Tim Cook体制のAppleとは

iPadファミリーが増え、MacBook Proに新しいRetinaモデルが加わり、iMacが新世代となった今回のイベントは、ポストPCが完全にAppleの主流になったのを印象づけるものだった。同時にTim Cook氏が年間を通じて舵取りをした2012年の締めくくりになるイベントでもあった。

最後にCook氏は「今年の初めに、1年を通じて素晴らしいイノベーションをお見せすると約束しました」と切り出し、2012年にリリースした数々の製品を1つずつ紹介して、スペシャルイベントを終わらせた。

Cook氏の背後のスクリーンには2012という数字が大きく映し出されていた。それをヒントとすれば、「We've got a little more to show you (もう少しお見せしたいものがあります)」というメッセージは、2012年に提供する製品がまだ少し残っているという意味だったのではないだろうか。

キーノートの最後に2012年をふり返ったクック氏

ふり返ってみると、今年のAppleは遂行能力が光っていた。6月に開催した開発者カンファレンスWWDC 2012のタイミングでOS X Mountain LioniOS 6を開発者に示し、夏後半から秋にかけてOSのバージョンアップを実行。それらに合わせてクラウドサービスも強化した。夏商戦の前に15インチのMacBook Pro Retinaモデルを発売、MacBookファミリーを刷新し、秋商戦にiPhone 5iPod touch、iPod nanoを投入。さらに新OSが完全に浸透した今、年末商戦向けの製品投入である。1年を通じて、OSとクラウド、各種アプリケーション、Mac、iPhone、iPad、iPodの全ての歯車がきれいにかみ合って、スムースに新製品が繰り出されてきた。数年前まで、今年はiOS強化の年、その間にMacは停滞気味というような状態だったのだ。

MacもiOSも、そしてクラウドも余裕でこなせるリソースを持った企業にAppleが成長したというのもあるだろう。しかし、巨大になれば、肥大化の恐れが出てくる。それを着実に目標を遂行する組織として機能させているのは、COOから昇格したCEOであるTim Cook氏の力ではないだろうか。スペシャルイベントのたびに、Jobs氏の時代と比べて「One more thing...のようなサプライズがなく、もの足りない」とも言われたが、2012年を通じて示した遂行能力こそ、Cook時代のAppleの強みである。

写真スライドショーはこちらから→