富士通は1日、1992年度にPCサーバの国内出荷を開始して以来の国内出荷台数が累計100万台を達成したことを発表した。これを記念し、2001年より日本国内向けのPCサーバ製造を行っている福島県の富士通アイソテックにて、100万台達成の式典と報道関係者向けの工場見学会を開催した。

次の目標は「めざせ! 国内シェアNo.1」

富士通の執行役員副社長、佐相秀幸氏

富士通アイソテック代表取締役社長、増田実夫氏

記念式典では、富士通の執行役員 副社長である佐相秀幸氏が「日本のものづくりは厳しい状況だが、世界に向かって品質・安全・洗練といった日本の良さをこれからも問うていきたい」と挨拶。また、富士通アイソテックの代表取締役社長 増田実夫氏は「品質の高いものづくりにこだわってやってきた成果だと思っている。個人的にも、2001年からずっと関わってきたので、感慨もひとしお」と語った。

松本友作 福島県副知事

仁志田昇司 伊達市長

来賓として招かれた福島県の松本友作副知事からは「雇用・環境などの面で県政に大きく貢献してくれている。これからも県の製造業をリードしてほしい」と、また富士通アイソテックの所在地である伊達市の仁志田昇司市長からは「今後も地域企業のリーダーの役割を担ってくれることを確信している」との祝辞があった。

式辞・祝辞のあとにはくす玉開花式と記念号機の除幕式が行われた。この記念号機は、伊達市に寄贈され、そこで展示されるという。

くす玉には次の目標として「めざせ! 国内シェアNo.1」

特別カラーに塗装された記念号機。これは伊達市に寄贈される

「国内No.1、世界トップ4を目指す」

記念式典に先立って、報道関係者向けに同社のPCサーバ事業についてのブリーフィングと工場の見学会が行われた。

ブリーフィングにおいては、冒頭で富士通 執行役員 IAサーバ事業本部長の河辺本章氏が「PRIMERGY」を「グローバルのプロダクト事業の柱にしていくとともに、PRIMERGYを売ることでストレージや保守などのバリューチェーンが生まれる」と位置付け。IAサーバ事業本部 事業部長の福田真氏がその歴史と今後の展開について説明した。

福田氏によれば、国内サーバ市場ではメインフレーム・RISCサーバがx86のPCサーバに移行しており、PCサーバの市場は右肩上がりで成長中。富士通の国内シェア(台数)は現在3位であり、国内No.1、世界トップ4を目指すとしている。

RISCサーバからPCサーバへの移行は着実に進行

1992年度の出荷開始から19年で累計出荷100万台を達成

現在、富士通の国内PCサーバ市場における台数シェアは3位

日本で組み立てる「Made in Japan」だけでなく、日本に向けて提案する「Made for Japan」が同社の特色

そのPCサーバの日本国内向け製造を行うのが富士通アイソテックだ。1992年度にPCサーバの生産を始めた当初は石川県のPFUでPCサーバの国内向け生産を行っていたが、2001年の12月から富士通アイソテックでの製造がスタートし、以降の約77万台を富士通アイソテックで生産しているという。富士通アイソテックでの製造は、当初はセル方式を採用して420台/日の生産能力を持っていたそうだが、現在はトヨタ生産方式(TPS)を導入してライン化を行っており、165台/日の生産能力があるという。将来的には、国内トップとなる年間20万台の出荷を目指し、ライン数の増強および1ライン能力の向上で900台/日の製造能力を目指しているという。

100万台に至る19年の前半、約23万台をPFUで製造。2001年以降の約77万台が富士通アイソテックの製造。富士通アイソテックでの製造開始直後は、初荷から大わらわだったというが、現在は年間20万台が可能な体制を構築しつつある

富士通アイソテックにおける生産工程の変遷。総人員数を削減しつつ、製造能力を拡大してきた

2011年度は国内向け13万台、APAC向け1万台前後の出荷を見込む

工場見学では、ラインで行われているPCサーバの組み立て作業を見学することができた。

組み立て工程には、3分に1台ずつ台車に乗せたPCサーバが自動送りコンベアに連結され、約30分の作業を経て組み立てが完了する。サーバ本体とともに組み付ける部品などもすべて1つの台車にセットされ、コンベアを通過する仕組みだ。

組み立て工程。3分に1台ずつのPCサーバが投入される。現在、1ラインの人員は13人で、その内組み立て工程には7人が配置されている

1台1台のサーバが台車に乗せて運ばれる。台車には、上部と下部にストレージや拡張ボード、ケースの部品などがセットされており、本体とともに運ばれる

組み立てラインを出た製品は、すぐに試験工程にまわされる。まず行われるのは前半試験と呼ばれる工程。ここでは約1時間をかけて基礎試験を行う。3分ごとに1台ずつラインを出てくる製品に対して1時間の試験を行えるよう、ここには20台分の試験を並行して行えるスペースがある。

前半試験。同時に20台のテストが行えるだけのスペースがある

緑色の丸が試験で問題がなかったことを示す

次に行われるのが、後半試験とも呼ばれるランニング試験。PCサーバでは連続稼働が想定されるため、高い負荷をかけた状態での動作に問題がないかをチェックされる。この試験ではサーバの動作によって発熱があるため、ブロック全体がシートで覆われ、ダクトで排熱しながらの試験となる。この試験は長いもので4時間かかるという。

試験をパスした製品については、外観確認後に梱包され、ストックヤードへ移される。発送までの管理はトヨタ生産方式の後工程引取り方式をとっているとのこと。

後半試験は、ダクトから排熱しながら行われる

左奥で行っているのが外観確認。その後梱包が行われ、ストックヤードへ移される

これはORT(On going Reliabitity Test)と呼ばれる加速試験を行う装置。ここで1.5年ほど使用した状態を人工的に作り、状態をチェックするという。このテストは、実際の製品に対して行うわけではなく、テスト用に製造したものに対して試験を行うのだという

さて、組み立て・試験のラインと並んで重要なのが、システムやソフトウェアのインストールなどを行ってから出荷し、納品後すぐの稼働を可能にする"インフラ工場化"の仕組み。この作業は組み立てラインとは別のブロックで行われており、66ステーションで同時に作業が可能だという。ラックに組み付けての試験などは、ダクトからスポットで冷却しながら行われるという。またここでは、リモートでのカスタマイズが行える"バーチャルインフラ工場"の仕組みも用意されている。

インフラ工場の作業は、66のステーションで同時に実施可能。ラック上に見えるダクトは、スポット冷却のためのものだ

富士通アイソテックでは、2010年度に日本国内向け11万5千台、APAC向け5千台弱を出荷しており、2011年度は国内向け13万台、APAC向け1万台前後の出荷を見込んでいる。APAC向けの生産は従来ドイツのFujitsu Technology Solutions(FTS)が担当していたが、2010年度途中から富士通アイソテックへ移行しており、計画では2011年度中にAPAC向け製品をすべて富士通アイソテックで製造するようになる予定。そのぶんのFTSの生産能力は、北米市場向けなどに振り替えるという。