A棟1階ではプリント基板を製造

島根富士通には約2万3,000平方メートルの面積があるA棟、B棟の2つの建屋がある。今回公開されたのはA棟だ。A棟の1階は、プリント基板の製造工程となっている。

A棟1階全体のレイアウト

これが各種部品が付く前のプリント基板

使用するハンダはクリーム状だ

取り付ける部品はロール状のテープに巻かれており、後ろの機械で巻き取って基板上に取り付けられていく

青いテープは、部品が切れて継ぎ足した部分。以前は機械を止めて新しい部品ロールに取り替えていたが、現在は機械を止めないようになったという

完成したプリント基板の電気試験

各ラインの状況を表示。異常があるとグリーンで表示された部分がブルーになり、異常を把握できる

電気試験が終了したプリント基板は倉庫エリアに置かれ、組み立て工程を行う2階から15分おきに引き取りに来る

A棟2階は組み立て工場

さて、A棟の2階は組み立て工場だ。人手による組み立ての工程は1ライン10人体制で、ベルトコンベアで流れてくる部品を指示票に従って組み立てていく。

A棟2階全体のレイアウト

2階の人の手による組み立てラインは10人体制

ベルトコンベアで流れてくる部品を指示表に従い各自が組み立てる

ブルーラインの間に自分の担当行程を終わらせる。ブルーライン内に担当行程が終わらない場合はトラブル発生とみなされる

異常が起こった場合は、ラインの外にいる紫の腕章のスタッフがサポートに入る。彼らは全ての作業工程がこなせる

液晶ディスプレイの取り付け工程

10工程で人手による組み立て作業は終了

組み立て工程終了後は自動テストに入る

テストが終了したらシールを貼り付ける

さらなる生産拡大にも意欲

現在の生産規模は日産1万台弱で、時間外労働が一日あたり1~2時間程度でこの実績を達成している。生産改善を続けた結果、従来は100mだったライン長が現在は35mにまで短縮された。空きスペースが増え、倉庫として使われている部分等にも余裕があるという現状から、島根富士通の宇佐美社長は「生産拡大の余地は、まだ十分にある」と生産拡大にも意欲を見せている。

生産人員としても、現在の35mのラインは15人のスタッフで生産を行っており、中国のODMでは120人と人海戦術で生産を行っている違いがある。賃金差の面でも、従来は日中で15倍の格差と言われたが、現在はこれよりも縮まっている。

ライン別のライン停止時間がひと目でわかるようになっている

なお、福島県にある富士通アイソテックが東日本大震災の被害により生産をストップした際、2007年に策定した事業継続計画に基づき、島根富士通に生産を移行する試みが行われた。

しかし、実際には富士通アイソテックの建屋の天井が落ちたため、専門家の許可なしに建物に入ることができず、即日で機械を移動することは実現しなかった。また、交通手段もなく、スタッフ・機械が移動することは物理的に実現できなかった。さらに、震災にあったスタッフは自身だけでなく家族も震災にあっていたため、簡単に島根へ移動することができなかったなど、予測とは異なる事態が次々に起こった。このため、川崎の開発スタッフが島根富士通に移動して作業を行うなど、想定とは異なる対処をすることになったという。 

箱詰めまで終了した製品