現在電子工作を趣味としている、またこれからはじめてみようかなと考えている人はどれくらい居るだろうか。筆者の周りはそういう人が多くいるのでそれが一般的かと思ってしまうが、きっと世間一般ではそんなこともないのかもしれない。ただ、先ごろ東京・日本科学未来館で開催されたMaker Faire Tokyoなどを見るに、電子工作に興味がある人は確実に増えているのではないかと思う。

電子工作をやっている人には分かると思うが、はんだ付けが必要な場面が多くあったり、部品を選択するのに計算をする必要があったりといくつか壁がある上、完成してみると基板むき出しでお世辞にもかっこいい、かわいいと思えなかったりするのは歴然たる事実だ。大量生産している製品との大きな違いは外装にあるんだな、と思うことは筆者にもよくある。

金型を使ったプラスチック製のケースなどを作るのはほぼ不可能だし、3Dプリンタもまだまだ敷居が高い。でももっと簡単にかわいい外装を作ることは可能なのではないか、ということで今回取り上げるのはテクノ手芸部が監修している書籍「羊毛フェルトでふわピカ動物をつくろう」だ。

「羊毛フェルトでふわピカ動物をつくろう」の表紙

「羊毛フェルトでふわピカ動物をつくろう」の裏表紙

今回の書籍はLEDが光る回路と羊毛フェルト、そして道具までセットにしたキット付き書籍になっている。確かに電子工作の経験者は手芸の道具や材料を揃えるのに、手芸の経験者は電子工作の道具や材料を揃えるのに抵抗があるだろうから、これはとてもありがたい。筆者も羊毛フェルトの道具は持っていなかったので、この書籍に入っていた道具を利用した。

書籍に入っている部品。電子回路の部分はほぼ組み立て済みで、あとは電線をねじってくっつけるだけなので、電子工作は初めてでちょっとこわい、と思っている人も安心だ

さて、せっかく道具も材料もあるのだから何か作らないのはもったないということで、早速羊毛フェルトを使ったテクノ手芸にチャレンジしてみることにした。作るのは初心者であるということと季節柄を考慮して「雪だるま」だ。書籍に付いてきたフェルトでは色が足りないので、手芸に強い100円ショップで赤いフェルトの入ったキットを買ってきた(余談だがこのキットにもフェルト手芸用の針が入っていたので、道具の予備ができて安心して作業に取りかかれた)。

まずはLEDの回路を電池と繋いで光るかどうかを確認した。ここもはんだ付けは必要なく、電池フォルダにあらかじめはんだ付けされている電線をLEDの足にねじりからめて固定するだけで接続できるので、とても簡単で工具も不要だった。電池フォルダに電池を入れてスイッチを入れたら無事光ったので、次はフェルト細工だ。

電池とLEDのそれぞれの配線をねじってくっつけ、LEDが光るかどうかテストしているところ。電池フォルダの横にスイッチがついているので、いちいち電池を外さなくてもLEDのオンオフができる

はじめに羊毛フェルトを取り分けた。頭と胴はだいたい倍くらい大きさが違うから、必要とする羊毛フェルトの量もそのくらいに分けるのだが、その他後からかぶせてLEDの回路を隠すための羊毛フェルトを頭と同じくらい取り分けておいた。おおざっぱに言って頭、胴、後からの分で1:2:1くらいだ。

次は分けた頭と胴の分を丸めてから針で刺して固めていく。針で刺しているとみるみるうちにちゃんと丸い塊になっていくのが、刺した感触や音と相まってとても気持ちがいい。ただ自分の指を刺してしまわないよう、また勢い余ってフェルティング用マットを突き抜けて針を折ったり曲げたりしてしまわないように注意したい。

2つの塊がそれぞれ適当に丸くなったところで押しつけてまたざくざくと刺していくとくっついてくれるので、次は目となるLEDが離れているとちょっと怖い感じになってしまうので寄せてみたり、LEDの回路を球に沿うように配線を変形させたりした。そしてその上からさっき取り分けた残りの羊毛フェルトをかぶせて、また針でざくざくだ。ここでは今までと違ってフェルトの下に配線がある場合があるので、無理に刺して針を折ってしまわないように注意しよう。筆者はこの段階で配線を刺してしまい、針を曲げてしまった。

出っ張っているところや浮いているところを集中して刺すようにすると形を整えることができた。最後に別に作っておいた赤い帽子をかぶせてまたざくざくと刺してくっつければ完成だ。配線が無事か電池を入れて確認したところ、無事LEDが点灯してくれた。完成した雪だるまはクリスマスツリーのオーナメントとして使いたいと思っている。

完成した雪だるま。配線のためにちょっとでこぼこしているのはご愛敬

雪だるま裏面。配線が隠しきれずに少し出てしまった。電池フォルダはあえてこの位置にして、雪だるまの座りがよくなるようにした

電子回路としては非常に単純なものではあるが、完成すると大変満足感が得られた。やはり外見がちゃんとしていると、簡単なものでも満足度は高くなるのだな、と感じたのであった。

今回は書籍に付いてきた回路を利用したので点灯するだけだが、次に作るなら何かのセンサ(簡単なものなら、転倒スイッチなど)と組み合わせたり、PWMを使ってLEDがゆっくり光る回路を使ったりなどして、なんらかの動きを持ったものにしてみたいなと思ったのだった。また、当初の予定通り自分の作った回路や基板を納めるケースを作ってみたいとも思う。

長々とテクノ手芸へのチャレンジをレポートしてきたが、他に何もなくてもこの一冊ですべて準備できてしまうこのキット付き書籍はとても便利だ。作例も段階を追って写真で説明してくれているためつまずくこともないだろう。

また、手芸を趣味としてやっている人でこの書籍で初めて電子工作に触れたら楽しかったのでもっとやってみたい、と思った人にはテクノ手芸部の前著「テクノ手芸」をお勧めしたい。この本では電子工作の基礎からマイコンを使った工作までかなりしっかりと説明していて、かなりいろいろな事ができるようになっている。

何か新しい趣味、他の人がやっていない趣味を何か始めてみたいなと思っている人、ただの電子工作ではちょっと面白くないなと思ってきた人などにはお勧めの書籍だ。

羊毛フェルトでふわピカ動物をつくろう ~羊毛フェルト+LEDキット付き~

発行 マイナビ
発売 2012/10/31
著者 テクノ手芸部
形・ページ ムック・32ページ
ISBN 978-4-8399-4481-0 定価 1,590円
出版社から:ふわふわとしたかわいらしい作品がつくれると人気の羊毛フェルト手芸。

テクノ手芸部監修の本書には、「目が光るウサギ」もしくは「目が光るシロクマ」がつくれる2色の羊毛フェルトとフェルティング用ニードル、フェルティング用マット、LED電子回路(スイッチ&ボタン電池付き)を付属。テクノ手芸部によるアドバイスとつくりかたを参考に、誰でもカンタンにかわいい"ふわピカ動物"をつくれます。

このほか、付属キットを使用してつくれるアクセサリーやぬいぐるみのつくりかた、テクノ手芸部おすすめの道具や素材、ショップなども紹介。羊毛フェルトの暖かい手ざわりと電子部品のかっこよさのいいとこ取りをする新しい工作「テクノ手芸」をたっぷり楽しめる一冊です。