3月5日から8日にかけて、東京ビッグサイトで開催されている「ライティング・フェア 2013」は、国内の照明器具関連の展示会のなかでも、最大規模のものの1つだ。11回目を迎えた今回のコンセプトは「Akari light the World」で、「日本発の灯りが世界を照らし続けていくように」という意図が込められている。また、1月に開催された「ライティングジャパン」が、これからの照明技術やデザインを中心としたものだったのに対して、「ライティング・フェア」は照明の"現在"を見ることができる展示会だ。

今回のライティング・フェアで筆者が感じたことの1つは、低価格なLED照明の普及を受けて、既存の大手照明メーカーが今後どこに重点を置いていくのかについて、各社の回答らしきものが見えてきたという点だ。

「必需品」から「必欲品」への価値転換を目指す - パナソニック

パナソニックブースでの家庭向け照明の出展は、同日、新製品発表会が行われた「パネルミナ」「シンクロ調色LED照明」を中心としている。それらと比べると、LEDシーリングライトなど、既存の照明を置き換えるための製品は、あまり目立たない展示となっている。

眩しさを抑えた「パネルミナ」のダウンライト

LEDの灯りは眩しい。明るさを求めれば求めるほど、その傾向は強くなる。明るいが、眩しくない、それを実現したのが「パネルミナ」だ。器具の中央にドーナツ状に配置されたLEDチップから発した光が、新開発の導光板と、カバーに使用されている拡散パネルによって広がり、中心部からエッジまで均一な明るさでカバー全体が光る"面発光"を実現している。

パネルを直視しても、特に眩しくない。そして、均一な光は器具の見え方に限った話ではない。従来のワンコア形LEDダウンライトを使用した部屋と比べると、パネルミナのダウンライトを使用した部屋では、器具から出る光の量は同じでも、空間内の明るさのムラが抑えられ、明暗差が少なく、目の疲れを起こしにくいという。

「パネルミナ」のペンダント

ペンダントの構造

また、導光版と拡散カバーという2つの導光技術を採用したことで、LEDを直下に配置した器具に比べて、大幅な薄型化を実現。天井や壁に溶け込むようなスタイルが可能となった。これにより、玄関や洗面所といった狭い場所でも、その狭さを感じさせない空間を演出することが可能だ。

パネルミナと同様にパナソニックブースで大々的に展示されているのが「シンクロ調色LED照明」だ。

ダイニングルームで食材を照らすとき、蛍光灯の光よりも電球の光のほうが美味しそうに見える。また、仕事や勉強など何らかの作業を行うための灯りは、寒色系で明るさを上げたもののほうが集中しやすいという。そのため、リビングルームのように多用途に使われる部屋では、調光に加えて調色機能を備えた照明が採用されるケースが増えてきている。

ただし、その空間に居る人にとって居心地の良い光の色は、明るさによって変わってくる。それが、オランダの物理学者A.A.Kruithoが発表した"クルイトフの快適領域"と呼ばれるゾーンだ。

クルイトフの快適領域

しかし、従来の調光と調色は、それぞれ独立した調整で行われており、必ずしも快適な光とはなっていなかった。その光の量と色を連動させ、快適なゾーン内に納めつつコントロールするのが、シンクロ調色LED照明だ。

シンクロ調色LED照明

パナソニックでは、この「パネルミナ」「シンクロ調色LED照明」の新製品発表会で、「『必需品』から『必欲品』へ」という言葉を使用している。省エネ性が高く長寿命な照明器具として、LED照明は大きな普及を見せている。特に、既存の光源からの置き換え用の製品は低価格化も進み、大きな市場を形成している。しかし、これは部屋を明るくするための「必需品」としての照明だ。同社が「必欲品」と呼ぶのは、単純に明るくするだけでなく、生活していく環境で、ユーザーに欲しいと思わせる新しい価値を提供する照明といったところだろうか。インテリアとの親和性だけでなく、ライフスタイルとの親和性も高めた照明だ。そして、その転換点が、今回展示されている「パネルミナ」「シンクロ調色LED照明」ということになるのだろう。

センサーとHEMSで自動コントロールする照明環境 - 東芝ライテック

東芝ライテックブースは一見すると、同社の最新商品をいっさいがっさい持ってきた感じの展示だ。しかしその中でも、メインステージでのデモを含めて重点的に展示されているのが、「撮像素子人感センサー」と「Smart Home Lighting」シリーズだ。

最近発表された製品を全て持ってきたような東芝ライテックブースの展示。左から「T」「T形6.7W「一般電球形12.4W」「LEDユニットフラット形1700シリーズ」

人感センサー付きの照明は、最近では珍しくはない。人感センサーの検知範囲に人が入ると照明が点灯し、検知しなくなると消灯するという動作で、普段明るくする必要のない廊下や階段などのスペースでよく利用されている。

しかし、一般的な人感センサーは、赤外線によって人の動きを検知するタイプだ。そのため、そこに人がいても、動きが少なければ検知することができない場合がある。例えば、オフィスの照明などに利用しようとすると、机の前で仕事をしていると突然照明が落ちることもある。

撮像素子人感センサー

東芝ライテックが3月4日に発表した撮像素子人感センサーは、一種のカメラだ。わずかな動きを検知すると、東芝が開発した画像認識技術を使用し、それが人間かどうかを判断して動作を行う。また、検知範囲が約7.2m四方と広く、さらに、検知対象にしたくないエリアをマスクすることも可能だ。

撮像素子人感センサーは、照明器具個別制御システム「T/Flecs」用のセンサーとして、オフィスなどでの利用が想定されているが、ブースのメインステージでは、これを将来的にホームITシステム「FEMINITY」と組み合わせて、一般家庭に持ち込んだ場合を想定したデモンストレーションが行われている。そこでは朝、起床するとカーテンが開き、人がいる場所にだけ、必要な明るさの照明が行われるといった自動化が行われている。

メインステージで行われているデモンストレーション

FEMINITYは、ECHONET Liteの規格に対応したホームITシステムだ。このFEMINITYに対応した照明器具が「Smart Home Lighting」シリーズで、シリーズの第1弾として、LEDシーリングライトとLEDダウンライトが、撮像素子人感センサーと同じ3月4日に発表されている。同システムでは、スマートフォンやタブレット、PC、同社の液晶テレビレグザなどから、照明や空調、インターフォンなどの一元コントロールが可能だ。

東芝ライテックは、パナソニックのように、明確にこの方向にシフトすると宣言しているわけではない。照明のありとあらゆる分野をカバーする全方向性は、今後も失われることはないだろう。だが、そのなかで、Smart Home Lightingシリーズを初めとするネットワークやセンサー技術を利用した照明のコントロールは、これから同社の照明が向かう方向の一つを示しているのではないだろうか。