米Appleは4日(米国時間)、米クパチーノで特別イベントを開催し、長く待ち望まれていたiPhoneの新モデル「iPhone 4S」や、iPodの新製品を発表した。いずれも前モデルの外観デザインを引き継いでおり、一見穏やかな製品アップデートという印象を受ける。だが、スマートフォン市場ではなく、年間15億台の携帯電話を攻略するというTim Cook CEOの意図を反映した意欲的な製品ラインナップになっている。

Tim Cook CEO初の製品発表イベント

米Appleは10月4日(米国時間)、米カリフォルニア州クパチーノで特別イベントを開催し、長く待ち望まれたiPhoneの新製品「iPhone 4S」を発表した。

既報のように、iPhone 4SはiPhone 4の外観デザインを引き継いだ機能強化モデルである。イベント開催前はiPhone 5と呼べるような大胆な刷新を予想する声もあったが、今にして思えばイベントの招待状に様々なヒントが隠されていた。今年Appleは3月2日に開催した特別イベントでiPad 2を発表しており、今回は10月4日開催である。偶然かもしれないが、iPhone 5だったら5日にスケジュールしたのではないだろうか。もう一つは「Let's talk iPhone」という招待状に書かれた一文だ。「iPhoneを語る」なのか、それとも「iPhoneについて語る」なのか、言葉足らずで意味が把握しにくく、そのためイベント開催決定の速報記事では無理に訳さずに英語をそのまま記した。実はこの表現が、この日のワンモアシングと呼べるような発表を示唆していたのだ。

Tim Cook氏の最初の言葉は「ご存じないかもしれないが、今日はわたしがCEOに就任して初めての製品発表だ」だった

キーノートは新CEOのTim Cook氏がホスト役を務め、各製品グループの責任者がそれぞれの製品を説明する形で進められた。Steve Jobs氏というカリスマ的な存在を欠いたキーノートになったが、近年はJobs氏がホスト役のみを担うことも多かったため、想像していたよりも雰囲気に違和感はなかった。聞く人を惹きつけるJobs氏のようなプレゼンテーションをCook氏に求めることはできないが、冷静にデータを並べる同氏の話しぶりには独特の説得力があった。

キーノートは、Mac、音楽、iPhone、iPadの情報アップデートから始まった。7月20日に発売開始となったOS X Lionは600万ダウンロードを超えており、この成長ペースはSnow Leopardを80%上回る。Macユーザーはインストールベースで6,000万人に近づいているそうだ。iPodは、成熟期を迎えたデジタル音楽プレイヤー市場で70%以上のシェアを維持し続けており(現在米国では78%)、累積販売台数が3億台を突破した。

そのデジタルプレイヤー市場を取り込みながら急成長しているのがスマートフォンだ。今年第2四半期に市場全体が74%の伸びだったが、iPhoneはそれを大きく上回る125%の成長を記録した。iPhoneシリーズの中でもiPhone 4は、短期間でシリーズ全体の累積販売台数の過半数を超えるようなヒット作となっている。iPadは米国のタブレット市場で74%のシェアを獲得している。高いユーザー満足度が、教科書/参考書、病院のカルテ、パイロットのマニュアルなど様々な場への浸透につながっており、Fortune 500企業の92%がiPadを導入または採用を検討しているという。なお、最新のデータでiOSデバイス全体の累計販売台数が2億5000万台を突破した。 

OS X Lionへのアップグレードは2週間で対象者の10%に到達。Windows 7は10%到達に約20週間を要している

モバイルフォンの満足度調査でAppleは70%の好スコアを記録(ChangeWave調査、2011年6月)

続いてScott Forstall氏(iOS担当シニアバイスプレジデント)がiOS 5を、 Eddy Cue氏(インターネットソフトウエア&サービス担当シニアバイスプレジデント)がiCloudの概要をふり返った。新しい情報は1つ。iCloudの「友達を探す (Find My Friend)」だ。「iPhoneを探す」機能をユーザー同士の位置情報共有に利用できるようにしたサービスである。例えば、スキー場で友達同士がお互いの位置を確認しあえる。プライバシーコントロールで簡単に自分の位置情報の発信を無効にできるほか、時間を限定して位置情報を共有することも可能。逆にペアレンタルコントロールでは、子供がこの機能を無効にできないように設定できる。

「友達を探す」機能を使って友達同士、家族内でそれぞれの位置を把握

iPod nanoは129ドルから、iPod touchは199ドルから

後半は、Phil Schiller氏(ワールドワイドプロダクトマーケティング担当シニアバイスプレジデント)がiPod nanoとiPod touch、iPhoneの新製品を発表した。

iPod nanoは大きなアイコンでよりスムーズに操作できる新ユーザーインターフェイスに刷新され、nanoを時計として使うクロックフェイスが18種類に増えた。またレシーバやセンサーを装着せずにnano本体だけでNike+を利用できる。

iPod nanoの小さな画面でも操作しやすいように、大きなアイコンを採用

ディズニー時計のクロックフェイスも登場

iPod touchについてはiOS 5搭載の効果――例えば、メディアプレイヤーでありながら無料テキストメッセージング「iMessage」を使えるところなど――がアピールされた。またAppleによればiPod touchは「最もポピュラーなポータブルゲームプレイヤー」であり、iOS 5で強化されたGame Centerによってソーシャルゲームの世界がさらに広がるという。

こうした新機能以上に、2011年版iPodの重要なポイントになりそうなのが価格だ。米国で今年のホリデーシーズンに200ドルを超えるガジェットの苦戦が予想される中、AppleはiPod shuffle(2GB)を49ドル、iPod nanoを129ドル(8GB)から、iPod touchを199ドル(8GB)からと、手頃な価格から始まるラインナップにまとめた。

49ドル(iPod shuffle 8GB)から199ドル(iPod touch 8GB)まで、200ドル以下で手頃感が強まったiPodのラインナップ