一時期話題になっていた「MicrosoftがOffice for iPadをリリース」という噂が再燃している。しかもこんどはAndroidもターゲットに含まれており、2012年11月にも発売が行われるという。これがiPadだけでなくiPhoneやiPod touchも対象に含んだ「Office for iOS」だという話もあるが、浮かんでは消えるこれらの噂、どこまで本当なのだろうか?

今回、この噂が再燃するきっかけになったのはBoy Genius Report (BGR)だ。また、本誌でも以前にThe Daily発の情報として伝えたように、従来からあるMac OS X向けのOffice for Mac以外にも、Microsoftが同社製OS以外(=Windows以外)のプラットフォーム向けにOffice製品を開発しているという噂は以前からある。

すでにMicrosoft Officeが利用できるWindowsとMacを合わせるとPC向けOSのシェアの大部分をカバーできるため、PCでWindows/Mac以外のプラットフォーム向けのOffice製品――例えば「Office for Linux」――を開発しないことは納得がいくが、現在急拡大しているスマートフォンやタブレット市場向けのOfficeを開発しないのは、潜在的なビジネスチャンスを逃している可能性がある。「キラーアプリであるOfficeを他のプラットフォームへみすみす融通しない」という戦略上の理由でWindowsのみの供給に留めるという考え方もあるが、今後さらに拡大するビジネス市場に対し、同社利益の半分近くを稼ぎ出すOfficeを手元に寝かせておくのはどうだろうか。The Dailyでは、MicrosoftがOffice for iPadの開発に向かう理由をこうした視点から分析していた。

ただ、Microsoftがこれら新製品を開発するだけのリソースをどれだけ抱え、戦略上の優先順位をどのように考えているのかは不明な部分が多い。例えば以前にThe Dailyが報じた情報によれば、MicrosoftはOS X Lion対応を機に「Office for MacのMac App Storeでの供給を行う計画だ」としていたが、これは現時点で達成されていない。これは「オンラインでバラ売り販売」という流通形態の問題や、開発リソースの問題などがあるとみられる。また今年後半にはWindows 8のリリースが迫っており、最新のOffice for Windows製品もそれに続くタイミングで提供されることになる。噂が本当ならば同時期に3プラットフォーム版の提供を行わなければならないわけで、これだけの余裕があるのか気になるところだ。

さらに、次期Officeではデスクトップ画面での動作を予定しており、Windows 8で導入されるMetroスタイルのアプリの形態はとらないという。デスクトップアプリケーションを導入できないARM版のWindows RTでさえ、Officeに関しては"例外的"だと公表している。そのため、タッチ操作が前提のiPadやAndroidでは、別途異なるユーザーインターフェイスを用意しなければならなくなるだろう。

以上から考察すると、現時点でBGRが伝えるようなリリース計画の実現性はそこほど高くなさそうだ。だが、もしこれをMicrosoftが実際に計画として進めているのであれば、それは社運を賭けるレベルで多くのリソースを割いて取り組んでいるプロジェクトということになると思われる。