ゲッティ イメージズ ジャパンは、Flickrを使った写真コンテスト「Click! リアルジャパン」の上位15作品を紹介する展示会をエモン・フォトギャラリー(東京・広尾)で開催。また同ギャラリーにて、上位入賞者を招いた授賞式も行った。

「Click! リアルジャパン」は、写真の投稿にFlickrを利用したデジタル写真を対象とした写真コンテスト。「日本発、世界行き」というテーマのもと、日本の姿を撮影したリアルで自然発生的な写真を5月10日から8月10日の期間に募集し、最終エントリー総数は3,344点(応募者数は620名)となった。

展示会と授賞式の会場となったエモン・フォトギャラリー

ギャラリーには、写真評論家やフォトグラファー、クリエイティブディレクターなど7名の審査員により選ばれた15作品が展示され、表彰式には審査員と15作品のフォトグラファーを招待。そして、1位から3位までの上位入賞者には賞品としてニコン製カメラとレンズセットが授与された。

「Click! リアルジャパン」開催へ込めたふたつの思い

9月2日にエモン・フォトギャラリーで開催された授賞式では、ゲッティ イメージズ ジャパン代表取締役の島本久美子氏から、「Click! リアルジャパン」の開催に同社が込めたふたつの思いが伝えられた。

ゲッティ イメージズ ジャパン代表取締役の島本久美子氏

ひとつは「日本のクリエイターが世界で活躍するための支援を行いたい」というもの。これは、投稿の方法としてFlickrを利用したことで、幅広い地域から多くのフォトグラファーに参加してもらうことに成功している。ふたつめは「東日本大震災の復興支援を写真を通じて行いたい」という思い。今回のテーマとなっている現在の日本の姿を写した写真を同社のWebサイトに掲載することで、世界に向けて元気に頑張っている日本の姿を届けることになるという。そして、応募写真の中から、フリッカー・コレクションへ掲載される写真のロイヤリティ1年間分は、東日本大震災復興支援のため、現在岩手県で「こころのケア」を行っている国際NGO「世界の医療団」へ寄付される。

最後に島本氏は、応募総数3,344点、応募者数620名という、多くの応募者から作品が寄せられたことに感謝し、今後も日本のクリエイターと写真文化の発展に貢献できるように頑張りたい、と締めくくった。

上位3作品の授賞式

続いて、1位から3位の受賞者へ賞品授与が行われた。受賞者とその作品、コメントは下記の通り。

第3位 作品名「human ring」 フォトグラファー:佐々木 睦氏

「human ring」

佐々木 睦氏(写真右)

  • 受賞者コメント : 受賞に関しては、単純にうれしく思います。この作品の技法に関しては、既に紹介されて久しい感じでしたのでリスキーかと思いましたが、私の作品の中では"日本"が良く表現できている1枚だったので思い切って応募しました。

  • 講評 : ティルト・シフト・レンズ効果を巧みに駆使した作品。お盆の時期に帰ってきた魂が、盆踊りの光景を黄泉の国から見守っているような目線で撮影されている点に評価が集まった。

第2位 作品名「夏の夢飛行」 フォトグラファー : 有馬 猛氏

「夏の夢飛行」

  • 受賞者コメント : 都合により、受賞者は欠席。

  • 講評 : 1位、3位が静的な並びの中、動的な作品世界が好評を獲得。瞬間を捉えた写真でありながら、躍動感、緊張感、生命力等多くのストーリ―を含んでおり、なかなか狙って撮れるものではなく、天からの贈り物のような一葉に、共感が集まった作品。

第1位 作品名「グローブ」 フォトグラファー : copyright 2011 高橋 成氏

「グローブ」

copyright 2011 高橋 成氏(マイクを持っている男性)

  • 受賞者コメント : 今回のテーマが今の日本から日本の美しさを発信、ということで自分の写真を見つめ直しました。そして、あらためて日本人として、日本の良さや元々持っているパワーを再確認できる良い機会になったと感謝しています。この作品を選考していただいて、ありがとうございました。

  • 講評 : 色は渇いているのに、音が聞こえてくるような、絶妙なトーンで構成されたシンプルで力強い作品。また日本人の誰もが感じる懐かしい情景が、日本の世界観を上手く表現していると好評を得て、最終審査会では満場一致で1位となった。

オンラインでの審査過程とは

授賞式の後に7名の審査員を代表して、ゲッティ イメージズ アートディレクターの小林正明氏が審査の過程などを説明した。

審査の過程は、まず同社クリエイティブ部署内で全ての応募作品の中から50点を選出。審査基準は、写真として美しいもの、表現したい事がきっちりと表現できる技術面、何を伝えたいのか・何を撮っているのかが明確であること。

ゲッティ イメージズ アートディレクターの小林正明氏(マイクを持っている男性)

そして、絞り込んだ50点の作品リストを7名の審査員に送信し、審査員はそれぞれのPC環境を使ってオンライン上に掲載されている写真を審査する、という手順で行われた。オンラインで写真のライセンスを行っている同社らしい審査方法だが、審査員からは「このような審査過程は初めて」という声もあったという。そして、審査員のひとりである写真評論家の飯沢耕太郎氏は「全体的にクオリティの高い作品が多い」と評価。オンライン審査で22点まで絞り込まれた後は、プリントアウトを行って展示形式の審査を行い、今回ギャラリーに展示された15点の選出に至った。

フォトグラファー、評論家、CM関係者など、立場や写真の見方が異なる7名の審査員によって、3,344点の中から選ばれた15点の作品がこうして展示されることは奇跡的なこと。この場では、1位を獲得した作品がどのように素晴らしいかのを語るよりも、それぞれが自分の見方で写真を楽しんでもらえれば良いと思います、と小林氏は語っていた。