それに対し、ソニーモバイルの鈴木国正社長と デジタルイメージング事業本部の石塚茂樹本部長という、モバイル部門とデジカメ部門のトップ同士が、両部門の協力の方針を決めた。もともとソニー平井一夫CEOが「One Sony」の号令の元でこうした部門間連携を強化する方針だったが、鈴木社長、石塚本部長のトップ同士が固い握手を交わしたことで、「ハワード(ハワード・ストリンガー前ソニーCEO)でも壊せなかった(部門間の)壁ががらがらっと壊れた」と黒住氏は振り返る。
ソニーモバイルの鈴木国正社長とデジタルイメージング事業本部の石塚茂樹本部長という、モバイル部門とデジカメ部門のトップ同士が、両部門の垣根を取り払い、お互いに協力する方針を示し、そこで「(両部門の)壁が割れた」と黒住氏はいう。
これまで、Xperia開発にソニーのサイバーショットチームのメンバーも参加していたが、「見ている(カメラの)レベルはスマートフォンだった」という。しかし、トップ同士の「握手」で、センサー、レンズ、画像処理、そして絵作りといった、カメラとしての性能を追求した開発が本格化したかたちだ。
カメラは「アナログの世界とデジタルの世界が入り交じっている」と黒住氏。ハードウェアであればレンズをどのくらいの厚さにするか、といったアナログな調整と、絵作りにおけるプロセッシングのデジタル部分のコード、そして出力された写真の絵作りの調整というアナログ部分、といった具合に、デジタルとアナログの繰り返しでカメラは開発されているという。
デジカメ部門は、この作業を専門にやってきて、この部分では秀でているが、これをスマートフォンに落とし込むためにはソニーモバイルのノウハウも必要で、「デジカメ部門だけが開発しても意味がなく、一緒になってやるしか解がない」と黒住氏は強調。「これがうまくいったのではないか」というのがXperia Zのカメラなのだという。
もちろん、開発自体はソニーモバイルだが、サイバーショットやNEX、αといったカメラ部門で培われた技術を、「隠すことなく、Xperiaをよくするために使わせてもらった」とのことだ。実際に撮影してみると、特に暗部での画質が向上しているほか、フラッシュの光も柔らかくなっており、自然な描写になるようになっている。
黒住氏によれば、石塚本部長はCESの会場で「Xperiaのカメラは我々が作った」と話していたという。現場レベルではデジカメ部門との一緒になって開発できる環境を作ったことで、Xperiaのカメラ開発がデジカメ部門としての開発という認識があったということだろう。
Xperia Zは、ソニー・エリクソンからソニーモバイルになり、ソニーモバイルとして一から開発した最初のスマートフォンとなる。これに、ソニーのデジカメ部門との「一段上」(黒住氏)の協力をもとに開発されたのが、このXperia Zということだ。
クラフトマンシップで作り上げられたデザイン
Xperia Zの特徴としては、やはりデザイン面も大きな変更だ。これまで、「Human Curvature」と呼ばれる、デザイン哲学で開発されてきたXperiaだが、今回はストレートでフラットなデザインを採用している。背面には、iPhone 4Sと同じくガラス惣菜を採用している。
黒住氏は、「デザインに対するアプローチや考え方は変わっていない」という。「Xperia X10」から始まり、「Xperia arc」や「Xperia NX」などと来て、今回の「Xperia Z」まで続く根底にあるデザインの考えが「ヒューマンセントリックデザイン」だという。
「携帯電話は、どんな電化製品、デバイスよりもいちばん身近にある」と黒住氏は語る。身近ゆえに、「人と端末との関係の中で商品が形作られる」のであり、造形美やデザインが先にあるわけではなく、人との距離や関係の中でXperia Zの形ができていったそうだ。 X10では、流線型のデザインで、ホーム画面のUIには「Infinite、無限に続くというコンセプト」を採用。本体背面がわずかに膨らみ、手のひらにぴったり収まるデザインにした。Xperia arcでは薄さを追求し、和弓をイメージしたデザインを採用。Xperia NXでは、プロセッサとバッテリ容量のために薄型化を断念し、代わりにボディ側面をそぎ落としたようなデザインにして、曲線を生み出し、「X10よりソフトに、エレガントに見えるようにした」という。