幕末において、革命軍(新政府)の主役と言えば、坂本龍馬や西郷隆盛などがあげられますが、旧体制(江戸幕府)の主役と言えば、やはり勝 海舟ではないでしょうか?この人物が行った偉業のひとつは、江戸城無血開城でした。要は内戦を起こさせずに革命を成立させ、結果、短期間で日本が強くなり外国からの侵略を防いだ立役者でした。

もし幕末にスマートフォンがあったなら、勝海舟はどんなアプリを使っていたのでしょう? そんなことを空想してみるのも面白いのではないでしょうか。無理を承知の上での試みですが、歴史のエピソードとともに、今回は「勝海舟」がスマホを持っていたら使っていたかもしれないiPhone/Androidアプリを5つ厳選して紹介します。

かわいい子犬

幕末時、勝海舟は、今風に言えば、日本の大臣をしていました。大臣なのに、「今の政府は腐っている!」と、大声で批判していたので、身内である政府の重役から睨まれ、また革命軍(新政府)からも「政府の重鎮」ということで睨まれていました。

その結果、何度も斬られそうになったり、3~4人から一斉に発砲されたこともあったそうです。そんな常に命を狙われる存在であった勝 海舟が一番恐れたのは、当然、暗殺者! ……と思いきや、一番怖いのは、なんと「犬」だったそうです。

勝 海舟は、満8歳の年に犬に襲われてしまいます。そのとき、たまたま犬にかじられた場所が、何とタマタマで、睾丸が破れ出てしまうほどの重傷だったそうです。医者に何とか縫い合わせてもらったものの、その後、70日間も生死の間をさまようという体験があり、それがトラウマになって大人になっても犬が大嫌いだったそうです。

「かわいい子犬」をインストールすれば、いつでもどこでもかわいい子犬と遊べます。エサをあげたり、頭をなでてなつかれたりできます。成長すれば、芸も覚えてよりかわいいペットになります。犬が嫌いな勝 海舟も、これを使えばきっと犬が好きになり、恐れるものは何ひとつない人生になっていたことでしょう。

かわいい子犬

アプリ基本情報(2012年12月28日現在)
対応OS Android 2.3.3以上 価格 無料

野村株アプリ

幕末の英雄、勝海舟は、若いころは非常に貧乏でした。満24歳のときには、娘もひとりいたのですが、お米を炊くときの薪も買えないときもあり、そのときは自宅の天井や柱を切って薪にしていたそうです。現代の日本でいう「貧乏」とは、スケールが違う貧乏人だったようです。

そんな貧乏な時代でも「野村株アプリ」があれば、きっと大丈夫でした。無料でマーケット情報が見られますし、最大で600銘柄も登録ができますから、仕事がなくてヒマであっても、丸一日、気になる企業の株価をチェックすることができます。

野村株アプリ

アプリ基本情報(2012年12月28日現在)
対応OS iOS 4.3以降/Android 2.1以上 価格 無料

ImageReader

同じく満24歳で貧乏をしていたころの勝 海舟がほしかったもの。それは、米や家ではなく辞書でした。この辞書はズーフ・ハルマと言い、オランダ語を訳すためのものでした。しかし、この辞書のお値段は非常に高く、現代の価値に直せば約600万円もしたらしく、貧乏人の勝 海舟が買えるはずもありませんでした。 でも、「絶対に手に入れてやる!」と誓った勝 海舟は、この辞書を買った医者のところに乗り込み、「約100万円で1年貸してくれ!」と頼み込み、見事、貸してもらうことに成功します。

ところで、この約100万円をどうやって捻出したのか気になりますよね?それは、この辞書を2部書き写して1部は人に売ったのです。書き写すと簡単に言っても、それは大変なことでした。この辞書は、なんと58巻もあり、それを1年の間に2部書き写すのです。

本当にそれを成し遂げた勝 海舟は、1部を約300万円とも約600万円とも言われる価格で売り払い利益まで出したのです。この「ImageReader」は、撮った写真を文字に起こしてくれるアプリです。これさえあれば、わざわざ書き写さなくても、カシャッと写真を撮れば文字にしてくれますから、1年以内に100部くらいは作ることができて、一気に貧乏から脱出できたことでしょう!

ImageReader

アプリ基本情報(2012年12月28日現在)
対応OS Android 2.1以上 価格 無料

スペースインベーダー

勝海舟はオランダ語をマスターしたあと、西洋の優れた技術を知る人材として名を馳せ、41歳のときには軍艦奉行というエライ人になります。そうして神戸海軍操練所という、軍人を養成する学校をつくったのです。

しかし、このなかに、反政府をたくらむメンバーがおり、勝 海舟は、「オマエ、政府の重役なのに、テロリストを育ててどうするんだ!」と責任を追及されてしまい、軍艦奉行はクビ。神戸海軍操練所は閉鎖。おまけに自宅軟禁という刑罰を受け、2年間も自宅を出られないという、もどかしい時期をすごします。

そんなときがあっても、永遠の名作「スペースインベーダー」があれば、きっと快適に暮らせたことでしょう。僕もこのコラムを書くために、試しにダウンロードをしたら、うっかりハマりすぎて締切に遅れそうになり、あやうく仕事を失うところでした。

スペースインベーダー

アプリ基本情報(2012年12月28日現在)
対応OS iOS 3.0以降/Android 2.1以上 価格 170円(App Store)、630円(Google Play)

防災速報

明治維新の終わりころの話です。革命軍(新政府)は、旧体制(江戸幕府)を打ち倒し、京都から旧体制(江戸幕府)の本拠地である東京まで攻め上ってきました。

このとき、降伏の条件交渉を任されたのが勝海舟でした。革命軍(新政府)に対して、「江戸城を明け渡します」「武器を渡します」「軍艦を渡します」などを伝え、だいたいは革命軍(新政府)も、「納得しないわけでもない」という感じでしたが、一点、どうしても両者の意見が合わないところがありました。

それは、旧体制(江戸幕府)の総大将である徳川慶喜の扱いについてでした。革命軍(新政府)は、「ここまで日本を悪くさせた元凶である徳川は、何が何でも差し出せ」と要求し、勝 海舟ら旧体制(江戸幕府)は、「それだけは無理! 徳川さんは、故郷の水戸で謹慎するってことで許して」ということで話がかみあいませんでした。勝 海舟は降伏の交渉をしているというのに、なんと、革命軍(新政府)を脅して、結局は条件を飲ませてしまうのです。

どうやって脅したかというと、「お前らが東京に攻めこんできやがったら、東京中に火をつけて、大打撃を与えてやる! 総大将を失えば、俺ら暴発すっからな」的なことを言ったそうです。泥沼の内戦になれば、国力を低下させ、結局は外国に占領されてしまうので、革命軍(新政府)は、「これ以上、強く押すのは止めておこう……」ということで、東京への総攻撃は中止になり、100万人いると言われていた都民の命を救うことができたのです。

勝海舟は交渉が決裂した場合も考えて、ありったけの漁船を準備して、放火する前に市民を避難させる手はずを整えていたと言われています。でもそれでも逃げ遅れる人は大勢いたと予想されます。「防災速報」があれば、緊急時の伝達がより素早く行えて、万一のことがあってもより多くの市民が助けられたことでしょう。

防災速報

アプリ基本情報(2012年12月28日現在)
対応OS iOS 4.3以降/Android 2.2以上 価格 無料
齊藤正明(さいとう まさあき)
歴史マニアの上司と鹿児島へ出張に行った際、「あれが大久保利通の銅像だ」と上司に言われたとき、「大久保利通って誰っスか?」と答えたところ逆鱗に触れ、「オマエのような奴は、一回死ね!」と狭いレンタカーの中で3時間説教をされる。以降、上司からは「オマエには生きる価値などない!」と散々怒鳴られ、シブシブ『学研歴史まんがシリーズ』で歴史の勉強を開始。最初は嫌々だったが、偉人の俗説を知ると、偉人も自分とあまり変わらないことを知り、歴史に興味を持つ。現在は、様々な歴史書を読み「偉人の墓巡り」が趣味。これまでに巡った偉人の墓(または記念館)の数は500以上。『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイナビ新書)など著書多数。