルチスクリーンモードを用意。同じ画面サイズに四分割して表示する四分割モードと、ひとつのチャンネルを大きな画面に映し出し、残りの3つを小さな画面に表示する「主/副モード」の2種類のモードで、一度に複数の画面を観ることができる。

マルチスクリーンモード(※ディスプレイ画面はボカシ加工をしています)

主/副モード(※ディスプレイ画面はボカシ加工をしています)

ここで表示されるチャンネルは、ユーザーが指定しておいたチャンネルを表示する「指定チャンネル」、ユーザーの視聴履歴順で表示する「いつも見るチャンネル」、つぶやきメーターの上位を表示する「盛り上がりチャンネル」から選ぶことができる。

「4チャンネル同時録画や同時表示によって、地方都市では、すべてのチャンネルを同時視聴できる環境が整う。首都圏でも4チャンネル表示によって、ザッピングを不要にすることができる。こうした用途を踏まえて、現在、最もバランスがいいと考えたのが、4チャンネル録画の構成。録画機能においては、ユーザーの好みに絞り込まれているため、全チャンネルを録画するのではなく、必要と思われるものが録画されるといったことが可能であり、また、キーワードをもとにして、思いがけない番組を発見するといった楽しみもある」とする。

4TBという大容量ハードディスクも、多くの番組録画をサポートすることとなる。

3波5チューナーを搭載するが、必要なB-CASカードは1枚のみ

そのほか、電源を入れてから2秒でのテレビ視聴が可能である「ぱっと観テレビ」も強化。曜日や時間ごとのユーザーの視聴パターンを学習し、いつも観ているチャンネルで起動する「おはようマイチャンネル」機能を新たに採用した。

また、録画に関しても、事前に指定した番組ジャンルや、タレント名などを登録するだけで、ユーザーが好みそうな番組を自動で録画してくれる「おまかせタフ録り」、録画した多くの番組のなかから、特定のキーワードに合致する番組だけを表示する「おてがる録画検索」なども用意している。

なお、おはようマイチャンネル機能は、名称から想定されるような朝だけに限定して利用できる機能ではなく、終日利用できる機能となっている。

これらの機能は、NEC独自のTV視聴ソフトウェア「Smart Vision」によって実現されることになる。

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