米Wal-Mart Storesが「モバイル・チェックアウト」導入に向けたテストを実施していることが話題になっている。米Wall Street Journalによれば、現在米アーカンソー州内同本社近くのWal-Mart店舗で、iPhoneで商品バーコードをスキャンしてそのまま会計を済ませられる「Scan&Go」というシステムを実験しており、今後の全米展開を計画しているという。従業員コスト削減のほか、新たなビジネスチャンスの可能性も指摘されており、世界最大の小売業者の動向に注目が集まる。

これはiPhoneに専用のストアアプリを導入し、カメラで商品のバーコードをスキャンしてそのまま会計を済ませることが可能というもの。人の配置されたレジや、最近導入が進んでいるセルフチェックレジを通過する必要もなく、素早く買い物を済ませられるのが特徴となる。仕組み的には米Appleが昨年末に米国で導入し、今夏には日本でもスタートした「EasyPay」とほぼ同じなので参考にしていただくといいだろう。英Reutersによれば、このテストが行われているのは米アーカンソー州ロジャースのWal-Martスーパーセンターで、同本社のある同州ベントンビルに隣接する。Survey Monkeyに掲載された被験者の募集事項によれば(当該URLは現在アクセスできず )、1時間のテストで100ドルの報酬と25ドルのWal-Martギフトカードが入手可能で、チェックアウト(会計)の様子をモニターすることで本格運用に向けたブラッシュアップを行う、フィールドテスト的なものだという。そのため現時点で同システムは一般開放されていない。システム導入計画自体は今年3月に発表され、今後全米に4500あるWal-MartならびにSam's Club店舗のうち1600で、セルフチェックレジ込みで本格展開していく計画だ。

モバイル・チェックアウトを導入するメリットは店舗と利用者の双方にとっていくつかのメリットがある。まず店舗にとってはレジに必要な人員を削減可能で、これによりコスト削減効果が期待できる。Wal-Martは全米のレジ係の給与だけで1秒当たり1200万ドルの支払いが発生しており、固定費に占める人件費の割合が大きい。まずはこれを削減する狙いがある。また利用者にとっては行列に並ばずに会計が可能になり、手軽にショッピングできるメリットがある。もちろん手軽にショッピングできて買い物機会が増えるということは、それだけ小売店にとっては売上増の機会につながる可能性がある。またスマートフォンのアプリを通して顧客情報が逐次入手できるため、「競合商品を安くするクーポンのリアルタイム表示」「お勧め機能の強化」など、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性がある。いずれにせよ、オンラインならではのメリットを享受できる。

デメリットの1つとしては、レジを直接通さないことで発生するトラブルの危険性だ。先ほどのレポートの中でWSJが例を挙げているが、最近になり米ニューヨーク市内の5番街店舗において18歳の少年が会計を行わずに141ドルのヘッドホンを持ち出したとしてニューヨーク市警に逮捕されたことが話題になっている。少年はEasyPayでの決済が完了していなかっただけとして全面的に争う構えを見せており、少なからずこうしたトラブルが発生する火種はある。全米最大のリテーラーの動向に注目だ。