NVIDIAは7月30日、都内で5回目の開催となる「GPU Technology Conference 2013」(GTC Japan 2013)を開催し、同社の最新GPUの動向やスーパーコンピュータへの適用動向、HPC分野への応用などについての説明などを行った。同カンファレンスでは、プレスブリーフィングとして、同社のオートモーティブディレクターであるDanny Shapiro氏が同社のオートモーティブ分野に向けた取り組みを語ったので、その模様をお届けしたい。

NVIDIA オートモーティブディレクターであるDanny Shapiro氏

ゲームへの適用から始まったGPUは現在、スマートフォンからスマートカーまで幅広い分野に適用されるようになってきたほか、コンピュータビジョンの普及によりテレビや映画などでも活用されるようになってきており、そうした分野でのノウハウがオートモーティブ分野にも適用されるようになってきたという。

特に車両設計向けの活用が進められているほか、フォトリアリスティックな映像表現が可能になったことで、マーケティングツールとしても活用されるようになってきた。適用デバイスもPC分野のGPUのみならず、モバイル向けのTegraの利用が進んできており、そうした自動車業界からのニーズに対応するためにTegraのほか、メモリやブートロムなどを搭載した「Visual Computing Module(VCM)」を提供し、同モジュール上で画像処理を行うことを可能としている。

NVIDIAのカーエレクトロニクス向けモジュール「VCM」

「VCMはさまざまなアプリケーションで活用できるように開発されたモジュールであり、Tegraの世代が変わっても容易に差し替えが可能であるため、アプリの再作成の手間や評価の手間などを省くことができる。すでにさかざまな自動車メーカーで採用されている」とし、例えばAudiの多くの自動車で採用されているとするほか、Tesla MotorsのMODEL Sでは17型タッチスクリーンとインパネ用途で2枚のVCMが用いられているという。

VCMの適用イメージ(左)と機能ブロックイメージ(右)

しかもTeslaの場合、開発を開始した当初はTegra2と採用したVCMであったが、開発途中でTegra3が登場したことで、そちらに移行しながら開発を継続し、最新世代のTegraを用いたシステムを搭載することに成功したという。

Tesla Motors MODEL Sの17型タッチパネルとインパネのイメージ

また、将来の自動車が、さらなるエレクトロニクス化ならびにネットワーク化の進展により、自動運転の実現などが期待できるようになるとしたほか、コンピュータビジョンの活用によるリアルタイムの動体検知による急な飛び出しに対する衝突防止やドライバの状態遷移の検知による居眠り防止などが実現できるようになることが見込まれており、すでにTegraを搭載したVCMに別のCUDA対応ディスクリートGPU、Wi-Fi、Bluetooth、64GB mSATA、タッチスクリーン式ディスプレイなどを組み合わせた1DINサイズの開発プラットフォーム「Jetson」の提供も開始しているという。このJetsonはiOSにも対応しており、Appleも参加する形で開発が進められたという。

1DINサイズのカーエレクトロニクス開発プラットフォーム「Jetson」

なお同氏は、NVIDIAのビジネスの中においてクラウドが大きな割合を占めるようになってきており、スパコンなどへの期待が高まってきているが、それは自動車分野も同じであり、流体力学を用いた空力デザインやそれによる燃費向上、濡れた路面に対するブレーキング試験シミュレーションなど、多岐にわたっており、TegraからTeslaまで、幅広いGPUコンピューティングにより自動車のエレクトロニクス化の手伝いを進めくことを強調していた。