2012年8月から9月にかけて各メーカーがスマートフォン/タブレットの新製品を相次いで発表した。この期間に登場した新製品の特徴のひとつはディスプレイサイズの大型化だろう。

例えばSamsung Electronicsのフラッグシップモデル「GALAXY S III」 は4.8 インチ、Sony Mobile Communications の「Xperia TX」(日本ではXperia GX SO-04D として発売)は4.6インチ、といった具合に4.5 インチを超える大型画面の搭載がハイエンド製品のトレンドとなっている。この流れはHuawei やZTE といった中国の新興メーカーにも広がっている。Appleでさえも、9月に発売した「iPhone 5」 で従来の3インチ台を超える4インチの画面を採用し、消費者ニーズのトレンドに応えた格好になっている。

そんな中、HTC のこの秋の新製品には興味深い傾向が見られる。9月19日にニューヨークで発表された「Windows Phone 8X」はHTC初のWindows Phone 8を採用したスマートフォンで、画面サイズは4.3インチの上位モデルという位置づけである。また9月7日に中国市場向けに発表されたAndroid 4.0搭載スマートフォン「HTC One SU」「HTC One ST」「HTC One SC」も画面サイズは4.3インチとなっている。そして9月から台湾、香港で販売が始まった日本発のスマートフォン「HTC J」も画面サイズは同じ4.3 インチだ。実は、HTCはこれまで「Sensation」や「Rezound」「EVO 3D」など、4.3インチの端末を多く提供している。現在、HTCの製品で4インチ後半の端末はハイスペックの「One X」シリーズ、「EVO 4G LTE」と数少ない。

4.3インチ画面を採用するHTC初のWindows Phone 8端末「Windows Phone 8X」

では他社が大画面化やディスプレイサイズのバリエーションを増やす中、HTC はなぜ4.3インチのラインナップを重点的に増やしているのだろうか。その一番の理由は「アジア市場への積極的な展開」と関係があると筆者はみている。

一般的に欧米人とアジア人では体格が異なることから、携帯端末の好まれるサイズにも差があるのは明白だ。例えば、欧米人より体格の小さいアジア人の片手操作の限界は4.3インチとも言われている。アジア人にとって4.3インチのサイズはメッセージのやりとりや音声通話する際に携帯電話と同じ感覚で利用できるというわけである。欧州・北米といった先進国のスマートフォン市場でライバルに苦戦し、シェアはピーク時から半減しているHTCとしては御膝元のアジア市場の強化は必須であり、そのために「最も使いやすい」4.3 インチのラインナップを増やしているのではないだろうか。

4.3インチはSamsungなどのハイエンド機種より小さいが、アジア人には片手で操作できるサイズ

確かに画面サイズの大型化は一般ユーザーのライフスタイルに沿った進化である。スマートフォンでさまざまな動画コンテンツを楽しむ人が増え、Apple がiOS 端末向けにリリースした「iPhoto」をはじめとしたスマートフォン上で写真・動画を編集できるソフトウェア・サービスが注目を集めている。

このような傾向からディスプレイの大画面・高解像度は進むのは必然だろう。その一方でスマートフォンを「日常的に使いやすいものが欲しい」「携帯電話の延長として使いたい」と考える消費者の数もまだまだ多い。HTC の4.3 インチ画面戦略はそこを狙ったものと筆者は考えているのだ。

最重要マーケットのアジア市場のシェアを高めるためにも、売れ筋の4.3インチモデルのラインナップを拡充するHTC。中国や台湾に積極的に4.3インチ端末を投入する流れを考えると、今後、同じアジアの日本向けの「意欲的な4.3インチ端末」の投入が期待できそうである。HTCのこの冬の動向に注目したい。

(記事提供: AndroWire編集部)