SSCIなどその他の話題

IDFでの主な話題は以上であるが、他にも新仕様としてSSCI(SuperSpeed USB Inter-Chip)(Photo30)がアナウンスされているので、ついでにこれも紹介しておきたい。

Photo30:後述するが、この部分はPCIe on M-PHYでも良い訳で、あとはアプリケーションの要件によってSSICを使うか、PCIe on M-PHYを使うかを決める事になる

これは携帯電話を初めとするモバイル機器向けの規格である。理屈としては、以前こちらで紹介したPCIe on M-PHYと非常に似ている。

例えば既存の携帯電話の中で、BroadcomあたりのWi-Fi/Bluetooth/GPS/FM RADIOなどの Combo Chipを搭載しているケースでは、Application ProcessorとCombo Chipはまず間違いなくUSB 2.0で接続されている。

ただご存じの通りUSB 2.0はピークで480Mbpsと言いながら実際はオーバーヘッドがあって実効400Mbps以下だし、さらに送受信は同時にできない。これは特に、IEEE802.11acの様な高速なWi-Fiを使う場合にはボトルネックになりやすい。かといって、USB 3.0にするかといえば、こちらは性能が高すぎて無駄が多い上に消費電力も(PCIe Gen2そのままのPHYだから)多い。

このあたりは、電池容量にゆとりがあるノートPCとかTabletと、ゆとりが無い携帯電話では当然事情が異なってくるが、そんなわけで「もう少し速度は遅くてよいから低消費電力な規格が欲しい」ということになる。

この方式は、あくまで携帯の「基板上の」チップ同士をつなぐもので、外部接続は考えていないから、チップ同士が速度のすりあわせができてさえいれば、速度がどんなであっても割と困らない。

実はこうした接続向けに、2007年にはHSIC(High-Speed Inter-Chip) USBなる規格がリリースされている。これはUSB 2.0をベースとしたものだが、信号電圧は1.2VのLVCMOSレベルに落とされており、これで省電力化を実現したものだ。

先にUSB 2.0で接続と書いたが、実際にはこのHSICを使うケースが非常に多い。SSICはこのHSICのUSB 3.0版という位置づけになるが、HSICがUSB-IFによる単独仕様なのに対し、SSICはMIPI Allianceと共同作業を行っており、PHYとしてMIPI AllianceのM-PHYを使う形である(Photo31)。

Photo31:最高速度が5Gbps、というあたりもPCIe on M-PHYと一緒

ちなみにこのSSICが、PCIeのM-PHYの様に3種類のGearを選んで利用できる形になっているのか、どれか特定のGearに最適化されているのか、などは現状不明である。

またM-PHYのSpecificationの入手にはMIPI AllianceとのNDA契約が必要な関係か、SSICのSpecificationは現時点では公開されていない。このSSICをどう使うか、ということでMIPI Allianceが出しているUse Casesがこちら(Photo32)。

Photo32:赤い部分がSSICもしくはPCIe on M-PHY(図中ではM-PCIeと表記)を使うとする部分

Application ProcessorとModem、Companion Chip(先に例に出したBroadcomなどのCombo Chipがこれ)、さらには高速な外部ネットワーク向けに利用できる、としている。SSICを使うのか、それともPCIe on M-PHYを使うのか、というのはもはやそのデバイスがどちらのI/Fをもともと持っているかに掛かってくるわけで、PCIeならばPCIe on M-PHYを、USBならばSSICを使う事で幸せになれる、というシナリオである。

時期的に言えば、既にSynopsysなどはM-PHYとさらにその上で動作するSSCIやPCIe on M-PHYのIPを提供しており、あとはデバイス側の対応さえ済めばこれを組み込んだSoCを作るのはそれほど難しくない状態になっているから、早ければ来年あたりに登場する携帯電話などではこれを利用した製品が投入されるかもしれない。