システムの安定化のために

高速データ通信化を推し進める一方で、NTTドコモは今年1月に起きた通信障害の原因である制御信号の対策にも取り組んでいる。

岩崎氏によれば、スマートフォンで制御信号が増大する理由は、フィーチャーフォンと違って待ち受け状態でも定常的に通信が発生するからであり、NTTドコモでは無線接続手段を変更することで制御信号を従来より20%削減することに成功したのだという。

Xi推進と112.5Mbpsエリア拡大による高速データ通信化、そしてそれを支えるためのシステムの安定化、この2つがNTTドコモが推し進めるインフラ事業の方向性である。

スマホユーザー向けのサービス

その一方、NTTドコモはスマートフォンユーザーに向けたサービス展開も積極的に行なっていくという。

その一つは「dメニュー」と「dマーケット」というドコモ独自のサービスを介したデジタルコンテンツの拡充であり、さらに生活サービスやeコマースといった「リアル領域への事業の拡大」である。実際、NTTドコモは食品宅配事業の「らでぃっしゅぼーや」やCD/DVD販売事業の「タワーレコード」などを傘下に収めており、インターネットによるコマース事業への進出を加速させている。

フィーチャーフォンやPCの時代からスマートフォンやタブレットの時代になり、潜在市場が顕在化した

スマホユーザーに向けたもう一つのサービス展開が、「ドコモクラウド」を利用した様々なインテリジェントな機能の提供だ。たとえば11月1日からサービスが開始される「はなして翻訳」は、通話中や対面会話中の声を相手の母国語に自動翻訳する機能。他にも「メール翻訳コンシェル」や、写真をクラウドで預かる「フォトコレクション」、電話帳やメールの履歴をクラウドで管理し、マルチデバイス対応させた「クラウド電話帳/クラウドメール」、ユーザーの趣味嗜好から最適なサービス・コンテンツをリコメンドしてくれるロボット「しゃべってロボ」など、キャリアならではのクラウドサービスを提供していくという。

また、今年7月にNTTドコモと中国Baiduが合弁会社を設立したことが話題になったが、岩崎氏によれば今後はさらなるグローバル展開を推し進めていく予定とのことで、「おサイフケータイ」の利用サービス・エリアを世界へ拡大し、成長著しいM2M(※)市場においても様々な機器とモバイルを融合させることで産業の発展に寄与する方針を打ち出している。

(※)Machine-to-Machineの意。機械同士が相互に通信し合うネットワークシステムのこと。たとえばPlayStation VitaにNTTドコモがデータ通信専用プリペイドプランを提供した例もM2Mである。