ストレージを展示しているブースは多いのであるが、なかでも大きなブースを構えて目立ったのが、スパコンのストレージの標準になってしまったともいえるData Direct Networks(DDN)とSSDのストレージで伸びてきたFusion IOである。Fusion IOはSC12の展示場で最大面積のブースを構え、バンを持ち込んで人目を引いていた。

DDNの展示ブース

SC12の出展ブースの中で最大の面積を誇るFusion IOのブース

Mellanox

インタコネクト関係の展示も多いのであるが、スパコンのノード間接続と言えばInfiniBandである。競争相手のQLogicがIntelに買収されてしまい、少なくとも現状ではInfiniBand LSIでは競合相手が存在せず、Mellanoxの独壇場である。

Mellanoxの展示ブース

各種のFDR InfiniBandアダプタカードの展示

Intel

Intelは11月12日にSC12の会場近くのホテルで、Xeon Phiの説明会を開き、Datacenter & Connected SystemグループのGMで、Intel VPのDiane Bryant氏が説明を行った。

また、SC12の展示場では、IntelのブースのXeon Phiの説明や講演に多くの聴衆が集まっており、感心の高さがうかがえる。

記者会見でXeon Phiを発表するIntelのDiane Bryant VP

IntelブースでのXeon Phi関係の講演に集まった聴衆

NVIDIA

Top500の中の50システムがNVIDIAのGPUを使っており、計算アクセラレータとしてTeslaは圧倒的な強さを発揮している。今回のSCでは、多くのサーバメーカーのブースでTesla K20 GPUを展示していた。

NVIDIAブースの風景

SGIのブースに展示中のTesla K20 GPU

Micron Technology

メモリメーカーのMicronは、注目のHybrid Memory Cube(HMC)を展示していた。HMCは4枚のDRAMチップとコントローラのロジックチップをTSVで積層しているとのことであったが、見たところ厚みは普通のチップと大きくは変わらない感じであった。

展示された実験ボードではHMCにアルミの冷却フィンを付け、隣接して小型のファンが置かれていた。質問してみると、10W位は電気を喰っているとの回答であった。

Micronの展示ブース

DRAMチップ4枚とコントローラチップを3D実装したHMCとテストボード

テストボードのHMC近傍。アルミのフィンとファンがついている。

ARM/ Calxeda

ARMは、エネルギー効率の高いHPCと銘打って、ARMコアを使うNVIDIAのTegra 3とQuadro 1000M GPUを搭載するNVIDIAのCARMA開発キットのクラスタを展示していた。

ARMベースのサーバオンチップのメーカーであるCalxedaは、スパコン製品は持っていないのであるが、ARMの隣にブースを出して、同社のチップを使うBostonやPenguin Computing、HPのRedstoneサーバの展示を行っていた。

ARMの展示ブース。中央がCARMAボードのクラスタ

ARMの隣のCalxedaのブース

Calxedaチップを使うBostonのViridisサーバ

Calxedaチップを使うPenguin ComputingのUDX1サーバ

冷却関係メーカー

スパコンでは消費電力とそれにともなう発熱の冷却が大きな問題であり、CRAY、IBM、富士通、SGI、Bull、Eurotechなど主要サーバメーカーは水冷のシステムを展示していたが、それ以外にも、サーバメーカーに冷却技術を提供するメーカーの展示も見られた。

CoolItは、水冷のヘッドをヒートシンクに取り付けて発熱の大きいCPUなどを冷却するという方式の水冷で、展示パネルには、クロックを約50%上げ、チップ温度を20℃程度さげることができると書かれている。

Green Revolutionは、ミネラルオイルに機器をジャブ漬けして冷却する浸漬液冷を販売する会社である。東工大がTSUBAMEスパコンを油で揚げるTSUBAME KFCプロジェクトで同社のシステムの評価実験を行っている。

その他にも水冷バックドアを売るMontivairなどが、展示を行っていた。

CoolITの冷却システムの展示

CoolITの水冷を適用したシステム

Green Revolutionの展示ブース

Green Revolutionのミネラルオイルの浸漬液冷槽

水冷バックドアを売るMontivairのブース

Microsoft

Microsoftは例年、大きなブースを出すのであるが、今回は富士通、NEC並みの中規模ブースでの出展で、HPC PackやSQLサーバなどを展示していた。

Microsoftの展示ブースの様子

Amazon

Amazonは、今回初めての出展である。AmazonのHPCクラウドが自前のスパコンを持たない組織や計算機時間が取れない場合に活用され、市民権を得てきているので、時宜を得た出展であると思われる。

SC初出展となったAmazon Web Serviceのブース

AmazonのHPCクラウドを触って見られる端末を用意

米国政府機関の展示

政府の予算枠は1つの省庁で、1つのカンファレンス予算が$50万ドルというもので、DoEのように大研究所をたくさん抱える組織では、予算不足でブースの出展が取りやめになったが、スパコン関係のアクティビティがそれほど大きくなく、SCへの出展や出席者の数も多くないという組織では、 50万ドルの制約はそれほど厳しくない。例えば、NASAは政府直轄の組織であり、NASAだけで予算枠を超えなければ良いということになっていると思われる。NCSAやTACCなども大学の予算で、こちらは、そもそも、政府のリミットの枠に入るのかどうかも疑わしい。

ということで、LLNL、ORNL、LANLなどの巨大ブースを構える常連は、今回は姿を消したのであるが、政府系の研究機関の展示がすべてなくなってしまったとういう訳では無い。

Pleiadesスパコンを持つNASAやBlue Watersスパコンを持つNCSAは例年程度の面積のブースを構えていたが、展示はパネルが中心で、あまり機器を持ち込まない予算を抑えた展示という感じであった。

その中で、Top500で7位のStampedeを持つTACCは、Xeon Phiを搭載するDELLのC8220サーバを展示していた。

NASAのブース。配りものや機器の持ち込みでは緊縮の感じがあるが、出展は健在

Blue Watersを持つNCSAはTop500への登録も無く、ブースも少数のパネルだけの展示でさびしい感じであった

Top500で7位のStampedeを持つTACCのブース

TCCブースに展示されたStampedeの計算ノード

会場の端の方の小さなブースであるが、NSA(National Security Agency:国家安全保障局)がブースを出していた。米国の国防総省の諜報機関で、電子情報を使った諜報活動を行っていると言われるがその活動は機密のベールに包まれている。

衛星画像や傍受した通信の分析、暗号の解読などに巨大なスパコンを使っていると見られており、スパコンの利用スキルの高いエンジニアのリクルートが目的の出展であると思われる。

担当者が2人デスクに座っているだけのNSAのブース。リクルートが目的と思われる

ドイツHLRS

米国以外の国の研究機関の出展も数が多いのであるが、その中でも毎年注目を集めるのがドイツのHLRSである。ドイツの自動車業界の設計計算にも多く使われており、例年、車を展示場に持ち込む。前回は大型のトレーラトラックを持ち込み、車のまわりの空気の流れのシミュレーション結果の可視化の展示を行っていたが、今回はポルシェのハイブリッドスポーツカーを展示していた。

ポルシェのハイブリッドスポーツカーを持ち込んだ、HLRSのブース

日本の研究機関/大学の出展ブース

Top500で3位の京コンピュータを持つ理研AICSは、京の大きなサインを掲げ、京コンピュータでのシミュレーションの成果などを展示していた。

Top500で17位のTSUBAME2.0を持つ東工大のブースでは、GPUスパコンの先進ユーザの講演で聴衆を集めていた。

理研AICSのブース。ディスプレイはボールの周りの気流のシミュレーション

東工大のブースは、GPUの利用法などの講演で聴衆を集めていた

Top500で21位のOakleaf-FXを持つ東京大学は、東大の情報基盤センターのスパコン部門が持つOaklef-FX、Yayoi、HA8000という3つのスパコンシステムを総合したOakleaf/Kashiwa Allianceを形成しており、このアライアンスとして展示を行っていた。

なお、Oakleafは、東大の柏キャンパスに設置されていることから名付けられている。

Oaklef/Kashiwa Allianceの展示ブース

東京大学は別にブースを出しており、こちらは平木教授のところの研究成果の展示という感じで、コンピュータアーキテクチャの研究成果を展示していた。その中でちょっと異色なのはComputer Zooというアクティビティである。古い動かないコンピュータを集めて展示する博物館ではなく、生きている(動作する)状態でコンピュータを集めるのでZoo(動物園)と呼んでいる。右から2枚目のポスターは、これらのコンピュータでDhrystoneを測定した結果をプロットしたものである。

東大ブース。一番奥に座っているのが平木教授

右側の2枚はComputer Zooのポスター

Top500で33位のHIMAWARIと36位のSAKURAを持つ高エネルギー加速器研究機構(KEK)と37位の富士通のXeonクラスタを持つ九州大学のブース。

KEKブースの様子

九州大学ブースの様子

Top500で41位のHA-PACSを持つ筑波大は、アクセラレータであるGPU間での直接のデータのやり取りを可能にするPEACH2という筑波大が開発しているLSIを展示していた。このPEACH2を使う計算ノードは、HA-PACSにTCA部として付加される計画である。

筑波大のブース

PEACH2ボードを実装した計算ノード

国内の研究所の展示

上記以外にも多くの日本の研究機関が展示を行っていた。気が付いたブースは撮影したつもりであるが、漏れてしまったところもあるかも知れないがご容赦願いたい。また、掲載順序は不同である。

統計数理研究所

情報通信研究機構(NICT)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

産業技術総合研究所(AIST)

日本原子力研究開発機構(JAEA)

海洋研究開発機構(JAMSTEC) 地球シミュレータセンター

ITBL(Information Technology Based Laboratory)コミュニティ

神戸市HPCクラスタ

高度情報科学技術研究機構(RIST)

国内大学の展示

先に上げた東工大、東大、筑波大、九大以外にも多くの大学がSCにブースを出展していた。こちらも抜けがあるかも知れないがご容赦願いたい。

北海道大学

東北大学

埼玉大学

北陸先端科学技術大学院大学

京都大学

奈良先端科学技術大学院大学

大阪大学

神戸大学

関西大学

展示番外編

SCの展示では、毎回、どこか1カ所は大型のトレーラを持ち込んでくる。今回は、Extreme Networkが、内部を同社のスイッチ製品の移動型ショールームに改装した500馬力エンジン搭載の18輪の大型のトレーラを持ち込んだ。

また、高級スポーツカーも、速いことが一致しているのでスパコン屋の好きな展示で、SSDストレージメーカーのNimbus Data Systemsは、前回に続いてランボルギーニを持ち込んだ。

Extreme Networksの移動ショールームの大型トレーラトラック

Nimbus Data Systemsはランボルギーニを展示

SCinet

そして、この展示フロア内や外部とのデータ伝送を受け持ったのがSCinetである。前回のシアトルで開催されたSC11では、会場から外部への接続バンド幅は450Gbit/sであったが、今回は790Gbit/sと75%バンド幅が増加している。

SCinetの有線の接続は良かったのであるが、無線LANは非常に込み合って、繋がってもすぐに切れてしまうという不安定な状態で困った。1万人の出席者が平均すると1人1台以上のWi-Fi機器を持っているという状況では、テクノロジの限界かもしれないが、何とかしてもらいたいものである。

なお、SCinetの機器はそれぞれのメーカーから貸与されたもので、SCinetは、SCが終わると数日で解体されてしまう。

SCinetの構成図

SCinetを構成するスイッチやルータ

SC13はコロラド州デンバーで開催

2013年に開催されるSC13は、コロラド州デンバーで開催されることになっている。SC全体の委員長(General Chair)はイリノイ大学のWilliam Gropp教授が務めることになる。そして、学会の要とも言えるTechnical Program Chairを東工大の松岡聡 教授が務めることになる。

次回のSC13はコロラド州のデンバーで開催

SC13のGeneral ChairのGropp教授

Technical Program Chairの松岡教授