そしてXperia Zでは、ディスプレイサイズが5インチと大型化し、クアッドコアプロセッサも搭載したのが大きなポイントになっている。黒住氏は、「"電話"の使い方が変わってきている」と指摘。「手に持つ」という動作は変わらないが、片手で持つのか両手で持つのか、縦持ちか、横持ちか、いろいろな持ち方がされるようになった、という。

大型でフラット、狭額縁のデザインとなっており、片手・両手、縦持ち・横持ちのいずれでも持ちやすい

こうした「全ての持ち方に対してベストなデザインを提案しなければならない」と黒住氏は説明。これがデザインの出発点だったようだ。まず、ディスプレイ面は無駄をなくすため、ベゼルを含めて全体を1枚の黒い板のようにデザインし、「側面もシンプルな面にしたい」「同様に背面もそぎ落としたい」とシンプルさを追求していった。カメラ部も存在を主張するのではなく、「そぎ落とした中に強いカメラが入っている奥ゆかしさという主張」を示すため、目立たないようにデザインしたという。

「その時代で一番強いと思われているプロセッサ、一番優れているディスプレイ、ぶっちぎりの(性能の)カメラ、そして十分なバッテリ容量」というスペックを、どこまで薄く、シンプルにできるか、というのがコンセプトだった黒住氏は語る。

単にフラットでシンプルなデザインではないことは、本体側面の角を見ると分かる。本体側面の4つの角は直角ではなく、動きを持たせるために丸くなっており、この曲面も単なる曲面ではなく、「球」の一部なのだそうだ。そのまま球体にすると、真円に近い形になるように設計したという。

4つ角の「球」

黒住氏は、Xperia Zのデザインに関して「しっかりとしたロジック、理由がある」と強調する。裏面の素材にはガラス素材で、iPhone 4Sと同様の素材になっているが、これにも「技術的な理由がある」という。Xperia Zでは、一定の強度を持たせるために本体フレームに対してディスプレイや裏面カバーをはめ込む設計を採用している。この構造だと、フレームに加えて表面、裏面にも一定の強度が必要となり、「プラスチック素材ではこの強度が出せない」のだという。

また、さまざまな持ち方をカバーするためにフラットなデザインを採用したことで、どうしてもガラスが必要だったという。Xperia Zでのガラスの採用はあくまで技術的な観点からだったそうだ。もう1つの選択肢として、アクリル素材も検討されたが、わずかに厚くなるため、断念したという。ガラス素材になると、耐衝撃性能が心配になる。これに対して黒住氏は、「素材によって内部の基準は下げていない」と話す。これまでのXperiaでも、落下試験や衝撃試験などを実施し、従来機種と同じ耐久性能を実現しているとのことだ。

Xperia Zは、正面から見ると側面のフレームとディスプレイの間にわずかにすき間があり、ここがバンパーの役目を果たして衝撃を吸収するのだという。また、裏面のガラスを押し込むとわずかに沈む感覚があり、これも衝撃吸収の役割をしているそうだ。この部分にもノウハウがあり、沈み込みすぎると硬質感がなくなり、ちょうどいい薄さで強度も保て、硬質感も出るというギリギリの厚さにしているのだという。黒住氏は、「クラフトマンシップ(職人技)」という表現を何度か使って、単なる見た目のデザインだけではない、目に見えない工夫や技術を強調する。

ちょっと分かりづらいが、側面のフレームとディスプレイの間にわずかにすき間がある

ちなみに、グローバルモデルとしては珍しく防水性能も備えており、CES会場でアピールされていた

Zに秘められた思い

今回の新モデルは、「Xperia Z」であり、アルファベットの最後の1文字となっている。黒住氏は、「モデル名の付け方は意外に気まぐれ」と笑う。確かに「arc」だったり、「AX」だったり、一貫性はあまりない。それでも、「Z」に対しては、「アルファベットの最後であり、最終兵器に近い」という思いがあるという。

特に米国では、「スーパースマートフォン」という表現が出てきており、CESのプレスカンファレンスでも平井CEOは、「Xperia Z」をスーパースマートフォンと紹介していた。これまでのXperiaは、「スマートフォンのやや上」という程度のイメージで、スーパースマートフォンではなかったという。

Xperia Zは、このスーパースマートフォンの領域に「堂々と入っていける」と黒住氏。プロセッサやOSを始め、スマートフォンに使われているハードウェア・ソフトウェアは日々進化していて、スペックレースの様相も呈しているが、これに追従するのは、「満たさなければならない、オリンピックの標準記録のようなもの」であり、グローバルで販売するためには、スペックレースは「絶対にクリアしなければならない基準」だという。

たとえばOSも、Xperia ZはAndroid 4.1(Jelly Bean)だ。開発のタイミング的に4.1だったため同バージョンでの提供になるが、発売後早期に最新のAndroid 4.2にバージョンアップするとしている。今後もスーパースマートフォンでは、「アップデートレディ」で、最新OSに追従できるように開発していく考えだ。

(記事提供: AndroWire編集部)